演劇ノート: 1999年アーカイブ

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/下北沢本多劇場/指4300円/★

出演: 犬山犬子、今江冬子、みのすけ、峯村リエ、大倉孝二、松永玲子、長田奈麻、小林高鹿、廣川三憲、新谷真弓、村岡希美、安沢千草、大山鎬則、仁田原早苗、杉山薫、市川英実、吉増裕士、喜安浩平、池田成志、大堀こういち

本編が始まる前の30分間、日替わりでテクノバンドが演奏するという趣向が用意されていた。耳をつんざくホットな演奏とは対照的に、観客の反応はいたってcoolだった。演奏が終わって、ようやく本編。1つの1つのギャグにはいつものように鋭い切れ味があったが、話の運びが、間のびして集中力に欠ける感じがした。いわゆる、"ぬるい"感じだ。ナイロンの役者は芸達者な人が多いが、今回はあまり見せ場がなかった。笑いの質も、いつものように足をすくわれてどこにつれていかれるかわからないような浮遊感がなく、裏の計算がみえてしまい、悪い意味で地に足のついた感じがした。

『かもめ』

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作:チェーホフ、演出:岩松了/シアターコクーン/A5500円/★★

出演:樋口可南子、岡本健一、串田和美、干ほさち、有川博、伊佐山ひろ子、岩松了、田口浩正、吉見一豊、吉添文子、松下泰知、玉置孝匡、山崎絵里

いわずと知れたチェーホフ作。今回は岩松了翻訳・演出だ。ちなみに、もともと戯曲を読んでストーリーは知ってた。ロシアの戯曲は、同じ人を何通りもの呼び方で呼びかけるのでわけわからなくなってしまう。しかも、翻訳が直訳調で情緒が感じられず、読むんじゃなかったと後悔しきりだった。それはそれとして、「かもめ」は、悲劇的な結末であるにも関わらず、戯曲には四幕物の喜劇と記してある。今回の岩松了演出は、この喜劇という部分を生かしたものになるとのことだった。帝政ロシア末期の話なので、現代日本ではかなり実感の乏しい話であるのはまちがいないが、伏線のはり方、人物描写、せりふ運びなど、さすが第一級の作品だなと思った。でも、岩松了にはやはり自作で、あのうねうねとしたせりふを小劇場で聞いてみたい。

作・演出:平田オリザ/シアタートラム/指4500円/★★★★

出演:岸田今日子、谷川清美、梶原美樹、草野裕、大竹周作、柳川慶子、一谷真由美、福井裕子、山本健翔、青山伊津美

1999年ナンバー1。今回主演の岸田今日子などが所属する円はもともと新劇系の劇団だが、小劇場系の人たちと交流したりするなど、いろいろ挑戦を試みている。今回も青年団の平田オリザの作・演出ということで観にいった。猟奇殺人などの病的な世相を背景にある旧家の没落を描いたストーリーだが、なんというか再生への予感を感じさせてくれる。破産したらベルリンに行って暮らすこともできるし、保有している林で首なし死体が見つかれば、おはぎを供えがてら見物にいくこともできる。絶望的な閉塞感の中でもどこかしらに道は開けているものなのだ。

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/下北沢本多劇場/指4200円/★★

出演:みのすけ、松永玲子、犬山犬子、三宅弘城、峯村リエ、大倉孝二、小林高鹿、今江冬子、長田奈麻、村岡希美、澤田由紀子、新谷真弓、廣川三憲、西牟田恵、山崎一

地震で壊滅状態に陥った東京から逃げ出す避難船が舞台。作者のケラリーノ・サンドロビッチさんが地震が怖くて、人が貧乏ゆすりしただけでびくっとすると、ちらしに書いてあったが、ぼくも同様なので、舞台上の不安がありありと実感できた。ギャグもなかなか面白いものが多く、ストーリー展開もなかなかだと思うのだが、最後の謎解きというか種明かしが、あまりにも安易だというのが一般的な評価のようだ。ぼくは少なくともその時は、そうは思わなかった。地震が怖いもの同士の共感というやつだろうか。

作・演出:平田オリザ/駒場アゴラ劇場/自1500円/★★★

出演:村木 宏太郎、月村丹生、福士史麻、成川知也、川隅奈保子、岩田奈保子、大竹直、伊藤季久男、兵藤公美、端田新菜、奈倉和未、島田曜蔵、中井英紀、藤原桜子、織田陶子、藤木卓

本公演でなく、若手主体の公演だ。作品は過去青年団の本公演で演じられた平田オリザ作のもの。演出も平田オリザだ。若手主体ということを感じさせない、ぶれのない安定した舞台だった。青年団の芝居の場合、役者の個性―うまいへたはあると思うが―は他の劇団と比べて大きな意味をもたないということを実感した。今回もそうだが、青年団では再演の場合、オリジナルで男性だった役が女性になったり、その逆のケースがよくある。せりふは細かな言葉遣いを除いて変わっていないのに、違和感はまったくない。考えてみると、平田作品の登場人物には、性の入れ替えがきく人が多い気がする。逆にいうと、他の演劇が性にとらわれすぎているということがいえるかもしれない。ストーリーは、高原のサナトリウムを舞台に描く青春群像といったところだろうか。サナトリウムといえば結核だが、現代の話なので、別の病気のようだ。感染の危険はなく、慢性的なもので、安静が必要。死にいたることもあるが、それは1年以上前にわかる。そんな病気だ。何だろう。

作・演出:平田オリザ/シアタートラム/指4000円/★★

出演:太田宏、天明留理子、山村崇子、辻美奈子、小林智、山田秀香、志賀廣太郎、大塚洋、足立誠、秋山建一、木崎友紀子、斉藤和華子、松井周、岩田奈保子、月村丹生、田村みずほ、藤木卓、島田曜蔵

ある女子大寮の存続を目的とする市民運動に参加する人々の話。集団というものが、その本来の目的とは別にかかえこまざるを得ないものが、描かれている。恋愛沙汰とか、リーダーシップ争い、政治的問題との関わり。ぼくはもともと集団行動が大嫌いな人間だが、こういうの観ると余計きらいになってしまう。

作・演出:宮沢章夫/世田谷パブリックシアター/指4000円/★★

出演:笠木泉、朴本早紀子、宋ひさこ、佐伯新、加地竜也、小沢直樹、佐藤沙恵、鈴木雅子、嶋田健太、田澤好一、平田裕司、足立彩、岡本奈緒、倉沢愛、吉田菜々、しりあがり寿

中央線で頻発する鉄道自殺が一つのモチーフになっている。一面の荒野の中にある高円寺という駅=町という設定の舞台の中央にぽつんとおかれているキオスクのセットが印象的だ。ちょうど、この作品から一年前の、「ゴーゴーガーリー」と同じ3人姉妹が軸になっている。相変わらずシュールでスタイリッシュな世界が展開されている。

作・演出:西島明/ザ・スズナリ/自3000円(当日)/★

出演:渡辺道子、猿飛佐助、阿部光代、加藤直美、市川菜穂、松浦和香子、山崎和如

前売りを買わずに飛び込みで入った。砂漠の砂の中から金持ちのおやつに供するための小さな豚をさがす豚商人の夫婦の話。ストーリーで引っ張っていくタイプではなく、何かこう、脱力感みなぎるシーンがめりはりなく連続してるだけに見えた。小手先と鼻先の笑い。そういうのが好きな人はいいかもしれないが、ぼくにはいまひとつ伝わってこなかった。

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/スペース・ゼロ(全労済ホール)/指4200円/★★

出演:犬山犬子、みのすけ、峯村リエ、三宅弘城、今江冬子、松永玲子、長田奈麻、安沢千草、大倉孝二、小林高鹿、廣川三憲、村岡希美、澤田由紀子、新谷真弓、大山鎬則、仁田原早苗、杉山薫、市川英実

フリドニアという空想上の国を舞台に、そこでおきるさまざまな不思議な事件を描いた作品だ。雰囲気、ストーリー、たまの演奏する音楽、みんなすばらしかったが、つめこみすぎで若干散漫になった感じがあった。でも、よもぎだんごを食べてかたつむりに変身してしまうエピソードは最高だった。

作・演出:明神慈/フジタヴァンテ/自2300円/★

出演:篠永洋、池川真人、坂井珠真、田上智那、後藤飛鳥

代々木の駅で和服姿のお姉さんが出迎えてくれるのはうれしかった。奥さんが突然死んでしまった直後の、夫とその弟の物語。死をドライに描こうとしているのは好感が持てるが、登場人物たちが死後の世界的なものの存在を確信しているのは興ざめだ。あるかないかわからないものと描かれる分にはいいのだが、信じ込まれてしまうと、何でもできてしまう。自分の体に爆弾巻いているテロリストとか。逆に、残されたものの悲しさに感情移入できなくなってしまった。

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/下北沢本多劇場/指3800円/★★★

出演:大倉孝二、小林高鹿、長田奈麻、安沢千草、新谷真弓、藤倉みのり、廣川三憲、村岡希美、仁田原早苗、大山鎬則、市川英実、杉山薫、斉藤可奈子、田中嘉治郎、岸潤一郎、政岡泰志、清水宏

ダブルヘッダーの二本目。数十年後の少年探偵団をモチーフにしたナンセンスコメディー。文句なしに最高。笑わせてもらった。

作・演出:ブルースカイ/駅前劇場/自2300円/★★

出演:小村裕次郎、池谷のぶえ、島田圭子、池田エリコ、西部トシヒロ、加藤美保、崎野雅司、大口誠、大里雅史、内山淳、永井裕久、小渕美穂、立本恭子、乙井順

宇宙人がせめてきて地球上の甲殻類が全滅させられてしまうという話で、ストーリーそのものは楽しめた。観に来ている人はみんな了解していることで、いまさらわざわざいうことではないのかもしれないが、役者はわざとかと思わせるほどとちっていた。演技の質も低い。あと、中盤、ストーリーがかなりだらける。特に槙原敬之の曲のメドレーは余計だった。もともと、彼の曲は―メロディーが歌謡曲ぽいので―好きではなかったせいかもしれないが。

作・演出:長谷川孝治/彩の国さいたま芸術劇場/自3000円/★★

出演:福士賢治、志賀廣太郎、後藤伸也、山内健司、畑澤聖悟、松田弘子、森内美由紀

彩の国さいたま芸術劇場(与野本町)まで足を運んだ。こういうことでもないといくことはない。さて内容だが、映画を一本撮るために集まったスタッフや役者の人間模様が、一人のスタッフの女性を軸に描かれるというものだ。もっとも、彼女は事故で死んでしまうという設定のため、導入部とラストにしか登場しない。弘前劇場を観るのは初めてだったが、全体的なトーンとしては青年団に近いものを感じた―実際、今回の公演には青年団の役者が3人参加している―。青年団をセンチメンタルにしたというか、青年団ではせりふの端端に隠れている個人的な感情の流れを前面に押し出した感じとでもいおうか。でも、それが過剰にならず、うまく処理されていた。