[散歩日和]雨の卒業

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当初の予報では曇り、それが曇り時々雨に変わり、その予報のままで実際は情け容赦のない本降りだった。

せっかく新しいカメラを買ったばかりで撮りたいのは山々だが、仕方がない。ちょっと早いが、髪を切っておくことにした。雨だからすいているかなと思った人多数で、思いがけず混んでいたが、偶然以前ぼくの担当で、転勤していってしまった人に出会った。重い荷物をもって、これから実家に帰るところだといって、あわただしく去っていってしまった。その場では、実家がこっちにあるのかと思ったのだが、あとから今の担当の人にきいたら、退職して実家に帰ったのだそうだ。壮行会で昨日いったんこちらに戻ってきていたとのこと。

おもしろいなと思ったのが、退職にまったネガティヴな意味づけがないことだ。理髪店経営者の子弟が武者修行的に入社することが多いからなんだろう。もともと、ある程度の年月で「卒業」していくことが想定されているのだ。何はともあれ、最後に会えてよかった。この雨のおかげだ。

散髪が終わって外に出ても雨脚はまったく弱まっていなかった。もう、今日は、散歩を優先しているせいで、最近できていないことをする日にしてしまおう。東京駅に出る。

考えてみたら、昨日は食事をするのも忘れていた。今日は最優先で食事[古奈屋(八重洲地下街):きざみ揚げカレーうどん - 1250円]とタリーズ[八重洲北口店:ハニーミルクラテ - 470円]。吉祥寺店がなくなってからタリーズの利用頻度がかなりさがっているので、久しぶりだ。

まだ雨は降っている。有楽町=銀座に移動して、衣類をまとめ買いする。[ユニクロでパンツ2枚6980円、MUJIでシャツ3枚5485円]

唐突に雨はやんでいた。裾上げの一時間の間に新しいカメラで銀座の夜景を撮る。シャッターが軽快だ。(K-7 についてはもう少し使いこなしてから、書こうと思う。)

yokohama love stories - IMGP3812

たぶん、買えないと思っていた。

だから、ひとまず川崎に向かったのは、あくまで、実機の感触を確かめておくのが目的だった。だが、正直にいえば、もしかしたらあるかもしれないと思い、あったとしたら買ってしまうだろうと思ってはいた。というのは、Pentax K-7のことで、今日はその発売日だったのだ。

さて、順当にビックカメラは品切れで、ヨドバシも一応見ておくか、くらいのつもりでいって、ものほしそうにみていたら、予約分のキャンセルが出たといわれた。もちろん、首を横に振ることはできなくて即決。理性的な行動だということを証明するために、冷静に液晶保護シートを追加する。[Pentax K-7, Kenko 液晶プロテクター - 130930円(川崎ヨドバシ)]

会計がカードの認証でトラブってしまったらしく延々と待たされた。担当の人がカード会社に確認の電話を入れているのだが全然つながらないのだ。担当者の人の困り切った顔をしばらく忘れることができないだろう。結局解放されるまで20分近くかかって16時をまわってしまった。

いったん自宅の最寄り駅の蒲田にもどって買ったものをロッカーに預ける。とんぼ返りで東神奈川にいき、そこから散歩開始だ。潮の香りがする方へ。出かけるときは日射しがのぞいていたのに、もう、空はすっかり曇っている。久しぶりのコットンハーバー。自動車なら、ここから中央市場、そしてみなとみらいまで抜けられる道路が開通して目の前の海上を横切っているが、車輪もエンジンもついていない歩行者の身の上では、この隔絶された袋小路の入口にまた戻るしかないのは、相変わらずだ。それでも高層マンションが建ち並び、着々と住民は増えている。

さっき通った橋のあたりでロケがはじまっていた。名も知らぬ男性俳優がオープンカーに乗り込んで出番を待っている。役どころはやくざの手下とか、そんな感じにみえた。

猫が道ばたで堂々と寝そべっていたので、そっと近づいてみると、そのまわりにも数匹の猫、そしてなんと路地の奥にもさらに仲間たちがいる。ここは猫のパラダイスかとうきうきしながら、猫たちの集合写真を撮ろうとするが、じっとしていないので、とてつもなく難しい。やがて、路地にいた猫たちも外に出てきて何が始まるんだろうと思っていたら、ゆっくりとワゴン車が近づいてきてとまり、女性が下りて、いくつかのポリ袋にわけられたエサを取り出したきた。なるほど、パラダイスはこんなふうにして維持されているのか。黒ずくめで、天使というよりは殺し屋のようだったが。

遠回りしてみなとみらいへ。最後まで開発されなかった横浜駅に一番近い区画に、円筒形のビルが建設中だった。道路も整備されて車がゆきかっている。たしかセガが巨大なゲームセンターを計画していたが、業績悪化に伴って違約金を払って撤退したのが、このあたりだったはずだ。左手にはサッカー場、右手はまだ更地。看板によると富士ゼロックスのR&Dセンターができるらしい。

あまり変化のないみなとみらいの中心地を通り抜けて赤レンガ倉庫、そして今日の目的地といえる象の鼻パーク。何かのニュースでできたというのをみて、一度こようと思っていたのだ。赤レンガ倉庫と大桟橋の間の海岸がまるまる公園として整備されている。以前たっていた幽玄な古びた倉庫がとりはらわれて芝生になって、人々が寝転んでいた。あの廃墟めいた感じも好きだったのだが。

なんか、あまりきたという達成感が得られない場所だ。突堤が細長く象の鼻みたいにのびている先端に小さな円形の広場(ぜんぜん広くないけど)までいってみた。そこまでいけば象の鼻パークにいったということができるだろう。

夕闇がおりてきてカップルたちに占拠されかかった山下公園を通り抜けて元町・中華街駅まで。[東神奈川駅〜コットンハーバー〜みなとみらい〜象の鼻パーク〜元町・中華街駅(8.8km)[地図]]

横浜駅に出た。再びヨドバシカメラ。頼まれていた無線LANの子機[バッファロー WLI-UC-GN - 1640円]と、MacBook を机から浮かせて放熱をよくするためのスペーサー[Blue Lounge ラップトップ用エアスペーサー[Cool Feet] BLD-CF-SL - 1680円]を買う。無線LANの子機はしばらく見ない間に小型化、高性能化、低価格化が進んでいた。

さらにタワーレコードが3倍ポイントセール(非携帯会員は2倍)なのをいいことに、先週、ちょっとアヴァンギャルドなのを買ってしまったバッハの『音楽の捧げ物』のオーソドックスな演奏のCD[有本正広ほか 『J.S.バッハ:音楽の捧げ物』 - 1050円]を買う。『音楽の捧げ物』は、楽器も曲順も指定されていないので、なんでもありでおもしろい。

今日は13枚写真を撮った。おそらくこれが今まで使ってきた K10D をメインで使う最後の機会になるだろう。2006年の大晦日に買ったので、ほぼ2年半、撮った写真は3813枚。今までご苦労様という感じだ。

モンキービジネス 2009 Spring vol.5 対話号

70ページ以上にわたる村上春樹のインタビューが掲載されている(聞き手は古川日出男)。かなりフランクに話していて、村上春樹の創作の秘密というか、秘密なんて特にないということがよくわかる。

  • 『風の歌を聴け」と『1973年のピンボール』はあまり気に入らなかった
  • 肉体を健康に保つのは魂の不健康なところをとことん見届けるため
  • 保守と前衛両方からはさみうちで非難されてきた(村上春樹が無自覚にでも結果的にそういう枠組みを壊してくれたことで後続世代の作家はずいぶん楽になった(古川)、これは川上弘美と小川洋子の対談でも同じようなことをいっていた)
  • 一人称で書くのが楽。でもそれでは足りなくなってきた。『1Q84』は全編三人称で書かれたはじめての長編。
  • 創作の合間に翻訳をおこなうことで、抽斗をいっぱいにしておくことができる
  • 野球場でひとりでビールを飲んでいるときに唐突に書きたいという衝動がおそってきた。だから書くことに対する畏敬の念がある。

続いての特集は、幻想的な作風で、けっこう同じくくりにいれられがちな川上弘美と小川洋子の対談。作品でもうかがえるけど、二人は方法論が対極的に異なることがよくわかる。

そのほか古今東西の短編小説、エッセイともりだくさんだが、COMES IN A BOX という人の『黒い空間 雨の音』という作品が妙に気になった。プロフィールには1980年代生まれの日本人男性とだけ書いてあって、たぶん投稿作品じゃないかと思うが、終末間近の世界の脆くてはかない感触と、家具に使われているプラスチックのマットな質感の間の不整合というか、相互の異物感みたいなものを表現するためだけに、独特の世界観を作り上げたような気がして、お主やるな、という感じだった。

a girl at work - IMGP3795

馬喰町という駅の名前と読み方[ばくろちょう]を子供の頃知っていたのは、当時「国鉄」でもっとも低い位置にホームがある駅だと、子供向けの本に書いてあったからだ。今では、JRでもっとも低い駅は青函トンネルの中に移動してしまったらしい。あの頃のぼくにその話をすると、どんな顔をするだろうか。

長いエスカレーターをのぼりきると、アパレルの問屋街。休日なので人通りはほとんどなく、カラフルに舗装された歩道と閉ざされたシャッターの列。華やぎとうら寂しさが同居する妙な街だ。

雨は、降っているみたいと降っていないみたいの間を絶えず揺れ動いていた。人、というかぼくは、カサをささなくてもどうにか平気なくらいだったが、カメラのレンズが心配だ。ボディーは生活防水なので平気だが、レンズは無防備。今まで無頓着にけっこう濡らしてしまったが、そのせいで買った当初のシャープな写りが損なわれている気がしてしかたがない。とりあえず、大振りなクリーニングクロスでレンズを包み込むことにした。

気ままに道を選択しながら人形町周辺。このままテンションを保ちながら隅田川西岸を銀座方面に歩き続けるか、それとも橋を渡って江東区の平板な街並みに身を沈めるか。暗い空にそびえる清洲橋の迫力に吸い寄せられて、後者を選ぶ。

深川資料館前の商店街。ウグイスの糞を売っていた店のシャッターは下りていたが、ちょんまげ姿の土産物屋のおじさんは今日もにこやかに通りかかる人に挨拶をしていた。

ずいぶん歩いたような気がするのに、時間はどこかで道草しているらしく、意外に経過していなかった。雨脚が心持ち強くなってきたので住吉駅で散歩を終えようと思ったが、もうひとふんばり錦糸町まで歩いた。[馬喰町駅〜日本橋劇場〜清洲橋〜住吉駅〜錦糸町駅(7.4km)-[地図]]

東京駅に出る。食事[アルプス(八重洲地下街):カツカレー-450円]とコーヒー[スターバックス(八重洲地下街):アイスラテ-420円]と本一冊[丸善本店にて入不二基義『相対主義の極北』-1470円]

帰り道、風邪薬を買う。

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そういえば、風邪をひいたらしいよ。遠く離れた親戚にでもおきた出来事のようだが、ひいたのはまぎれもないぼくだった。

もったいないような梅雨の晴れ間。湿度も低く、さわやかだ。にもかかわらずあまり散歩をしたいという心持ちじゃなかったので、美女と差し向かいで食事をするのに何も話すことがないような、申し訳ないような気持ちになる。

歩くことは歩く。西武池袋線の中村橋から、商店街を北上してちょうど練馬区貫井という町の輪郭をたどるようなコースを歩く。最初に訪れたとき、妙に神秘的な印象を感じて、再訪するたびに、その印象を再現できないかと思っているのだが、やはり貫井は別にどうということのないふつうの住宅地だ。

西武池袋線の高架をくぐって南側へ。耳元で流れるのは、久々の町山智宏さんの podcast 「アメリカ映画特電」。サム・ライミの新作映画の話をしていた。主人公の銀行員の女性が老女のローン支払いを猶予するのを断ったことで、地獄に引きずり込まれようとする映画だ。主人公は業務としてしかたなく断ったのに、なぜそこまでされなくちゃならないかという話になって、ポール・ニューマン主演の『暴力脱獄』という映画に話がうつった。そのなかで脱獄をくりかえす主人公は、看守たちからどんな暴力を受けても笑って許したのに、看守のひとりが、自分はおまえに同情しているが、仕事だから仕方なく痛めつけているんだ、許してくれ、みたいなことをいうのに対しては、烈火のごとく怒るシーンがあるそうだ。つまり、それが正しいことと信じ込んで、ひどいことをしてしまうのは仕方ないが、同じことを、良心に反しておこなってしまうのは、ずっと恥ずべき、糾弾されるべき行為だというのだ。歴史上の戦争や虐殺も、それを正義と信じておこなったのは少数で、大半は仕方ないと思いながら手を貸してしまっている人で、だからこそ戦争や虐殺はなくならない。

ぼくが、岩井俊二の『リリーシュシュのすべて』で市原隼人が演じた主人公に腹が立って仕方なかったのも同じ理由だ。彼が小さな勇気をふりしぼっていればいくつもの不幸が防げていたわけで、それなのに自分の殻に閉じこもってめそめそしているのは何事か。というふうにぼくが怒るのは、ぼくもまたそういうときに仕方ないといいながら、手を貸してしまいそうな人間であるからだ。

街並みの平板さと対照的に思いだけがふつふつとわきあがる中、いつの間にか中野区に入り、鷺宮、都立家政、野方と、西武新宿線沿線を都心方面に行脚し、そして高円寺をめざす。『1Q84』で天吾が暮らし、青豆が潜伏した街だ。青豆が天吾をみつけた公園はどこにあるのだろう。

風邪をひいているせい以上に果てしなく疲れて高円寺到着。[中村橋駅〜富士見台〜都立家政〜高円寺駅(9.4km)-[地図]]

新宿へいき、食事[三国一(新宿西口):ハーブチキンサラダうどん-850円]のあと小さな買い物をいくつか。そのために、新宿からあまり離れていないところを歩こうと思ったのだ。

  1. 梅雨の季節必須のカメラ用の乾燥剤など [ビックカメラ(新宿西口)にてクリーナークロスともども1790円]

  2. お気に入りのイヤフォン Apple In-Ear Headphones with Remote and Mic の替えパッド。大中小耳の穴のサイズにあわせて3種類パッドが付属していたうち、中と小を一つずつなくし、いまや残りの中と小をちぐはぐに耳にはめている。純正の替えパッドは売ってないが、調べてみたらソニーの EP-EX10(S, M, L、サイズ別に3つのパッケージが売っている) というパッドが使えるらしい。買って早速使ってみたが、耳へのフィット感がすぐれていて、遮音性が高く、低音がよく響く。最初からこちらをつかえばよかった [ビックカメラ(新宿西口)にてMサイズ480円]

  3. 昔、バッハは当時の楽器で演奏するもので、ピアノよりハープシコードなんてドグマにとりつかれていたが、考えてみるまでもなく、ピアノの表現力とハープシコードの表現力は段違いだ。もしバッハの時代に現代のようなピアノがあれば、バッハはまちがいなくそのために曲をかいていただろう。というか、バッハの音楽は、後年の古典派やロマン派と呼ばれる人々のかいた音楽に比べて、はるかに現代的で、むしろ現代の楽器の方がマッチするんじゃないだろうか、というのが目下の意見。それで、「フーガの技法」["Bach: Die Kunst Der Fuge BWV 1080" by Pierre-Laurent Aimard - 1290円]と「音楽の捧げ物」["J.S. Bach Ein musikalisches Opfer BWV 1079 'revisited'" by Het Collectief - 2940円]を現代の楽器で演奏したCDを買うことにした(古楽器のものはどちらももっているがぜんぜん聴けていない)。「フーガの技法」は選択肢がたくさんあるが、「音楽の捧げ物」は、ほとんど古楽器で演奏されているものばかり。ひとつだけ、ピアノなどジャズにも使われる現代の楽器で演奏されているというCDをみつけたので買ってみたが、一部かなりアヴァンギャルド。聞き込みたいのでもう少しオーソドックスな演奏がよかったのだが。

4. いきなり、湿度が高まってきた。のどがかわく。T額Q付金もでたことだし、久しぶりにシャンパンでも飲むか。

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