昨日に引き続いて抜けるような青空。あんなところに放り出されたらつかまるものが何もなくて溺れてしまいそうだ。
新橋経由で浅草に向う。大黒屋の天丼を食べようと思ったのだ。大黒屋の天丼といえば有名だが一度も食べたことはなかった。値段もそれなりに高いし、昼食時は混雑しているので、つい入りそびれてしまっていた。そのままではずっと入らないままだったかもしれないが、たまたま軽く背中を押してくれる人がいたので、いってみようと思ったのだ。
吾妻橋の袂で地上に出る。駅前にはスターバックス。10月に開店したばかりのはずだ。
実は大黒屋の場所をよく確認せずに出かけてしまい、何度か前を通りかかったあやふやな記憶だけが便りだったのだが、引き寄せられるようにすんなりとたどりついた。それだけでとてもうれしくなる。
うれしさついでに1600円の海老2本のやつにしようかと思ったが、キスも好きなので、海老1本、キス、芝海老の掻揚の入った1400円のやつにした。どっぷりとたれに漬かって小麦色になった衣がごはんとマッチしてとてもおいしい。天ぷらはさくさく感が大事だと思っていたが、天丼の場合むしろつゆだくでねっとりとしていた方がいいのかもしれない。
満足して散歩開始。窓が大きくて中が見通せるおしゃれな建物があるなと思って、近づいたらユニクロだった。最近ユニクロはあまりおしゃれという感じがしないが、ここはなかなかいい。
かっぱ橋本通りという商店街を上野へ向って進む。「かまた」という料理用の包丁を扱う店が目に入った。刃物を扱う店というとなにがしかの緊張感があるが、内装がシックなのと、店をきりもりしている初老の女性が上品そうな感じでよかった。
せっかくなので東京の地下鉄唯一の踏切を渡っておこうと思い、道をそれた。銀座線の車庫が東上野にあって、その直前で道路を横切るので、必然的に踏切になっているわけだ。今日はたまたま工事中で、電車が間違って通らないようにロープで線路がふさがれていた。初詣客でにぎわう神社のようにおおぜいの人が足の踏み場もないくらい密集してないやら作業をしている。それはそれで、なかなか珍しい光景を見させてもらった。
両大師橋へ続く歩道橋をえっちらおっちら昇る。その向こうは上野公園。一気に高台だ。寛永寺の方へ迂回して谷中霊園の中をかすめる。千駄木の駅前を通り抜けて、団子坂。夏目漱石の『三四郎』では、みんなで菊人形見物に来たところだ。そんなもので人を集められたなんて今では想像もできないが、ぜひ見てみたい気がする。
白山を経由して、後楽園まで。7.8kmだった。
(追記)「~だけどわかる?」後楽園の南北線のホームでベビーカーを携えた女性二人が話していた。高校時代以来久しぶりの再会らしい。片方が「面倒だから子供二人続けて産んで、あとは産まないことにした」といっていた。続けざまだと面倒じゃないものなのだろうか。
南北線、半蔵門線を乗り継いで渋谷へ。今日はシアターコクーンで芝居見物。チェーホフの『三人姉妹』(岩松了翻訳・演出)だ。時間が少しあったので、スタバに入ったらブルーベリースコーンの試食サービス(一切れだけだが)をやっていた。おいしかった。
芝居は3時間と長丁場だったが、とても感動した。途中の15分間の休憩で特に用事がなくても席を立ったのがよかった。腰がいたくならなかったし、集中力も持続できた。そのとき一応パンフレットを買った。1500円という値段に見合うものではないが、役者の顔を確認することができた。
外に出たら夜空には細い三日月。あれにならつかまることができそうだ。

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