厚い雲がたれこめた陰鬱な日曜日。出かけたのも3時近くなので、あたりにはすでに一日の終わりという感じがただよいはじめていた。
まずは、床屋で髪を切ってもらう。今回は前回とは別の女性の人が担当だった。この床屋は人によって、調髪のスタイルがちがう。この人は、全体から部分へ向かうのではなく、最初から細かくあちこちにはさみをいれていくタイプだったので、どうなるか少し不安も感じたが、最終的にはいつも通りまとまった。
身だしなみを整えたところで、食事のことを考える。腹の虫が囁く声を聞くと、そばかカレーか二者択一という雰囲気だった。カレーなら蒲田の駅前にも、ボリュームたっぷりなやつを手ごろな値段でだしてくれるところがあるのだが、ここのカレーは辛さが全くないので、物足りない。東京駅までいってから食べることにした。
東京駅の改札を出てカレー屋に直行。ポークカレーにカツが乗って500円。リーズナブル。
そのあとどうしようか迷ったが、今まで仕事のせいでできなかった分、今日も散歩をすることにした。電車で御茶ノ水に向かう。
医科歯科大の横をすりぬけ本郷方面へ。金花通りという商店街を歩く。もともと商店が少ない上に日曜日ということで大半がしまっているので、かなり物寂しい。しかも夕闇がだんだん濃くなってきた。
麟祥院という寺の脇の人一人通るのがやっとの道へ入る。地図にも載っていない道だ。独特の雰囲気がある。通俗的にいうとお化けがでそうな道だ。お化けがでないという条件付で、ぼくはこういう雰囲気はきらいじゃない。
東大の壁面に枯死した蔦がまとわりついていた。なんだかとても侘しい。その先は無縁坂。これまた寂しい名前だ。下りきって信号を渡ると、その先は不忍池。蓮の花が枯れて無残な様を呈している。気分が少し沈んでくる。
上野の山には登らずに、不忍池と上野の山の境の道を根津方面に向けて歩いた。言問通りにたどりついたところで、今度は文京区と台東区の境界線上を歩く。途中までは見通しのいいまっすぐな道なのだが、途中からとてもなく蛇行する。ぼくはこっそり“The Long and Winding Road”と呼んでいる。ここは昔小川が流れていたのだ。夏目漱石の『三四郎』で、団子坂の菊人形の雑踏を抜け出した、三四郎と美弥子がこのあたりで座り込んで休憩する場面がある。そこで、美弥子は三四郎に「ストレイシープ」という意味深な言葉をいうのだ。
そのまま、谷中の商店街へ。谷中コーヒーといういろいろなコーヒーを量り売りしてくれる店があった。なかなか本格的な店のようだ。何人かが順番をまっている。今度買ってみよう。また、このあたりは、おいしそうな蕎麦屋がたくさんあることに今さらながら気がついた。
日暮里駅を越えて荒川区のディープなゾーンに入っていく。夜歩くと、その侘しさがいっそう引き立つような地域だ。だが、それは決して悪いものではない。人の不安を煽るような闇ではなく、すっぽりと包み込んでくれような暗さだ。
首に赤いリボンをまいて鈴をぶらさげた猫がちょこんと座っている。何かを待っているようだった。きっと、夜が来るのをまっているのだろう。
結局町屋まで歩いた。7.5kmだった。
千代田線と銀座線を乗り継いで渋谷へ。久しぶりの渋谷だったので、いろいろ見て回るが、結局何も買わなかった。

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