グレープフルーツムーン

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胸がざわざわして8時前に目覚める。最近ずっとこうだ。外では激しい雨の音が聞こえた。雨音は強くなったり弱くなったりをくりかえしながら、最後に消えた。と同時くらいにぼくもまた眠りについた。

再び目覚めたのは11時ごろ。外を見ても、雨が降った様子はまったくない。まるで夢の中のできごとのようだ。

3時少し前にでかける。最初東京駅に向うつもりで京浜東北線に乗り込んだが、ふと薬膳カレーが食べたくなったので、田町でおりることにした。隣に座っていたちょっと怪しい感じの若い男は正体をなくして眠り込んでいた。頭をこちらの肩にもたせかけるだけならいいのだが、電車の揺れにあわせて振り子のように体をゆらし、頭をぶつけてくる。電車の横揺れで、頭の位置が若干前にずれたのでほっとしたが、今度は手すりに何度も何度も激しくぶつけている。何で目覚めないのか怖くなった。息はしていたので死んではいないようだったが。

田町から都営三田線の三田駅まで歩き、高島平方面に乗り込む。薬膳カレーの店は白山にあるのだ。谷中にも姉妹店があるが、店内が暗くちょっとディープな感じなので、白山の方が入りやすい。

白山で降り、A3出口を上がるとすぐ目の前にカレー屋はある。客はぼくの他に若い女性が一人だけ。まだ入ったばかりのようで、注文を聞かれたのはぼくの方が先だった。もともと決めていたので、ぼくはメニューを見ずに野菜カレーと答えた。その女性の方は、メニューを見て日替わりカレーとデザートセットにした。しまった、いつの間にかそんなものができていたようだ。値段もセットの方が安い。なんかちょっと後悔したが、野菜カレーがとてもおいしかったので、どうでもよくなった。

近くの白山神社にお参りしてから散歩開始。東洋大学の裏手を通って、千石方面へ。前方でカラスが3羽オレンジ色のぺらぺらのものをいじくりまわしているのが見えた。ピザ屋のメニューのように見えたので何を注文するか相談しているのかとも思ったが、近づいてみると、何かの味噌漬の何かがなくなって、ビニール袋に味噌がこびりついているものだった。

大塚駅前から上池袋へ。すべり台とブランコと、しがみついてぐるぐる回る球形の物体(何という名前かわからない)だけがある寂れ果てた児童公園で休憩。そのあと板橋駅まであるいた。6kmちょうど。

渋谷までいこうと思ったが、最初にやってきた電車は新宿どまりだった。新宿で山手線に乗り換えるのも面倒なので、恵比寿行きを待つことにした。それでベンチに座る。

ふと目の前のジーンズ姿の女の子を見ると、腰のあたりでピンク色のものがくるくる回っている。一瞬、すごいファッションだと思ったが、中のCDのレーベルが見えるタイプの携帯CDプレイヤーだった。

次の電車も、その次の電車も新宿止まり。「スイマセン」と南米系のはでなおねえさんに聞かれた。「ココハイタバシデショ?」もちろんその通りだが、そんなことを聞くシチュエーションが思い当たらなかった。

次も新宿止まりだったので、おかしいと思って時刻表を確認したら、恵比寿行きはさらにその次の次だった。さすがにもう待ちきれず、目の前の新宿行きにすべり込んだ。

新宿で面倒な乗換えをして渋谷へ。今日はCDを買い込むつもりだ。まずタワーレコードを見てからHMVへ。コープマン指揮アムステルダムバロックオーケストラの『バッハ管弦楽組曲集』。ホグウッド指揮エンシェント室内管弦楽団のやつは持っているのだが、ちょっと癖がある気がしていたので、他の演奏が聞きたくなったのだ。ノリントン指揮ロンドンフィルの『ヴォーン・ウィリアムス交響曲第2番』。2チャンネルのクラシック板でこの曲が紹介されていたので聞いてみようと思った。あとは“Café Après-midi Fumé”。カフェ気分に浸るため。

空を見上げたら、ナイフで切ったようなきれいな半月。グレープフルーツが食べたくなった。

スターバックスに寄って、帰路につく。帰りの東横線の電車の中で、隣に座った若い男女がまったく噛みあっていない会話をしていた。女の方は疲れていてあまり話したくない様子で、男の方はしつこく同じことを繰り返している。これは、別れるなと思ったが、ぼくが電車を降りるころにはいい感じになっていた。わからないものだ。

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