命の力学

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ロシアで起きた惨劇に寄せて。

人命は地球より重い、というのは誤解を生む表現かもしれない。正しくは、自分の命は地球より重いというべきだろう。これならほとんどの人が直感的に納得できる。

でもそこから、ほかの人たちもそれぞれの命を地球より重いと思っている、という理解まではすぐそこだ。その理解が実際にはない重さを、あたかもあるように尊重する態度を生み出す。客観的にみれば命なんて軽いちっぽけなものに過ぎないのだけど、主観的にだけ重さを持つ。そしてその主観は共有が可能なものなのだ。

今回テロを起こしたテロリストたちは、自分の命の「重さ」から自由だったのだろう。だからこそ、他人の命の重さを無視できた。テロに対抗する唯一の方法は、ひとりでも多くの人の命に重みを与えることだ。もちろん、それはまやかしで、フーコーによれば生-権力によって与えられるものにすぎないのだけど。

でも、その偽りの重さがあってこそ、人と人の間に互いにひきあう引力が生まれるのではないかと思ったりする。そして、この引力こそが、人の命の重さをリアルに感じさせてくれるものなのかもしれない。

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