ブランコの向こうで

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久しぶりの青空。空の青さが目にまぶしい。髪が鬱陶しくなってきたので、まず床屋へいく。この前と同じ人が担当だった。前回よりはまとまりがいいようだ。

東京駅までいってカレーを食べながら、今日の散歩のコースを考えた。脳裏に浮かんだのは木漏れ日に照らされるお堀端の遊歩道。というわけで、四谷に向かった。

駅前の交差点を渡りながら、携帯電話で大声で話している男がいる。服装からすると、結婚式か何かの帰りらしい。内容は、エロースがどうのこうの、アフロディテがどうのこうのという話で、少し怒ったような調子なのが、とても不可解だった。何の話だろう。

Rio500で音楽を聴こうとしたら、右の音が聞こえない。とうとう耳がいかれたかと思ったが、原因はヘッドフォンのケーブルが曲がりくねって接触が悪くなっているせいだった。ベンチに座って、ケーブルをほぐした。

音楽のリズムにのりながら、お堀端の道を歩く。踏みしめる落ち葉の感触が気持ちいい。

目の前にブランコが見えた。なんだか無性にのりたくなった。少なくとも20年以上はのっていないのではないか。まわりに人気がないことを確かめて、ぼくはゆっくりとブランコをこぎはじめた。長いブランクがあったが、こぎ方は忘れていなかった。徐々に徐々に振幅を大きくしていく。顔にあたる風が気持ちいい。ブランコをこぐにはかなり腕の筋肉がいるということを思い出した。眼鏡をかけた中年のおじさんがこちらにやってきた。別になんと思われてもいいや。どうせ、ぼくは変な人です。今度は堂々とのろう。公園で子供たちにまじって順番待ちをしてもいい。

新見附橋のたもとに“LYON”というフランス料理店がある。いちどだけランチを食べた。メインディッシュは魚で、味はよかったが、骨が多くて一苦労した。魚の骨をとるのはとても苦手だ。魚はこんなに体中骨だらけで痛くないのだろうか。店のガラス窓のあちこちに、ボジョレヌボーのポスターが貼ってあった。そういえば今年ももう解禁されているはずだ。飲んでみることにしよう。

逓信病院の前にフジテレビの車が止まっていた。その先のコートメダリオンの前にプレスの人たちが集まっている。中で会見が開かれているようなのだが、よくわからない。

あまりいい思い出のない母校の前を通り過ぎ、神楽坂を上がる。太陽がビルの谷間に沈むと同時に、冷たい風がふきつけてきた。落ち葉が乱雑に舞い踊る。夏で一番つらいのは湿気だが、冬は風だ。体がこごえる。

早稲田大学の前を右折し、目白通りへ向かう。目白通り沿いには、おいしそうな店が何件かあった。特に目をひかれたのは「ふぐ」。まだ一度も食べたことがないので、年末のボーナスが出たら食べてみようかと思わないこともない。

冷たい風に追い立てられるように、目白駅の改札をぬけた。7.4kmだった。

山手線で渋谷まで行く。東急東横店地下(フードショウ)のレシピエで久しぶりに紅茶を買う。「マスカット」。フレーバーティでは結局これが一番おいしい。

ブックファーストで、美術手帖12月号を買った。ここ数号は惰性で買ってしまったような感があったが、今回はほんとうに面白そうだ。『20世紀の美術100』。アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、ドイツ、中東欧、ロシア、アジア、日本、その他という10の地域の各Decadeを代表するアーティストを一人ずつ選んでとりあげているのだ。特にイギリスの70年代の代表に選ばれたリチャード・ロングという人は面白い。何と、草原の草を踏んでつけた道筋が作品なのだそうだ。まさに、歩きとアートの融合だ。これならぼくにもできそうな気がする。

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