1年くらい前に見た中野の風景がフラッシュバックした。長く続く道のはてに夕焼け空、そして高いビルがくっきりと浮かび上がっている。ぼくはなぜか高揚感を感じ、どこまでも歩いていけそうな気がした。それで、今日は中野だ。
綿飴のようにおぼろな記憶しか残っていないが、中野に本格的な店構えの蕎麦屋があった。一度も入ったことはなく、テレビで見たか前を通り過ぎたかのどちらかのはずだが、なぜかまわりの街並だけは覚えている、というより覚えているような気がする。その記憶が正しいとすると北口の一角のはずだ。散歩は南口の大久保通りの方にいこうと思っていたのだが、まずは北口に出てみた。
サンモールに入ってすぐに右に曲がると、飲み屋街が広がる。そのあたりのような気がして、勘を頼りに歩き回っていたが、ぜんぜん見つからない。あるのはラーメン屋ばかりで、中野がラーメン激戦区とは知らなかった。中でも青葉という名前の店には行列ができている。かなり有名な店らしい。
ぼくは行列はきらいなので、早稲田通り沿いの比較的すいている店に入った。暖簾に「中野ラーメン」とあったが、それが店名だろうか。とんこつチャーシューたまごという三役ついたものを注文。とんこつといっても白湯ではなく褐色に近い色だ。麺は固ゆででこしがあるし、チャーシューもたくさん入っている。気がついたら、スープを最後まで飲みきっていたということが、味のよさを物語っているだろう。ぼくはビールは頼まなかったが、その店の人はビールの注ぎ方をキリンかどこかで教わってきたらしい。こだわりのあるいい店だ。
満足して散歩開始。早稲田通りもそれなりにいい感じだったので、南口に戻らずそのまま歩くことにした。最初は今摂ったカロリー分歩かなければとはりきっていたが、冷たく強い風で、そんな気持ちは吹き飛んでしまった。曲がるきっかけをさがしながら早稲田通りを歩くが、なかなかみつからない。杉並区との境で、ぼくを呼んでいるような感じのいい路地を見つけたので入っていくが、別にどうということもない寂しげな住宅地だった。
まったく同じ外観の2階建ての家が5、6軒立ち並ぶ。できたばかりのようだ。その中の1軒が今日引越しらしく、トラックから荷物が運び出されるのを、奥さんと娘さんが先に家の中に入って見守っていた。新しい生活。どんな気分なのだろう。
T字路にぶつかったので右折。北へ向かう。下井草駅の近くで西武新宿線の踏切を渡り、さらに直進。西武池袋線を目指した。
池袋線の線路につきあたったのは、富士見台の商店街。ふつう駅前の商店街というのは、にぎやかな方に歩けば駅と決まっているが、ここはちょっとわかりにくくて、よく勘違いする。今日も駅と反対方向に歩いてしまい、隣の練馬高野台までいってしまった(練馬高野台はまだ2度目で、希少価値がある。結果的には正解)。7.5kmだった。
寒くて、歩いている間中、暖かい布団にくるまることばかり考えていた。
来た電車が有楽町線直通だったので、そのまま有楽町までいくことにした。
ビックカメラで、久しぶりにギネスとペールエールを買って、早々と帰路についた。家に帰ってからほんとうに布団にくるまった。

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