忘れん坊将軍、見参

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8月。土曜日。この2つのキーワードが心にひっかかって、歯医者の診察券を確認してみたら、今日の14時が診察時間だった。そのとき時計は忘れもしない13時36分。歯医者にいくのに歯を磨かないわけにはいかないので、ざあっと磨いて、ついでに顔をちゃぷちゃぷ洗い、髭剃りは省略して、出発。おっと、その前に服を着替えなくては。結局、家をいったん出てから忘れ物をとりに戻ってしまったので、どうあがいても間に合いそうもない。歩きながら歯医者に電話して、遅れる旨伝えたのだった。こういうときに携帯(PHS)は便利だ。いやあ、それにしても狂おしいくらい忘れていた。

暑い。歯医者(川崎にある)につくまでに汗だくになってしまった。

歯医者では、歯の磨き方が悪いと指摘されてしまった。歯と歯の間に食べかすが残ってしまっているそうだ。確かに最近磨き方がぞんざいになっていたかもしれない。

そのあと顔の写真を撮ることになった。担当の女の人がなんか慣れていなくて、やけにもたついた。最近システムが変わったそうで、画面をぼくに見せてどうわからないかを説明してくれようとする。結局別の画面を呼び出してどうにかなったようだ。ちょっと時間はかかってしまったが、おもしろかったので、もちろん許した。さて、正面の写真をとるときに、笑ってほしいといわれた。これがぼくは苦手で、つい引きつってしまうのだ。こうして、この歯医者のシステムの中に、無精髭で無気味な笑いを浮かべたぼくの顔が蓄積されてしまったわけだ。なお、ここでは TurboLinux を使っているようだ。

次の予約は1年後だそうだ。ほとんど忘れそうな気がする。覚えていたら奇跡だ。それにしても1年後のぼくは、やはりこんな感じでやっているのだろうか。

とりあえず南武線に乗り込む。南武線に乗ると途方もない遠い場所に向っているような気がする。

登戸で小田急に乗換え。小田急は複々線化工事の真っ最中で、あちこちでがたがたやっている。登戸も下りホームの位置が移動したようだ。ぼくの乗ったのは上り。急行で2駅目の下北沢でおりる。

とりあえずは食事だ。ずっと以前から目をつけていた沖縄料理屋にいってみることにした。南口の商店街が終わって茶沢通りに合流する直前にその店はある。入ってみると意外なことに、食券を買うスタイルだった。沖縄といえばゴーヤ。ゴーヤチャンプルセットにしてみた。食券を渡してしばし待つ。店内は南国らしいゆるい雰囲気だ。客はこの時間(16時前後)にしては多いのではないか。さあ、出てきた。小ぶりの白い飯、沖縄そば、そしてゴーヤチャンプルだ。ゴーヤチャンプルを本格的に食べたのははじめてだ。もうすこしくせのあるものかと思っていたが、さにあらず。苦味が全体の味付けにマッチして、結構いけるものだ。

さて、散歩はとてもじゃないが無理なので、下北沢の街をそぞろ歩く。雑貨屋、ツクモなどを適当にひやかしつつ、あてもなくぶらついた。日本茶の店で茶を焙煎する香ばしい香りがあたりに広がっていた。だが、そんな香りのパワーも暑さには勝てず、早々とぼくはダウン。下北沢の駅に戻り、渋谷に向った。

さて、散歩ができないのなら、せめて車窓から街を眺めようというわけで、バスで蒲田まで帰ることにした。渋谷のバスターミナルにいき、ちょうど停まっていた田園調布行きのバスに乗り込んだ。それはノンステップバスで座席の位置が普通のタイプとちがっていた。車輪の位置にある座席が王座のように高い。新鮮さより違和感を覚えた。おまけに隣に座ったおばさんがきらいなタイプだった。ときたまひとりごとをいったり、咳の音がやたら大きかったり、前の席でかかってきた携帯電話に出た女性に注意したりする。いや、もちろん注意するのは悪いことではない。その注意の仕方がどうにもいやな感じなのだ。わざわざ女性の方をたたいて、「あなた、知らないの?電話使っちゃいけないんだよ。やめてください」。途中でおりた連れの人と話していた内容によると、何かのセールスをやっているようなのだが、その客のうち80%くらいは、そのおばさんとこれ以上係わり合いになるのがいやで契約しているにちがいない。

さて、バスは246を駒沢までひた走り、左折して自由通りをゆく。混雑する自由が丘の街中をぬけて、終点田園調布。田園調布からは蒲田行きのバスだ。こちらもちょうど停まっていた。雪谷や矢口渡を経由して夕闇迫る街をバスはかけていった。

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