むべ嵐というらむ

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陽射しは完全に春だが、風は凍えるような冬。アンバランスな日だ。

先週白山の薬膳カレーの店「じねんじょ」の前を通りかかったら久しぶりにまた食べたくなった。今日もまた白山では芸がないので、谷中の店にいくことにした。日暮里が最寄駅だが、散歩を兼ねて上野から歩くことにする。

上野公園は相変わらずの人出。駅の構内で美術館や博物館のチケットを売っている窓口に行列ができている。鑑真和上展が一番人気らしく30分待ちとかいっていた。何が展示されているのか想像できない。

西洋美術館の前を通ったので、ロダンの「地獄の門」をもう一度見てみようと思った。漆黒の門扉に何人もの人の姿が埋め込まれている。表情まではわからないが、楽しい顔をしているとはとうてい思えない。それにしてもよく人がやってくる。みんなしばらく門の前にたたずみ、そして去っていく。門の前に賽銭箱をおいておけば、つい投げ入れてしまう人がいると思う。

国立博物館よりの広場でたくさんの人たちが座り込んで賛美歌を歌っている。白地に赤い文字の「ナオス教会」という幟が何本かたっている。座っているのは中年以上の男たち。かなりみすぼらしい服装だ。ホームレスに対するチャリティーか何かだろうか。歌が終わった後には温かいスープか何かが配給されるのかもしれない。

芸大は合格発表だった。女の子が何やら配っていたので、考えなしに受け取ってしまったが、学生向けのマンションの物件情報だった。一応まだ学生に見えないこともないということにしておこう。

谷中墓地を通り抜けて、お目当てのカレー屋へ。いつもながらの閑散ぶり。客はぼく一人だった。ちょっと入りにくい雰囲気なのと、値段が少し高めなのがよくないのだろう。野菜カレーが1300円ちょっとだ。しかし、味はなかなかいいと思うし、体にいいような気もする。いいと思うのだが。

富士見坂。最近まで冬の晴れた朝には富士山が見えたそうだ。東京でほんとうに富士山を見ることのできる最後の坂だったそうだが、つい最近さえぎるように不恰好なワンルームマンションが建ってしまった。

諏訪神社の脇の階段をおりて、西日暮里の駅の下をくぐると、静かな高台とはうってかわった猥雑な街に出る。まるで「どこでもドア」を通り抜けたようだ。

貨物線の線路脇で、ビデオカメラを構える中年の男性がいた。しきりに時計を気にしている。もうすぐ何かがそこを通るのだろう。それは単なる地味な貨物列車かもしれないが、まわりの殺伐とした風景とあいまって、それなりの絵になりそうだった。

荒川区のさみしい商店街をはしご。鬼怒電通りから尾久本通り。土曜日だというのにシャッターをおろしている店が何件かあった。ところで鬼怒電通りはなぜ鬼怒電というのだろう。通りを歩いていても鬼怒電と名のつくものは一つもなかった。

4時を過ぎて風はいよいよ強くなってきた。植木の鉢がそこかしこで倒れている。山の草木はどうかしらないが、街の草木は倒れていた。

尾久の先の宇都宮線・高崎線の踏み切りにはエレベータ付の歩道橋がある。非常に珍しいのではないかと思う。今日はじめて使ってみた。驚くほどゆっくり動くエレベータだった。上った先は天井と壁のある通路になっている。壁には窓があって、線路がよく見える。鉄道ファンにはたまらない。

宇都宮線・高崎線の線路と京浜東北線・新幹線の線路にはさまれた地域はまるで23区内とは思えない。地方のうらさびれた町におりたってしまったようだった。

散歩は上中里まで。7.8kmだった。

秋葉原でDVD、岩井俊二監督の「Love Letter」を買った。中山美穂と豊川悦司主演。

蒲田に戻って買い物をしていたら、2000円札をお釣りにもらった。手にするのは二度目だ。この前はやむにやまれず手放してしまったが、今度は大事にしよう。

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