演劇ノート: 2003年アーカイブ

作:倉持裕、演出:世田谷ジェッツ/駅前劇場/自由席3000円/2003-12-06 19:00/★★★

出演:戸田昌宏、谷川昭一郎、伊藤正之、玉置孝匡、伊藤淳史、倉持裕、なんきん

右手に壁一面の両開きで金属製のドアがあり、左手には顔の高さに横長の覗き穴。何の飾り気もない殺風景な室内の隅の方にかたまって置かれた段ボール箱。どういう設定かと思ったら、トラックの荷室だった。それぞれの理由で山からおりられなくなった男たちがそのトラックに乗って町に帰ろうとする...。

倉持裕独特の幻想と現実が入り混じったシュールな台本。後半のドアを開けようとするところの緊迫感は見事だった。特に、テレビによく脇役で登場する伊藤正之さんは熱演。ここまで存在感のある人だとは...。

作:村上大樹,江本純子,千葉雅子,ケラリーノ・サンドロヴィッチ,構成・演出:村上大樹/スペース・ゼロ/指定席3500円/2003-11-29 19:00/★

出演:澤田育子、加藤啓、市川訓睦、千代田信一、伊藤修子、成田さほ子、山岸拓生、寺部智英、石川ユリコ、村上大樹、千葉雅子、中村まこと、市川しんぺー、江本純子、町田マリー、柿丸美智恵

3時間10分は長い、長すぎる。観てないが1999年に上演された『DX寿姫』に、毛皮族の江本純子、猫のホテルの千葉雅子、ナイロン100℃のケラリーノ・サンドロヴィッチが書き下ろしたショートコントのようなものを追加して再構成したもの。試みは悪くないかもしれないけど、やはり三人の書いた部分は余計で、劇としてのまとまりを欠く方向に働いてしまったような気がする。

もともと拙者ムニエルの舞台は、一見まとまりがないショートコントがその場その場でおもしろくて、それが実はストーリーとしてちゃんとつながっていてさらにお得という感じなので、まとまりがないことそのものが悪いわけではないのだが、今回は作家として参加した人それぞれの笑いの質がちがうので、その切り替えができなかった。特に、江本純子作の部分は、ほかと乗りがちがうというか、乗っていないと楽しめないようなところがあり(毛皮族をみたことがないというせいが大きいのかもしれないが)、完全に浮いていた気がする。

結果として、長い分だけ散漫になってしまった。HYPER DXではなくDXくらいでいいのではないか。

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/下北沢本多劇場/指定席5000円/2003-11-14 19:00/★★★

出演:犬山イヌコ、みのすけ、三宅弘城、大倉孝二、松永玲子、長田奈麻、新谷真弓、廣川三憲、村岡希美、藤田秀世、大山鎬則、喜安浩平、吉増裕士、杉山薫、植木夏十、眼鏡太郎、佐藤竜之慎、廻飛雄、皆戸麻衣、柚木幹斗、小林高鹿

ホテルの開店の日に泊まったお客様は10年後無料でお泊りいただけるというサービス。10年前のあの日に笑顔を見せていたそれぞれの客の10年後、そしてホテルの10年後は...。

と書くと「栄華と没落」という言葉を想像してしまうが、もともと異常さをはらんだものが年月を経てさらに異常に、ダメになってゆくという話。それをとびっきりの苦い笑いに包んでみせてくれた。最高とまではいかないが傑作にはちがいない。

最後少しスピードダウンしているきらいもあるけど、バンバンと拳銃の音が響いて終わりというパターンより、今回のように静かに余韻を残して終わるエンディングの方が、数倍よかったと思う。拳銃の音は苦手なのだ。

作・演出:ブルースカイ他/シアター風姿花伝/自由席2500円/2003-11-01 19:00/★★

出演:久保貫太郎、咲野雅司、ブルースカイ、高木康寿、藻田るりこ、荒井タカシ、細川洋平、乙井順

風姿花伝というはじめての劇場。豪華二本立てで、前半はふつうのスタイルの演劇、後半はなんと人形劇だった。

前半の演劇は、ブルースカイだけでなく猫ニャーという劇団名が作・演出にクレジットされていたが、そのせいかどうか、ちょっと凡庸に感じた。アンドロイドと戦う人間側の軍隊の話で、第二機動隊の任務はクリーニングという設定は結構いけてるし、物語としても破綻せずちゃんとつながっていたのだが、ギャグの爆発度という点では弱かった。反面、後半の人形劇は、人形劇という演劇以上にきびしい制約を逆手にとった演出はおもしろかったし、ギャグもブラックでよかった。「木村の親の大冒険」というのもタイトルだけで笑える(ぼくだけかもしれないが)。

作・演出:千葉雅子/ザ・スズナリ/指定席3200円/2003-10-31 19: 30/★★★

出演:市川しんぺー、中村まこと、池田鉄洋、森田ガンツ、佐藤真弓、村上航、いけだしん、岩本靖輝、菅原永二、千葉雅子

今年の正月以来。そのときの印象であまり期待していなかったのだが、今回はよかった。前回も役者はよかったので、今回のように脚本や演出が生きれば、いいのも当然だ。平日でも連日満員なのも納得できる。

世間や家族から逃れてきた人ばかりが集まる場所。そこではそれぞれが新しい生活を営んでいるはずだったが、いつしかそれもまた耐え切れないものに変わってゆく...。と書くとシリアスそうだが、そんなことは全然なく、全編コメディーだ。笑いの質もいいし、セットをダイナミックに動かしたり、車の前面の部分だけ出てくるなど大掛かりな演出もよかった。

作・演出:平田オリザ/駒場アゴラ劇場/自由席3500円/2003-10-04 19:00/★★★

出演:松井周、山内健司、志賀廣太郎、小林洋平、小林智、ひらたよーこ、木崎友紀子、工藤倫子、辻美奈子、能島瑞穂

とても久しぶりの青年団。それほど遠くない未来。日本は懲りずにまた戦争をしていて、前回よりさらにひどいことになっている。南方の島に建てられた日本人専用の捕虜収容所が舞台。そこでは、そんなひどい状況をよそに、ありきたりの日常が繰り広げられている。捕虜たちは、一応軽い雑務を割り当てられてはいるものの、さぼるのも自由で、食事もおいしい。恋愛沙汰も日常茶飯事で妊娠騒ぎまで起きる(当然女性兵士も捕虜になっているので)。衣食住は一応足りている状況下で、捕虜たちの胸にこみあげてくる空虚感と日本の食べ物に対する愛着。そのぼんやりした感情こそ愛国心と呼ぶべきものなのかもしれない。

ときおりはさまれる笑いのタイミングもいい。平田オリザは抑制された表現が特徴だと思うが、今回ところどころその抑制を飛ばしていたところがあったと思う。それはつまり今この日本の現状への静かな怒りの表れだろうか。

お菓子を食べる音が響きながら溶暗するのがよかった。

作・演出:赤堀雅秋/駅前劇場/指定席3000円/2003-09-27 19:00/★★★

出演:日比大介、多門優、福田暢秀、野中孝光、赤堀雅秋、児玉貴志、黒田大輔、滝沢恵

古びて雨漏りがする日本家屋の一室。ひきこもりの弟と、兄夫婦、そして弟が面倒をみているらしい母親?。雨が何日も降り続き避難勧告がでているが、彼らはなかなか出て行こうとしない。この部屋にいりびたる弟の友人や、彼を訪ねてくるおかしな先輩や警官のずれた会話から笑いがしみだしてくる。そう、今回はかなり笑いが前面に出ていた。いつもの状況の閉塞感はそのままだけど、最後のシーンは「雨に歌えば」のような幸福感を感じさせてくれる。転がり出てくるボールが謎を残し、妙な味となってその幸福感さえも包み込んでしまう。

緑色のスカートというタイトルもまた謎。

作:岩松了・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/下北沢本多劇場/指定席4800円/2003-09-13 19:00/★★

*出演:広岡由里子、宝生舞、長塚圭史、八十田勇一、安澤千草、鈴木リョウジ、矢沢幸治、渡辺いっけい *

意外な組み合わせの脚本と演出。同じ作品を岩松了自身の演出で別の役者で9月19日から上演するという試みも珍しい。そちらの主演の岸田今日子が携帯電話の電源をお切りくださいという例のアナウンスをするという心憎い演出。

人里離れた山荘で暮らす女二人。一人は中年、一人は若い。そこに意識を失って運び込まれた青年。目をさますと彼は完全に記憶をなくしていた...。そこに現れる、園児を殺した罪に問われた元保母とその夫...。

演出がほかのひとであることをまったく意識させない、どっぷりと岩松了の世界に浸った舞台だと思う。岩松了の本では、さすがのケラも遊ぶことはできなかったらしい(いくつか多分台本にないと思われるギャグはあったが)。前半は、久々に岩松了の真骨頂が見られたという感じで、理屈と感情の合間を縫うような台詞、たたみかけるように現れる謎、もう気分が最高に高まったところで、時間が朝から夜に移った後半、ちょっとテンションがさがってしてしまう。スパイというような、日常性を離れたなんでもありの設定は使ってほしくなかった。それは観る方の想像力が足りないせいだといわれればそれまでだが、すべてが絵空事になってしまい、たったひとり死んだ人も、なぜ死ななければいけないか、その必然性がわからなかった。

役者ではわたなべいっけいと宝生舞がよかった。宝生舞はちょっとぷっくりしていたが。

作・演出:倉持裕/シアタートップス/指定席3000円/2003-08-16 19:00/★★★

出演:小林高鹿、ぼくもとさきこ、松竹生、伊藤留奈、萩原郁、嶋田健太、山本大介、長田奈麻

最前列の席。開演前に小林高鹿の作・演出で演じられたビッグコミックスピッツの劇CMもテンポがよくてなかなか面白かったが、本編のことを書こう。

きかれてもいない個人情報(寝ている間によだれをたらすなど)まで葉書にせっせと書いている懸賞マニアの男(そうすると当選の確率があがるらしい?)。最初は家族の名前を使うだけだったが、ついには架空の人物までつくりあげている。そんな男と家族や近所の人がおりなすシュールな物語。登場人物のうち一人を残して他の人物が立ち去り、入れ替わりに別の人物が入ってくると場が展開するという手法が斬新でいい。場だけでなく、時間も前後するのだ。最初はばらばらのジグソーパズルの断片が、この一見無秩序な場の連鎖をめぐるうちに明らかになってくる。そういう意味でラストには、すごいと舌を巻いた。惜しむらくはエンターテイメント性が少し弱いという点。途中でちょっと退屈になってしまった。

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/三鷹市芸術文化センター/指定席4000円/2003-08-09 19:00/★

出演:小村裕次郎、林和義、町田カナ、伊達暁、玉置孝匡、千葉雅子、林聖子、河西健司、原金太郎、植木夏十、山田真歩、廻飛雄、今奈良孝行、本間剛、皆戸麻衣、市川しんぺー、依田朋子、鈴木芳、深澤千有紀、村上大樹、野間口徹、旗島伸子、川田希、湯澤幸一郎、弘中麻紀、山崎和如、佐藤竜之慎

撮影の都合で席が一つ前になってちょとラッキー。それでもかなり後ろのほうだが。

ケラがナイロンという枠にとらわれず演劇界の実力あるメンバーとタッグを組む企画の第2段。住民のほとんどが左翼革命集団のメンバーという山中の村が舞台。幕開き当初の平和な喫茶店の光景が一変して、裏切りと粛清の血なまぐささがすべてを覆っていくというお決まりのパターンで、ちょっと冗長なところもあったのだが、一種類ずつ飲むととてもおいしんだけど二種類いっしょに飲むと幻覚をみて苦しみだすというジュースや、「キ」の音の発音が独特なキッキマンなど、小ネタがとてもおもしろかった。また、エンディングもいい。何より、役者のうまさが光っていた。

作:倉持裕・演出:板垣恭一/青山円形劇場/指定席4000円/2003-07-12 19:00/★★

出演:桂憲一、中村音子、小林高鹿、曽世海児、高橋拓自、野口かおる、本田誠人、俵木藤汰

いわゆる企業城下町。住んでいるのはほとんどその会社の人間で、新興住宅地らしい窮屈な清潔さに包まれている。その窮屈さになんらかの形で抗議の声をあげようということで、信号機のまわりにゴミを積み上げる二人の男。二人とももちろんその会社の社員だ。そこに二人のうち先輩の方の元恋人夫婦。アダルトビデオを撮影しようとする男女二人、挙動不審の上司などが現れ、頻発する放火事件が物語の背後でうごめきだす...。

前半単調でどうにも入り込めなくて退屈さもちょっと感じていたが、放火事件が出てきた時点でちょっと盛り返したものの、いったん犯人がわかったと思われるところでがっかりしかけた。ところが、最後の最後でそれまでの失点をすべて帳消し。すばらしいラストだった。これぞ演劇的感動。

作・演出 村上大樹/下北沢本多劇場/指定席3300円/2003-06-21 19:30/★★★

出演:加藤啓、市川訓睦、池谷のぶえ、澤田育子、千代田信一、池田鉄洋、伊藤修子、成田さほ子、山岸拓生、寺部智英、石川ユリコ、布瀬谷香里、村上大樹

拙者ムニエルははじめてだが笑いの質と密度が高い。直感的で怠け者の兄と論理的で頑張り屋の弟の成長物語?という一応核となるストーリーがあるが、それ以外の表面上無関係なエピソード(存在感のない役者寺部智英、五木ひろしなどなど)があちこちにちりばめられていて、そのことがむしろ緊張感を高めている。ビデオカメラによるライブ映像を使ったりとか、客席も舞台の一部にしてしまうなど、タイトルどおりアイデアに富んでいる。出演者がいきなりマイクをもって歌を歌いだす歌謡ショー的な演出はたまにきず。

作・演出:政岡泰志/駅前劇場/自2500円/2003-06-05 19:00/★★★

出演:小林健一、辻修、森戸宏明、高橋拓自、伊藤美穂、多田淳之介、石川明子、松下幸史、石崎和也、政岡泰志

「エンゲキ」というより、シティーボーイズ風に「ライブ」と呼んだほうがピンとくる舞台。一応ストーリーはあるものの書割程度のもので、ギャグもひとつひとつをとれば印象に残るようなのはない。暴力的なつっこみと下品な笑いは、まさに昔のドリフターズのコントを髣髴とさせる。

昔、ドリフターズのコントがなぜあんなに面白かったかいうと、見る側が面白いことをしてくれると信じていたからだ。その信頼は演じる側の自信を感じ取ることからくるもので、内容がつまらない場合でも微妙な間、表情、動きを駆使してそれを面白いものに変えることができるという自信が彼らにあったのだ。誰でもそれができるわけじゃなく、役者には高度な身体能力と反射神経が要求される。

政岡泰志、辻修、小林健一の主要な三人以外も、動物電気の役者はみんなそれらの能力を備えた人たちだ。こちらは安心して笑っていられる。それが演技者としての能力の高さだとは思わないけど、でも「笑い」ということに関しては彼らはプロだと思うのだ。

作・演出:岩松了/ザ・スズナリ/自由席3400円/2003-05-31 19:00/★★

出演:関寛之、伊藤留奈、早船聡、谷川昭一朗、増井太郎、玉置孝匡、中込佐知子、宇和川士朗、山崎えり、川本絢子、じょじ伊東、酒井健太郎、坪内有子、戸田昌宏、矢沢幸治、清田正浩

ぼくがはじめて観た芝居は岩松了プロジュースの『スターマン』で、それに感動して今のように芝居を観る習慣がはじまったのだけど、それから何と5年ぶりの岩松了プロジュース作品だ。岩松了は、最近大きな劇場で高い料金をとる芝居が多く、そのわりに今ひとつなことが多いと思っていたので、小劇場らしい小劇場で、しかも1996年に上演した芝居の再演ということでとても期待していたのだった。

高名な写真家が砂丘のある場所(鳥取か?)に遺した別荘を買うために下見にやってくる夫婦。妻のほうは盲目だ。その別荘には、そこから見える夕陽を撮るため、持ち主だった写真家の弟子筋にあたる人間やその関係者が何人か泊まっている...。そして、理不尽な怒りの衝動が、軽いいたずら心をはらんだ偶然と結びついて、惨劇がうまれる。ストーリー展開はすばらしいと思うのだが、主要な登場人物が誰も彼もシニカルで、誰にも共感できないままだった。ぼくにとって、いい芝居というのは、舞台の上にある場にいたいという気持ちにさせてくるものだが、今回はそこから逃げ出したい気持ちの方が大きかった。

同じ岩松了の『虹を渡る女』とほぼ同じ台詞を盲目の妻が口にしていた。時期的に考えると、『傘とサンダル』が本家で、『虹を渡る女』がパクリということになるけど、芝居としては『虹を渡る女』の方が断然好きだ。

『スターマン』で兄妹だった役戸田昌宏、中込佐知子の二人が今回も姉弟役だったのことに、ちょっとした符合を感じた。

作・演出:ブルースカイ/下北沢本多劇場/指定席2500円/2003-05-10 19:00/★★

出演:池谷のぶえ、乙井順、立本恭子、細川洋平、西部トシヒロ、咲野雅司、小澤敏彦、荒井隆司、久保貫太郎、藻田るりこ、高木康寿、村瀬香奈、小村裕次郎

演劇弁当になってから猫ニャーははじめて。ぼくは観てないが1999年に上演した芝居の再演らしい。今回の上演時間はそのときより40%アップの2時間45分だと今日もらったパンフレットに書いてあった。ギャグのセンスは相変わらず奇抜でいいと思うのだけれど、この長い上演時間の中では密度が薄かったと思う。退屈させられるところが何箇所かあった(特に休憩時間前とかエンディングの前)。猫ニャーはギャグが命で、それ以外のシーンはほとんど光らないのだ。やはり、役者がいまいちだというのが大きい。上手、下手以前に台詞が聞き取りにくかったりするのだ。今回、演劇弁当になったときに劇団を離れた小村裕次郎が客演していたが、とても光って見えた。

作・演出:倉持裕/シアタートップス/指定席3000円/2003-03-29 19:00/★★★

出演:小林高鹿、朴本早紀子、玉置孝匡、安本美華、笠木泉、山本大介、中山祐一朗

難解な芝居を上演する劇団とだけきいて、観にいった。徹夜して全然眠っていないので、最後まで見られるか不安だった。だが、その心配はまったく杞憂だった。一般の民間の地下でドリルを組み立てなければならないというシュールなシチュエーション。さらにその上、落ち目になってきたタレントの話題づくりなどがからんでくる。道具立てだけも退屈しないが、さらに登場人物たちも個性豊かでおもしろく、役者もうまい。特に「妹」役の朴本早紀子とその失踪した恋人の兄役の山本大介がよかった。今まで見てきた芝居でたとえると、雰囲気はちょっと前の遊園地再生事業団、台詞回しにちょっと岩松了の匂い、笑いの質は、シュールさがナイロン100℃にも似ているがもっと抑制されていて、台詞の隙間からしみ出してくるような笑いだ。難解なのは劇団名だけだった。

作・演出:赤堀雅秋/ザ・スズナリ/指定席3000円/2003-03-22 19:00/★★★

出演:日比大介、多門優、福田暢秀、野中孝光、赤堀雅秋、児玉貴志、黒田大輔、滝沢恵

ゲイのカップルの片方が癌で余命いくばくもなくなり、郷里から弟が出てきて、部屋に住み込む。弟は、兄がゲイであるせいで迷惑をかけられたという思いがあり、復讐のためドキュメンタリー映画の題材にしてはずかしめようとする。そして...。特にストーリーがこっているわけでも、感動的な台詞があるわけでもない。淡々と場面が進んでゆく。何作か見てきて、赤堀という人の書いたものにあるのは「和解」ということがわかってきた。和解したからこそ去ってゆく。兄の恋人の男性がとてもいい。何があっても何をいわれてもにっこりと微笑みやるべきことをする。二人で首を仰向けにして窓の外を見上げる。こちらからは見えないが、その青空の青さが見えるようだった。

原作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ、作:ブルースカイ、演出:村上大樹/青山円形劇場/指定席3800円/2003-02-08 19:00/★★★

出演:野村祐香、小林顕作、池谷のぶえ、加藤啓、政岡泰志、小林高鹿、市川訓睦、本谷有希子、吉本菜緒子、成田さほ子、乙井順、長田奈麻、村上大樹

もとは1994年に上演されたナイロンの『1979』という芝居で、それをベースに今回書き直したのが『1989』ということらしい。ほかの芝居と勘違いしてチケットとったことや(これはこれで観たい芝居の一つではあったが)、野村佑香主演のアイドル芝居じゃないのかという先入観もあったりして、あまり期待していなかったのだが、いい方に裏切られた。野村佑香もなかなか頑張っていたし、その他の役者も顔ぶれをみただけでなかなかと思わせる人たちだった。それに本がよくできている。タイムスリップもののコメディーだが、笑いがさえていて、とても楽しませてもらった。ただ、出演予定のみのすけさんが病気で降板したというのは残念(代役は演出の村上大樹でとても好演だった)。

作・演出:宮沢章夫/シアタートラム/指定席4200円/2003-01-31 19:30/★★★★

出演:小田豊、笠木泉、片倉裕介、久保優子、熊谷知彦、所奏、南波典子、深堀玲子、三坂知絵子、文珠康明、山根祐夫、吉田直哉

わたしはむやみやたらに観た芝居をほめまくる男ではなかった。3年ぶりの宮沢さんの芝居。いやあ、待ってた甲斐がありました。開始早々いきなりその世界の中にひきこまれて、どこに連れていってくれるのか楽しみで仕方がなかった。宮沢さんが面白いと感じるものや言葉それに「体」が、舞台の上を飛び跳ねていた。役者が語る言葉も生きていた。生きている言葉だった。何度も繰り返すことによってさらに生きてきた。無論、繰り返しすぎだという人もいるだろう。だが、4度ならよくてなぜ5度はだめなのか。3度ならいいのか。繰り返さないと伝わらないものがある。

失踪した娘を探しに東京に出てきた盲目の元教師と教え子たち。彼らは東京、あるいは「かつて東京であった街」の迷宮に飲み込まれてゆくというようなストーリー。舞台の背後の柵でかこわれて見えにくくなった空間で起きる出来事が映像としてスクリーンに映し出され、それと舞台の上の出来事がシンクロしながら話が進行していくという斬新な仕掛け。

終盤確かにテンポが落ちる箇所がある。それが意図的であるにせよ、長時間観続けて集中力が落ちてきた観客にはつらいところがあったかもしれない。あと、元教師が最後につぶやく素晴らしいセリフがあるのだが、これが事前に別のコンテキストでスクリーンに映し出される上に、チラシにも書いてある。これはその場ではじめて聞きたかった、などもちろんもっとよくできたと思えるところはあった。だが、そんなことは別にどうでもいいのだ。

作・演出:千葉雅子/ザ・スズナリ/指定席3300円/2003-01-04 18:00/★

出演:中村まこと、森田ガンツ、市川しんぺー、佐藤真弓、池田鉄洋、いけだしん、村上航、岩本靖輝、菅原永二、千葉雅子、小林健一、辻修、加藤啓

ナイロンの芝居に出ていた中村まことという役者がちょっと気になって、見てみることにした。いきなりカラオケロックミュージカルがはじまってめんくらった。ストーリーは「ジーザス・クライスト・スーパースター」を完全になぞっていて、各シーンごとにオリジナルのギャグをいれている。その笑いはきらいじゃないし、役者もそれなりに芸達者だと思う(客演していた3人もとてもよかった)。でも、いまなぜジーザス・クライストという感じがして、ちょっとついていけないところがあった。上演時間も長すぎた。