演劇ノート: 2002年アーカイブ

作・演出:岩松了/下北沢本多劇場/指5500円/★★★

出演:竹中直人、桃井かおり、坂井真紀、篠原ともえ、北村一輝、岩松了

竹中直人の会はなぜかいつも12月28日に観ている。1995年の再演だそうだ。同じく桃井かおりが主人公(竹中直人)の姉役で登場。てっきり主人公の妻役は坂井真紀かと思っていたが、実は篠原ともえだった。普通の格好をするとおとなしい若妻という感じがするのだ。今の岩松了の台本よりはるかに軽妙で、今の翻訳演劇調より、このほうが好きだ。ドラマとしては軽すぎて、ちょっと物足りない気もするのだが、桃井かおりのパワーが十分それをカバーしていた。北村一輝はなかなかいいかもしれない。

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/シアターアプル/指5300円/★★★

出演:大倉孝二、犬山犬子、峯村リエ、みのすけ、三宅弘城、松永玲子、長田奈麻、安澤千草、新谷真弓、廣川三憲、村岡希美、藤田秀世、大山鎬則、喜安浩平、吉増裕士、杉山薫、植木夏十、眼鏡太郎、佐藤竜之慎、中西天外、皆戸麻衣、廻飛雄、柚木幹斗、清水宏、中村まこと、渡辺えり子

「ロンドン→パリ→東京」に引き続いての少年探偵団もの。清水宏演じる明智先生のアナーキーさは健在だったが、ちょっとパワーが落ちていたかもしれない。まあ、それはそういう台本ということだ。渡辺えり子がアメリカ帰りのその名も「アメリカ」という名前で団員の一人として登場する(もちろん少女の服装)。書くことが何でも現実になってしまう売れないSF作家をめぐる物語。いろいろあっていったん世界は破滅するが、パラレルワールド?でのハッピーエンドが待っている。笑いの密度も濃く、遠慮なくブラックだし、最高だった。

作・演出:赤堀雅秋/ザ・スズナリ/指3000円/★★★

出演:日比大介、多門優、福田暢秀、野中孝光、赤堀雅秋、児玉貴志、温水洋一、みのすけ、松田弘子、新井友香

終わり間際。明かりが消えて、再び灯る。役者が挨拶するのかとばかり思っていたが、舞台の上はもぬけのから。実はそこには本来あるはずのものがなくて、そのことに気がつけば、確実に深く静かな感動が訪れてくれたはずなのだが、ぼくはそれに気がつくことができなかった。本来感じられるはずの感動を感じられないなんて。とりかえしのつかない後悔。いいわけをすると、ものが存在することは簡単にわかるが、存在しないことに気がつくのは難しい。

もともとは、松田弘子やみのすけ、温水洋一などよく知った役者が出ているという理由だけで観にいこうと思ったのだが、テレビの「演技者。」という深夜番組枠で放映された『アメリカ』というドラマ(赤堀雅秋作・演出)を見ているうちに俄然興味が募ってきた。

「静かなる演劇」の系譜に属しているようで、日常的な場面が舞台。青年団の芝居を観ていると、登場人物がみんな「ちゃんとした」人ばかりで驚くが、こちらはちょっとずれた人ばかりが出てくる。何らかの輝きを描こうとするのではなく「くすみ」のようなものにスポットライトをあてる。もともと内部に矛盾をはらんでいる人のあり様をさりげなく笑いとともに浮かび上がらせていくのはすごいと思う。

一応あらすじ。智子と登、中年夫婦二人が暮らす狭いアパートには、火事で焼け出された智子の弟夫婦が転がり込んでいる。智子は事故で下半身が不自由になっている。保険で賠償はすんでいるのだが、加害者の若い男は義務的に絵のモデルになるため智子の家に通う(と書くと性的な意味合いが含まれそうだが、そんなことは全然ない。智子は「仕返し」のためにそれをやっている)。カラスが大嫌いなのに、カラスのことを語らずにはいられない登。何があっても儀式のようにパチンコ屋に通い続ける弟夫婦。そのほかに、ボランティアの男性と、祈祷師とその助手。最後に起きる奇跡。ああ、なくなったものに気がつきたかった。

(『アメリカ』で前田愛から、この小太りの人もう二度と芝居に出さないでください、といわれていた役者がちらっと出ていた。)

作:坪田塁、細川徹、会沢展年、丸二祐亮、シティボーイズ、中村有志、演出:坪田塁/アートスフィア/A5000円/★★

出演:大竹まこと、きたろう、斉木しげる、中村有志、犬山犬子

大竹まこと、きたろう、斉木しげるのシティボーイズに中村有志と犬山犬子を加えた5人が出演するコント集。シティボーイズの「ライブ」はテレビでは何度も見ているが、ライブで見るのははじめて。テレビで見ていると、シュールでつぼをついたギャグが炸裂する年と、そうでない年でちょっと落差がある。今年は比較的わかりやすいギャグが多かったようなような気がする。ぼくとしてはもうすこしわけがわからない方が好きだ。それはそれとして、シティボーイズの3人はみんなお気に入りで、他人という感じがしない。斉木しげるは登場するだけで笑ってしまう。ところで、犬山犬子のルーズソックス、金髪の女子高生姿がとても様になっていた。今いくつだったけ。

作・演出:岩松了/新国立劇場小劇場/A5250円/★★

出演:戸田菜穂、李丹、高橋珠美子、矢代朝子、荻野目慶子、戸田昌宏、有福正志、塩田貞治、朝比奈尚行、岩松 了

チェーホフ『三人姉妹』のラスト近くで決闘で死んでしまったはずのトゥーゼンバフ男爵だと名乗る男が1940年代のニューヨークの町に現れる。彼と、三人のイリーナ(三人姉妹の末っ子、男爵の許婚だった。この作品では、女優、娼婦、劇場の下働きの三人のイリーナが登場する)、それに当時売れっ子の劇作家テネシー・ウイリアムズが奇妙に関わりあう奇妙な物語。冒頭シーンは「三人姉妹」を演じる劇中劇のシーン。なんだかこのまま「三人姉妹」を観ていたくなった。かなり難解な作品だが、安部公房の不条理小説を読みなれた目からすると、いくつかのエピソードが理屈を越えた理屈で結びつきあうのは、わからないなりに納得できたりもする。だが、多分最低3回は観ないと、全体を理解することはできないだろう。女優のイリーナを演じた戸田菜穂はテレビでの地味な印象が嘘のような存在感があった。下働きのイリーナの荻野目慶子は怪演という感じ。テネシー・ウイリアムズ役は岩松了本人。いつも自分の作品には何かしら出演する人だが、今回は主要人物の一人。あと、チェプトゥイキン役でコミカルな味を出していた有福正志がよかった。

作・演出:平田オリザ/駒場アゴラ劇場/自3500円/★★★★

出演:山内健司、足立誠、古舘寛治、秋山建一、岩崎裕司、松井周、小河原康二、太田宏、大塚洋、山村崇子、小林智、申瑞季、端田新菜、能島瑞穂、安部聡子、古屋隆太、たむらみずほ、小林洋平

平田オリザが実際少年時代に経験した冒険旅行がベース。1980年代初め、イスタンブールの安宿の大部屋が舞台。部屋の住人は全員日本人ばかり。学校を休学してヨーロッパからアジアに向こう学生、その逆のコースをたどる旅行者、そして旅から旅への放浪生活からぬけられない人たち。古い人が旅立ち、新しい人が入ってくる。別れ、出会い、再会。結婚して放浪の生活から足を洗おうとする人が訪ねてくる。一度放浪生活をはじめてしまうと日本での生活に戻るのはとても難しいようだ。何かを探して、あるいは何かを忘れるために、放浪の旅に出たのだが、いつしかそうしたことはどうでもよくなって、旅を続けることだけが目的になっていく。名所を訪れることすらしなくなるのだ…。80年代の時代背景や流行がリアルに再現されていてとても懐かしかった。また、笑いの密度が濃くて、思う存分初笑いさせてもらった。最高。