演劇ノート: 2000年アーカイブ

作・演出:岩松了/下北沢本多劇場/指5000円/★★★

出演:竹中直人、岸田今日子、小泉今日子、矢沢幸治、岩松了

2年ぶりの竹中直人の会。今回のゲストは小泉今日子と岸田今日子のダブル今日子。役名も秀子と英子と字は違うが、ダブル「ひでこ」だった。母親と息子が暮らす海沿いの別荘に夜、人をひいてしまったかもしれないといって若い女が訪ねてくる。どこまでが真実でどこまでが嘘か全くわからない女の言動。男が少年の頃に亡くなった父親の影。ストーリーらしいストーリーは特にはない。登場人物はそれぞれにエキセントリックなので、行動や言動が唐突で不可解な印象を与える。そういう点は確かにマイナスなのだが、台詞回しに岩松了独特のねちっこさがあったのと(ねちっこすぎてわけわからないのもあったが。「微分」て何だ?)、赤い花を使ったラスト近くの盛り上げ方には、演劇的興奮を感じた。この舞台の一般的な評価がいまいちなのも理解できるが、ぼくの個人的な評価は高い。何より小泉今日子を含めて、演技の質が高かった。

作・演出:ブルースカイ/シアターモリエール/指2800円/★★★

出演:小村裕次郎、池谷のぶえ、池田エリコ、西部トシヒロ、加藤美保、崎野雅司、立本恭子、乙井順、沖本尚紀、細川洋平、小澤敏彦、南サウス、安沢千草、正名僕蔵

今回が猫ニャーの最終公演ということだ。といっても劇団という形がなくなるだけで、猫ニャーという名前は残り、2001年夏から新プロジェクトが開始されるとのこと。詳細はアンケートを書いた人に年賀状として知らされるとのこと。もちろんぼくは書いた。さて、今回は2本立てで、休憩10分をはさんで3時間の長丁場だ。正直いって疲れた。まずは前半の「将来への不安Z-2000」。この世のあらゆる不幸を背負ってしまう少女の話。父親は借金を残して蒸発。その返済のために進学をあきらめ喫茶店で働く主人公。母親は寝たきりだが、保険のセールスマンと関係して身ごもり、妹は主人公を保険金のために殺そうとする。やっと返済がおわったところで、蒸発していた父親が自殺し巻き添えで中学生を死なせてしまい、3億円の賠償を求められる。好きだった男性はお金のために殺されてしまい、信じていた人から裏切られると、それはもう散々なのだ。最後までとことん救いがない話だった。それでも笑わせてしまうのがブルーススカイさんのすごいところかも知れない。後半は「ファーブル・ミニ」。昆虫記を書いたファーブルの話だ。最初のおじいさんが6人に増えるというエピソードや土下座の仕方を教えてくれる女神の話は抱腹絶倒だったが、そのあとは超人格闘ものになってしまい、ストーリーの進行が一本調子な感じになってしまった。それでも、破綻なくステージの緊張感を保っていられたのは、やはりブルースカイさんの演出の力なのだと思う。でも、ぼくとしては、その部分はなしで、2時間程度で帰らせてくれた方がよかった。

オッホ『否否否』

| コメント(0)

作・演出:黒川麻衣/シアタートップス/指2800円/★

出演:人見英伸、根上彩、横畠愛希子、富岡晃一郎、目白頼行

観ながら、この芝居は何がいいたいのだろうと考えてしまった。もともと、芝居は何かをいうためのものではないので、そういうふうに考えてしまうこと自体、シャベルでパスタを食べようとするようなものだ。趣味に関するイベント、"Hobby World Expo"のドールハウスブースが舞台。実演を行うドールハウス作家(気難しくてちょっとエキセントリック)、ビラ配りをするアシスタントの女の子2人、ブースの責任者の無責任な男、隣の読書ブースの学生アルバイトが主な登場人物。人物描写があまりに類型的なのは、突拍子もない出来事が次から次へと起こる場合、むしろ効果的なのだが、今回はごくごくあたりまえのことが、ぽつぽつと単発にしか起きない。笑いもなく、興味をつなぐような感情の動きもない舞台を見つめながら、途方にくれてしまった。唯一、いろいろな趣味のブースをめぐるところだけはテンポがあって面白かった。

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/下北沢本多劇場/指4300円/★★★

出演:みのすけ、峯村リエ、三宅弘城、今江冬子、大倉孝二、松永玲子、長田奈麻、小林高鹿、村岡希美、廣川三憲、安沢千草、澤田由紀子、大山鎬則、吉増裕士、喜安浩平、小市慢太郎、池谷のぶえ、志賀廣太郎、原金太郎

ナイロン復活という感じだ。思えばこの作品の前の数作が面白くなかった理由のうち二つは、ストーリーを描ききれていないことと役者が持ち味を発揮する場面が少ないことだった。今回の上演時間は休憩をぬいて正味3時間15分。ストーリーもちゃんと描けていたし、役者もよかった。しかも、全然長さを感じなかった。あともう一つの面白くなかった理由―ギャグのきれ味―も完全復活。大笑いさせてもらった。神田正、通称カンダタという芸人がお笑いをやるシーンがあって、まったく面白くないので誰も笑わないという設定だったのだが、ぼくは「ビロビロ」という決め台詞がおかしくておかしくて、笑いを噛み殺すのに一苦労だった。また、青年団でいつもまじめでかたい役をやる志賀廣太郎さんの意外な一面を見た。なお、星が一つ少ないのは、次回はさらに面白いものを見せてくれるだろうという期待をこめてのリザーブだ。

作・演出:平田オリザ/シアタートラム/指4000円/★★★

出演:山内健司、平田陽子、足立誠、松田弘子、山村崇子、志賀廣太郎、和田江理子、永井秀樹、角舘玲奈、辻美奈子、たむらみずほ、天明留理子、秋山建一、木崎友紀子、松井周、島田曜蔵、月村丹生、高橋縁、大塚洋、太田宏、申瑞季

1998年に観た「ソウル市民」の続編。同じ一家の十年後を描いている。朝鮮人の使用人とかけおちした長男は一家の主におさまっていて、怪しげな女性といっしょに満州にいこうとしていた主人の弟は、映画館を経営して、すっかり商売人になってしまっている。文通相手の到着を無邪気に待っていた次女は、植民地の支配者という立場から、嫁という虐げられた立場になるのが我慢できずに、本土の嫁ぎ先から出戻っている。屋外ではおりしも朝鮮人たちが、独立を求めてデモを行なっているが、日本人の登場人物は誰もそのことを認識できない。前回のテーマをより具体化したような舞台だ。冒頭近くで歌われる朝鮮の歌には、鳥肌がでるほど心を動かされ、ラストの、東京節の歌詞をソウル(当時の名前は京城)に移し変えた歌はとても楽しかった。

作・演出:ブルースカイ/シアタートップス/指2800円/★★★

出演:小村裕次郎、池谷のぶえ、島田圭子、池田エリコ、西部トシヒロ、加藤美保、崎野雅司、大口誠、立本恭子、乙井順、安食健吾、沖本尚紀、細川洋平、大山鎬則

3編からなるオムニバス。2番目がとにかく面白かった。恐怖や悲しみを感じると、鳥取に震度3の地震を起こしてしまうという特殊な力を持った少女の物語。まあ、1番目の首ちょんぱはブラックでいいし、3番目のお医者さんごっこを真にうける男も笑えるが。今回びっくりしたのは役者がうまくなっていたこと。前回観たときは、とちってせっかくのギャグを台無しにしていたり、そうでなくても、脚本通りやるのが精一杯という感じだったのだが、今回は役者の力量で笑わせる個所がいくつかあった。脚本自体も、いままでは笑いのみだったが、深みを追求し始めているようだ。ただ、その試みが成功しているか失敗しているかは、今回の芝居だけではわからない。次回に期待だ。

タ・マニネ『悪戯』

| コメント(0)

作・演出:岩松了/シアターコクーン/A5000円/★

出演:小林薫、樋口可南子、吉見一豊、ミシェル・フェレ、石橋けい、岩松了、顔田顔彦、田口浩正、中込佐知子

タ・マニネとは小林薫と岩松了のジョイントプロジェクトのことらしい。パンフレットには「古代ウテナイ語で『演説』または『井戸水』を意味する」ともっともらしく書いてあるが、おそらくたまにはやりましょうということで「タ・マニネ」だと思う。芸能プロダクションを舞台にした話で、一応小林薫演じる俳優が主役らしいのだが、全く感情移入できない。樋口可南子は、ぼくの観る岩松了の芝居に3回連続出ていることになるが、どれも似たような高飛車な役だ。さすがにもう魅力を感じない。第一部が終わる間際よくなりかけて期待をつないだのだが、15分の休憩があけたら、一気にパワーダウンしてしまった。また、席が2階(実質3階)だったので、俳優の顔がほとんど見えない。おかげでパンフレットを買わされてしまった。まあでも、最初に観た芝居「スターマン」に出ていた中込佐知子さんをまた見ることができた。それだけはよかった。

作:いとうせいこう、別役実、ブルースカイ、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/紀伊国屋ホール/指4200円/★

出演:大倉孝二、小林高鹿、松永玲子、峯村リエ、三宅弘城、村岡希美、村杉蝉之介

タイトルの通り12編からなるコント集。いとうせいこう、別役実、ブルースカイの作品が10編で、ケラさんの作品は2編のみ。しかもそのうち1編はドリフのコントのような単なる力技なので、実質1編だけだ。いつものように役者は上手で、笑えることは笑えたが、昔のようなシュ―ルな笑いでなく、こうすれば笑うだろうという計算の上に成り立っている気がした。もちろんコントという触れ込みなので、それは当然なのだが。でもブルースカイさんの本は文句なしに面白い。

作・演出:宮沢章夫/ザ・スズナリ/指4200円/★★★★

出演:原金太郎、温水洋一、宮川賢、戸田昌宏、加地竜也、松竹生、小沢直樹

正月は、おせちにあきたら芝居でしょう。毎日平和で特にすることのない砂漠監視隊。そんな彼らが生活する施設に、どこからともなく砂漠監視隊が廃止になるという噂が流れる。砂漠で生まれた噂を口にするとほんとうになるといわれているのだ。しかし、そんな噂は噂として、彼らの生活は続く。荘子の話をしたり、予想より三倍痛いもので手の甲をたたいてみたり、パレードをしたり、屋根から飛び降りたり。最後のシーン。一人取り残された隊員が、机に突っ伏して死んだように眠っていると、突然机の上の花瓶が割れて、中から砂が流れ出す。