大阪に行ってきた。関西弁のネイティブスピーカーが発音する「マクド」(一応知らない人のために書いておくと、マクドナルドのこと)を聞きにいった―わけではなく、大阪市立美術館で7月2日まで開催されているフェルメール展が第一目的だ。
フェルメールは17世紀のオランダの画家で、生涯に30数枚の作品しか残さなかったといわれている。今回、大阪にそのうち5枚が集結しているのだ。ここ数年注目度が高まっている画家だが、美術に興味がない人の中には知らない人もいるようで、「フエルメール?チェーンメールの一種か?」と訊かれたりもした。
今回の同行者は会社の同僚。イニシャルでは面白くないので、ここでは仮にエルビスさんと呼ぶことにする。もちろん、エルビスという名前とは全く何の関係も人で、多分ドーナツがそれほど好きでもないし、ラブミーテンダーも歌わないと思う。
金曜日、会社を定時にあがり、ぼくらは新横浜駅に向かった。途中、部屋のクーラーを消し忘れたというエルビスさんを途中の駅で待つというハプニングはあったものの、ぼくらは新横浜に8分遅れで到着したひかりに乗り込んだ。新大阪どまりだというのに意外に混んでいたが、なんとか座席を確保することができた。久しぶりに乗る新幹線は快適だった。ちょうど9時くらいに、新大阪についた。駅のアナウンスが標準語なのに少しがっかりする。話しながら歩いている人とすれちがっても、はっきりわかる関西弁の人は少ないような気がする。
東京では目をつむっても歩けるぼくだが、大阪に関しては最初の一歩さえもままならない。エルビスさんの指図に従い、地下鉄御堂筋線に乗り込んで、まず梅田に向かった。御堂筋線は赤い帯が入ったレトロな感じの電車だ。梅田は3駅目。地下鉄の階段を上がると、JR大阪駅は目の前で、周りは、ホテル、百貨店、オフィス等のビルが林立する大都会という感じだ。エルビスさんが現金を引き出すのを忘れたというので、しばらくキャッシュコーナーを探し回る。ようやく見つけたものの、すでに取り扱いが中止されていた。が、キャッシュカードでなんとかなるだろうということで決着。
また御堂筋線でなんばに移動。大阪らしいものを食べようということで、エルビスさんの知っているお好み焼き屋に連れていってもらえることになった。えびす橋の商店街を心斎橋近くまでいったが、影も形もみつからない。でも、ぼくは食事のことはどうでもよくなっていた。そうしてにぎやかでどこまでも続く商店街を歩いているだけで、楽しくて十分満足だったからだ。東京はほとんど歩き尽くしてしまって、こんな新鮮な楽しさを長らく感じることはなかったが、遠く離れた場所にまだ掘られていない鉱脈が眠っていたのだ。
ぼくはどこまでもまっすぐ歩きたかったが、途中でUターン。十数年まえ、阪神タイガースが優勝したときファンが飛び込んだことで有名な道頓堀を再度わたったところで、かに道楽の方へ左折する。そちらもにぎやかな商店街だ。その辺をうろうろ歩いているうちに偶然、探していたお好み焼き屋「千房」を発見。おつかれさまセットというのを注文して、お好み焼きと焼きそばをぱくついた。歩きつかれた体によく冷えた生ビールがめちゃくちゃおいしかった。
食事のあとは泊まるところ。えびす橋の商店街をなんば駅に向かって南下する。途中、12時近い、ラウンドミッドナイトといった時間帯なのに、まだ開いているケーキ屋があって驚く。そういえば、同じ通りを北上するときに、ビルの屋上に小象の像がディスプレイしてあるのを見てなんともいえない奇妙な感じにおそわれたことを思い出した。そのビルも、平野屋というケーキ屋だった。大阪のケーキ屋はみんなすごい。
安いビジネスホテルで十分と思ったのだが、なかなか見つからない。ちょっと寂れたほうにツインで一人3500円というところもあったが、概観が怪しげな雑居ビルのような雰囲気で、ちょっと躊躇した。結局、御堂筋沿いのHolidayInnというこぎれいなところに決めた。値段はさっきのところの3倍近かったが、何より安心だ。エレベータで11階まで上がる。静かで、ほかに宿泊客のいそうな雰囲気はない。部屋はなかなか清潔で、ほどよく広い。窓からの眺めも悪くなかった。
のどが渇いたので近くのコンビニまで買出しにいった。1時近かったが町にはまだ人があふれかえっている。酔いつぶれた女の子の手足を4人でつかんで運んでいる一団に出くわした。なんか大阪らしい。なんでもありだ。
そういえば、雪印の低脂肪乳による食中毒が問題になっている。コンビニで大阪工場製の「アヘ」(AHE)の刻印の入ったやつを探してみたが、当然ない。あったら大変だ。お茶のペットボトルとアイスクリームを買う。
シャワーを浴びて、適当に夜のひとときを過ごしたあと、2時半ごろに消灯する。が、御堂筋を通る車の音がやけにはっきり聞こえてきて、なかなか寝付かれなかった。

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