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『東京日和』の影の主役?カンカラ缶太郎君のすべて。

地下鉄の車内で、二人で食事をした帰りの島津とヨーコに拾われる。

缶けりされながら二人についていき、他人とは思われないほど仲良くなる。

根津のお化け階段をおりきったところで、置いていかれそうになり、「ぼくをおいていかないでくれよ」とつぶやく。

男であることがわかって嫉妬にかられた島津に「心苦しいがほかで自分なりの幸せをみつけてくれ」と放り捨てられてしまう。

「カンカラ缶太郎君の幸せを祈るばかりよ」とつぶやきながら二人は彼に別れを告げる。

その後、二人は柳川でカンカラ缶太郎の親に出会う。旅館御花に展示されている鎧の騎士だ。騎士は遠く離れた子供を思っているように見えた。

ちなみにカンカラ缶太郎はキリンオレンジの空き缶。ほんとうはバヤリースオレンジを使いたかったらしいが、キリンビールのCMをやっていた関係で、キリンになってしまったらしい。なお、現在キリンオレンジは発売中止で手に入れることはできない。残念。

ところで、映画のラストで、ヨーコがホームを走りながら抱えている缶ジュースはキリンオレンジのように見える。最後の最後でカンカラ缶太郎復活?

ロケ地めぐり柳川編

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福岡にお住まいのウサギさんという方に映画『東京日和』の柳川におけるロケ地の写真を送っていただきました。ご厚意によりこの場で公開させていただきます。(このページの写真の権利はウサギさんに属します)

二人が柳川で泊まった旅館御花の正面。なんだか旅館に見えませんね。

御花で二人が泊まった部屋。この障子の影で二人はキスをします。

カンカラカンタロウ君のお父さんの甲冑。カンカラカンタロウ君は元気にしているでしょうか。ちょっと心配です。

この橋の前で、二人は地元の90歳過ぎのおばあさんと短い会話を交わします。とてもいい表情のおばあさんでした。今も元気でしょうか。

この床屋で島津が眠っている間にヨーコはどこかにいってしまう。島津は、さんざん探し回って、舟の上でやすらかに眠るヨーコを見つけます。

二人の関係

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今回は物語を魅力的にしている、主役の二人、島津とヨーコの微妙な関係についてとりあげてみたいと思います。

社会に溶け込みたくない

タイトル直後の、島津の自宅に昔の同僚が集まっているシーン。ここでヨーコは客の名前を呼び間違えたことが原因でキレてしまいます。なんか二人の外の世界との関わり方をうかがう上で象徴的なシーンです。

ふつう結婚すると、二人で暮らし始めるだけではなく、二人そろってのコミュニティーへの参加を求められます。小さなところでは親戚づきあいとか、友人や同僚を家に招いてのホームパーティーとかがそうでしょう。ところが、二人はそういった外の世界との関わりを拒絶して、二人だけの世界に閉じこもろうとしているように見えます。実際にはそれぞれ仕事をもっているので、個々には社会関係が存在するわけですが、二人いっしょのときには、そういう外の関係をできるだけ持ち込まないようにしているということです。

これは特にヨーコの方に顕著で、島津の方は、それを受け入れるというか、そういうヨーコとの関係を守っていこうという意志が感じられます。

映画ではカットされていますが、島津の家に訪ねてきた編集者阿波野がいみじくも「二人とも社会に溶け込みたくないと思ってるんじゃないですかね」というせりふが脚本にはあります。

夫婦ごっこ

それでは二人の関係がお互いがお互いだけを見ている濃密なものかというと、そんなことはなく、二人の間には「ホントの夫婦」にならないような斥力が働いているようです。

部屋をただ無意味に歩き回るヨーコが、じっと見ている島津に向って唐突に「あなた、私に、やさしすぎやしない?」…「見ないで欲しいのよ、私のことを、そんなに」といったりしています。

また、お互いに、飛蚊症などの問題にしなければならないシリアスなことを、あえて触れないようにしています。

これもカットされていますが、脚本には、島津自身が「時々、夫婦ごっこをやっているような気になってきて…(中略)…お互いに問題にしすぎると、何て言うのかな、ホントの夫婦になってしまうような…」というせりふがあります。

ホントの夫婦というのは多分、二人の間の緊張感がない関係を指しているのだと思います。あえて緊張感を求めて、不器用な夫婦ごっごを続ける二人といったところでしょうか。

まとめ

二人の間の触れようとしても触れられないような微妙な距離が、この映画を魅力的にしているポイントだと思います。

『東京日和』の脚本は岩松了。でも、岩松了が書いた脚本(『映画日和』[ISBN4-8387-0943-9]という本に収録されています)と映像を比較するとかなりちがいがあります。ちがいといっても、脚本の方にあるシーンが映画ではカットされているというパターンが大部分なのですが、そのちがいをみるだけでも監督竹中直人の意図が浮かびあがってきます。このページではそんなちがいのいくつかを紹介していきます。

冒頭の電話

映画では、島津が編集者の水谷(松たか子)に電話をするところからはじまる。ところが、脚本ではその前に『東京日和』の本の装丁について誰かに電話をしている。

''「うん、オレもどういうわけか、今年の夏はよくひまわりを見たのよ。Tシャツのプリントでも、よくひまわりを見たしね」…「ブーム?……困るな、ブームで表紙飾られちゃ……ぇ?テーマ?ああ、隠れたね……ところで、誰がやってくれるの、その装丁」

これから『東京日和』の本を出すという説明には十分すぎるくらいなっているが、特別な思い入れがあるはずの本に対して、ちょっとビジネスライクすぎるように感じる。映画では、水谷に対する電話の中に、脚本にはなかった、本のタイトルを『東京日和』に決めた、というせりふが挿入されている。

猫の名前

脚本では、荒木夫妻が実際に飼っていた猫の名前と同じチロだったが、映画ではチョロに変更されている。現実の荒木夫妻からできるだけ離れようという意思の表れだろうか。

ヨーコに名前の間違いを注意する人

島津の昔の職場の後輩が何人かマンションに訪ねてきている。その中の一人水谷(松たか子)の名前をヨーコは何度も「谷口さん」とまちがって呼んでしまい、そのことを訪問客の一人に注意されたということになっている(そういうシーンがあるわけではなく島津とヨーコの会話から窺い知れる)。注意した人は脚本では「鈴木」になっているが、映画では「平田」になっている。鈴木というのは女性で、平田は利重剛演じる男性だ。ヨーコが当然意識する水谷という女性のほかにもう一人女性がからんできて、関係性が散漫になることがいやだったのだろうか。考えすぎか。

子供服売り場

テツオというのはヨーコのことを「おばあちゃん」と呼んで慕う近所の男の子。テツオに着せるため、ヨーコは女の子向けの服を子供服売り場で買おうとする。DVDのおまけの未公開シーンには含まれているが、本編ではまるまるカットされている。このあとすぐテツオに服を着せようとするシーンがあるので、エピソード自体がなくなったわけではない。それでも、女の子用の服をどこから手に入れたのかがあやふやになっている。もし、このシーンが残されていれば、わざわざ店で買い求めたということが明らかになるので、ヨーコの心のあやうさをより際立たせる効果があったはずだ。

濡れたジョギングシューズ

昼間二人でジョギングをしていると急に雨が降り出してきた。それに構いもせず、石のピアノを連弾で弾いたりしているから、シューズはびしょびしょ。夜のベランダで二足のシューズを並べて乾かすシーンがあるのだが、おまけの未公開シーンになってしまっている。たかだか数秒で、たいしたシーンではないが、せっかく撮ったのに本編に含めなかった意図はよくわからない。

喫茶店での水谷との会話

中央線のガードの下で島津は偶然水谷に出会う。喫茶店さぼうるに入る二人。映画ではここでの会話の半分以上が省略されている。脚本では、ジュースをこぼした子供をたたく母親を見て水谷が「ああいうことって大きくなっても覚えてるんですよね。私、父親になぐられたの、今でも覚えていますからね」といったりとか、水谷に子供は作らないんですか、ときかれて、島津が、キミの方こそどうなんだ、結婚は、とやりかえしたりしているのだ。

レストランでのヨーコとの会話

街で偶然ヨーコの姿をみかけた島津はついあとをつけてしまう。ヨーコに花を渡す若い男(浅野忠信)の姿を見て、島津は心穏やかでなく、レストランにヨーコを呼び出す。島津は何気なく若い男のことを聞き出そうとするのだが、映画ではヨーコははぐらかしたまま結局何もいわない。ところが脚本では、あっさり花をもらったことを告白してしまっているのだ。柳川で島津が「オレたちは、とても仲のいい夫婦だと思われている……実際そうかもしれない……でも……」…「どうして隠してしまうんだろう。話題にしてもいいようなことを」というせりふに重みをつけるためにも、ここは絶対若い男のことはいわない方がいいと思う。

マンションを訪ねてくる阿波野

阿波野とは森田義光演じる編集者。水谷の引き合わせで一度酒を飲んだのだ。その阿波野が仕事の依頼に島津の住むマンションに訪ねてくる。入り口のところで、テツオの祖母がタクシーに荷物を積むのを手伝うシーンや、マンションのベランダで島津と会話を交わすシーンが脚本に含まれている。

会話の中で、島津はヨーコとの関係を率直に語る。「時々、夫婦ごっこをやっているような気になってきて……その、耳のことも……心配は心配なんですが、お互いに問題にしすぎると、なんて言うのかな、ホントの夫婦になってしまうような……」。これに対して、阿波野は、ふたりとも社会に溶け込みたくないって思っているんじゃないのか、と指摘する。

かなり鋭いつっこみだが、竹中直人は他人に夫婦のことをべらべら話すシーンを不自然に感じたらしい。映画の本編では、全てカットされている。

ヨーコの勤める旅行代理店の人間模様

ヨーコの上司の外岡(三浦友和)と同僚の宮本(鈴木砂羽)が不倫関係にあることはそれとなくにおわされているが、脚本では、匂いや服装に敏感なヨーコにいろいろ指摘されて、関係の発覚を恐れるシーンがある。ヨーコの職場での人間関係はうまくいっておらず、最終的に辞めることを求められてしまうわけだが、そのはっきりとした理由はこのシーンに示されている。映画でカットされた理由は、多分ヨーコの敏感さが少し病的に映ってしまうからではないかと思う。

小劇場の外

島津が偶然知り合った軍服姿の男は俳優だった。彼が主演の芝居をヨーコと二人で観にいくわけだが、脚本では、ヨーコが隣に座った女性の香水の匂いに耐え切れず、途中で抜け出してしまう。映画でカットされた理由は上と同じだろう。

マンションの外の噂話

ヨーコは学校を休んだテツオを夜まで連れまわし、マンションじゅう大騒ぎになってしまう。島津は、石のピアノのある場所で二人を発見し、連れ戻す。映画を見ながら、このあと、この件はどう決着がついたのかなと気になっていたが、脚本では、近所の主婦たちが「島津さんとこの奥さんが…」と噂話をしている。やはり、すっかりばれてしまったらしい。

柳川の一輪車のおじさんと川下りの新郎新婦

柳川の宿で、白昼、障子の影で二人がキスをするシーンがある(画面では見えないがほんとうにしていたらしい)。ヨーコの手が障子のヘリをぎゅっとつかむのがアップになってとてもすてきなシーンだ。脚本では、ガラス戸ごしにこの光景を見ていた一輪車のおじさんが、変なところに一輪車をぶつけるシーンがある。

また、脚本では、川下りをする二人の舟と、新郎新婦をのせた舟がすれ違う。

一輪車のおじさんと川下りの新郎は、両方とも岩松了が演じることになっていた。どうでもいいが岩松了は最近画面に出すぎだと思う。

まとめ

こうしてみてみると、脚本にあったシーンをカットすることによって、若干説明不足になっていることがわかります。カットしない方が、話のつながりは見えやすい。でも、逆にそのことによって、二人だけの世界を描いた一種のファンタジーに仕上がったような気がします。

ロケ地めぐり東京編

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1997年に公開された竹中直人監督の映画『東京日和』はぼくの大好きな映画です。センチメンタルなストーリーもさることながら、全編に映し出される美しい東京の風景を見ているだけで、わくわくするような悲しいような不思議な気分になります。

島津家の広いベランダ。向かいの2階建ての家は映画撮影中に建てられた。家のないシーンとあるシーンの対比により時間の経過がうまく表されていた。(2000-05-01:世田谷区豪徳寺1)

島津家のあるマンションの入り口。(2000-05-01:世田谷区豪徳寺1)

島津家の最寄駅という設定の世田谷線西太子堂。(2000-05-01:世田谷区太子堂4)

西太子堂駅脇の道。主人公島津は何度となくこの道を通る。(2000-05-01:世田谷区太子堂4)

ふとした出来事で知り合った男が出演している舞台を見るため二人で並んでいると、島津のファンの女の子から握手を求められる。(2000-05-01:世田谷区北沢1)

テツオ君(ヨーコのことを「おばあちゃん」と呼んでなついている男の子)がほんとうのおばあちゃんと遊んでいた公園。(2000-05-01:世田谷区赤堤4)

ヨーコが飛蚊症だと診断された病院。(2000-05-01:世田谷区奥沢3)

島津とヨーコがジョギングをしていた公園(原峰公園)。意外と狭い。このあと周防正行監督演じる郵便屋さんとすれちがう山道→民家→石のピアノと向かうが、そちらはまだ未発見。稲城市坂浜にあるらしい。(2001-03-20:多摩市関戸6)

和光時計台。(2000-05-04:中央区銀座4)

数寄屋橋。撮影当時は"SUKIYABASHI"というロゴが書かれていたが、今は"GIN5ZA"になっている。ここで、島津は偶然街を一人で歩くヨーコの姿を見かける。(2000-05-04:千代田区有楽町2)

島津は何気なくヨーコのあとをつける。(2000-05-04:中央区銀座4)

ヨーコは浅野忠信演じる青年から花を渡されそうになる。映画の画面にはうつってなかったが確かめてみたら本当に花屋があった。(2000-05-04:中央区銀座8)

常盤橋公園。浅野忠信演じる青年がよくベンチに座って本(国木田独歩『運命』)を読んでいる。実際いってみるとベンチはなく殺風景な公園だった。島津がヨーコの上司・同僚と偶然会うのもここ。(2000-05-03:千代田区大手町2)

東京駅丸の内口。この上にある東京ステーションホテルのバーで島津はヨーコがくるのを待つ。(2000-05-03:千代田区丸の内1)

東京ステーションホテルでの食事のあと、電車の中でひろった空き缶(カンカラカンタロウ)を蹴飛ばしながら歩いた道。まずは弥生町のお化け階段。(2000-05-04:文京区弥生町2)

カンカラカンタロウと別れて谷中銀座へ。(2000-05-04:台東区谷中3)

島津がヨーコの会社の上司・同僚と酒を飲んだ店。ヨーコに会社をやめてほしいといわれる。(2000-05-04:千代田区丸の内3)

神保町の喫茶店さぼうる。島津が松たか子演じる編集者と2度ここに入っている。1度目は転職の相談をされたとき、2度目は子猫をもらうとき。(2000-05-03:千代田区神田神保町1)

プランタン前。さぼうるに向かおうとして、ヨーコは車にはねられる。(2000-05-04:中央区銀座1)

島津はカメラをぶらさげてあちこち歩き回る。中央線のガード下にある「御成道」の案内板をじっと見つめるシーンがあった。(2000-05-03:千代田区神田淡路町2)

月島で島津が歩いた街角。(2000-05-04:中央区月島3)