手袋をなくす

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長い夢をみていた。どうやらその中で指をけがしたらしい。目が覚めたら、右の親指の関節が痛くなっていた。

2時すぎに出発。どこにいくかあてはまったくない。京浜東北線に乗り、品川で山手線に乗り換えた。なんと車掌が女の人だった。アナウンスの声が何ともいえず艶やかだ。ずっと聞いていたかったが、渋谷で降りてしまった。

せっかく多摩地区の詳細な地図を入手したことだし、調布までいくことにした。井の頭線で明大前までいき、京王線に乗換えだ。明大前から乗った電車は快速電車。今は八幡山や仙川にも停まるようになったので、各停とそんなにかわらない。

調布はそれなりに大きな街だ。食事をするところを探す。カレーが食べたかったので、旧甲州街道沿いの松屋に入ることにした。ほんとうは北に向かうつもりだったが、西に曲がる。

食後、散歩開始。そのまま旧甲州街道を府中方面に進む。最初は商店街だったが、みるみるとさみしくなっていった。陽はもう沈みかけていて、もう一日の終わりだということをいやおうなく思い知らされる。ぼくにとってはまだ始まったばかりなのだが。

火の見下というバス停があった。やっぱり由来は火の見櫓だろうなと思って、あたりを見回すと、すぐ近くの消防署の建物の上に、古式ゆかしい火の見櫓を発見した。デジカメを持ってきていたので、一応カメラに収めようとして、ふと手袋をしていないことに気がついた。さっきの松屋に忘れたのだ。もう一駅近く歩いているし、戻る気にはならなかった。まあいい。新しいのを買うことにしよう。

セスナが恐ろしいくらい低い高度で飛んでいく。近くに調布飛行場があるのだ。

少しいくとお隣西調布の駅前についた。左に武蔵境への道が分かれている。旧甲州街道はあきあきだったので、まがりたい気持ちでいっぱいだったが、行く手にユニクロの看板が見えた。手袋をなくしたばかりのぼくにはグッドタイミングだ。直進することにした。

近くに見えたが歩いてみると案外遠い。10分ほどでユニクロ到着。まわりの人通りのなさとは対照的に店内はにぎわっている。人里はなれた山道を歩いていると思っていたのに、すぐそばが街だったような驚きを感じた。ちょっと迷ってダークグレーのフリース地の手袋にした。郊外店なので一度にたくさん買う人が多いのだろうか、レジの進みが異常に遅く、待たされた。外は完全な夕暮れだ。手袋をはめて散歩再開。厚手なので、今までよりずっと暖かいが、手袋を一度取らないことには何もできない。

西武多摩川線の踏切を渡るところで、ようやく旧甲州街道を離れて北へ向かう。ほぼ線路沿いに多磨駅までいき、今度はさっきとは逆の東に向けて人見街道をゆく。案内板には三鷹と書いてあった。すぐに三鷹市には入ったものの、歩いても歩いても三鷹の市街は一向に近づかない。夜の暗い道をとぼとぼと歩き続け、ようやく見慣れた南口の長い商店街にたどりついた。木にはイルミネーション。人の流れ。華やいだ街の灯り。

散歩は三鷹駅まで、11.3km。歩いた、歩いた。

すっかり疲れきってしまったので、どこにもよらず帰路についた。電車の中ではほぼ意識を失っていた。降りたら、体がしびれていた。

蒲田についてから、ポール・オースターの『ムーン・パレス』を買った。

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