今日は久々の有給休暇。いつもより少し早めに家を出て国立に向かう。
品川で山手線に乗り換えようとしたら、外回りの電車が遅れていて、ホームに人があふれかえっていた。特に急いでいないので10分近くたってからようやくやってきた電車を見送って、次の電車に乗ることにした。座れた。
新宿で中央線快速に乗り換え。ちょうど特別快速がやってきた。ラッキーだ。国分寺まで3駅であっという間のはずなのだが、こちらもダイアが乱れているようで、中野、三鷹間はのろのろ運転。窓から差し込んでくる光は強烈で、今日という気まぐれな休日を祝福してくれているようだった。国分寺で反対側に停まっていた快速電車に乗り換えて2駅目が国立だ。
国立といえば、東京西部で最も名高い文教地区だが、地名の起こりはちょっと間抜けで、「国分寺と立川の間だから国立」というものだ。南口におりたつと目の前に国立のシンボルともいえる並木道が伸びている。左右を見回しても気持ちいい道が続いているし、予想通り散歩しがいのある街だ。日差しはまだ高かったが、風がなんだかとても強くなっていた。こっちの方が都心より寒い。
まずは腹ごしらえ。駅前を右往左往して、結局 VILLA(イタリア語で「村」)というレストランに入った。1500円の日替わりランチを注文した。豚肉ときのこのソテーだ。
隣の席に座っていた男女二人の話が面白く、食事を待っている間ずっと聞いていた。二人とも40代後半から50代前半くらいの中年で、男のほうは寺山修二の弟子筋にあたる詩人らしい。女の方は、奥さんとかいうのではなく、昔からの知り合いのようだった。女は男に頼みごとをしていた。知り合いが詩集を出したので、それに関するコメントを書いてほしいというお願いだ。詩集を出した人は男のファンらしい。男の詩集にそのコメントを添えて渡すそうなのだ。男は気持ちよく引き受けた。
その詩の一編にインクとチョークのにおいに関するものがあったそうだ。においそのものがどうというではなく、読者ににおいを思い起こさせるところがいい。男はそうほめていた。女の方は、自分は小さいころから父親のインクのにおいをかいで育ってきたと応じた。ひょっとすると有名な作家か誰かの娘なのかもしれない。男はチョークのにおいが思い出せないようで、女にたずねていた。女は答えなかったが、それは確か甘いにおいだった。
親子の関係は言葉よりにおいでつながるとか、近くの骨董屋でみつけた陶器が気に入っていって尿瓶代わりに使っているとか、そこの奥さんがこの間肺癌の手術をしたが元気になったとか、ほとんど男が一方的に話していた。昔書いた詩集はヒロイズムだったが、それから数十年ぶりにだした詩集はヒロイズムのかけらもなくなっている。あのころがピークだったな。それからは下り坂。でも下り坂もおもしろい。女が、わたしはずっと起伏のない人生だった、と口をはさむと、男はそれもいいよ、といった。
料理がきた。レンズマメのポタージュ、バケット、ソテー。みんなおいしい。食後のデザートの洋ナシのタルトも最高。
散歩開始。並木道(大学通りというらしい)をひたすらまっすぐ。一橋大学前、国立高校を通過して、南武線の谷保駅の手前、富士見台第一団地という交差点で左折。今度は右折してダイア通りとかいう1ブロックだけの商店街に足を踏み入れた。右手前に公園。左折。T字路にぶつかって右折。南武線の踏切を渡り甲州街道に出る。交通量の激しい通りはかんべんなので、国立インター入り口の1つ先の狭い道に右折。
さて、いつにも増して散歩の経路を細かく記述しているのには理由がある。今使っている地図ソフトは23区内は申し分なく細かいがそれ以外はかなり粗い地図しかない。上で右折した先の道は、到底載っていないような細い道だった。武蔵野方面を歩くときは、できるだけ広い道を歩くようにするというのも本末転倒だし、そろそろ地図ソフトを買い換えなければならないという結論に達した。いろいろ検討しなければならないので、歩いた経路の記録はおあずけ。それで、忘れないようにここに書いている。
さきほどの道は左に曲がる。その先で二つに分かれ、まっすぐ道なりにいくか、右に曲がるかの選択を迫られた。ぼくは右を選んだ。そのあと、道は微妙に曲がったり、つきあたりにぶつかったりすることの連続。ぼくは、常に「右バイアスの道なり」のコースをとったつもりだ。すなわち「まっすぐ進めるところは進み、つきあたりにぶつかった場合は右へ。左折できる道があれば必ず曲がる」。
崖のようなところに出た。目の前にはパノラマ。左右に中央高速が走り、その向こうにははるかなる山並み。富士山も見えた。崖沿いにまずは左に進むと、下の坂道と合流する。合流したところでユーターンして坂を下っていくと、広い道路。道路は多摩川へ向かうためゆるやかなカーブを描く。ぼくは府中市街へ向かうため直進する。
3歳くらいの子供の背の高さに切りそろえられた潅木の赤い葉に陽がきらきらと反射していた。美しい。うち捨てられた2階建てのアパート。窓ガラスはところどころ割れ、ダンボールで補修してある。1階の窓には封印のように「府中警察署」と書かれたシールが貼られていた。これもまた一種の美かもしれない。
左手にNECの府中事業場。右手は漸近線をたどるように中央高速に近づいていく。収束したところに大きな道路。右折してしばらくいくと京王線の中河原の駅前に出た。住吉銀座というくねくね曲がる商店街を進むとやがて鎌倉街道に合流する。こうして歩いてみると府中はなかなかいい街だ。武蔵野国の国府で江戸より歴史もずっと古いので、道がそれなりに入り組んでいるし、街並みに風情もある。
府中本町の手前で鎌倉街道を離れ緑道へ。南武線の線路を越える陸橋で、小さな子供を自転車の荷台に乗せたまま、若い母親がじっと駅のほうを眺めていた。
旧甲州街道を大国魂神社のところで左折して府中駅に続く商店街へ。にぎやかないい商店街だ。散歩は府中駅まで。経路を記録していないので距離はまだわからない。6~7kmというところだろうか。
京王線でいったん新宿に出て、ヨドバシカメラ、丸の内線で銀座までいって、ビックカメラ。地図ソフトをいろいろ見て回ったが、帯に短しで、決めかねた。

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