穏やかな日。今年最後の散歩だ。
行き先は電車の中で吉祥寺に決めた。渋谷で井の頭線に乗り換える。正月嫌いのぼくがこの時期ただ一つうれしいことは、電車がすいていること。発車間際の急行に簡単に座ることができた。
吉祥寺。まずは食事だ。蕎麦でなければ何でもいいと思っていた。大晦日の粗製濫造の蕎麦など食べるものではない。南口の公園通りのあたりをうろうろするが決まらない。ふと思いついてパン屋でパンを買うことにした。井の頭公園で食べるのだ。
目の前の Antendoというパン屋に入る。素材にこだわりのありそうなパン屋だ。能書きの洪水のなかなかからかきわけてパンを3つ買った。甘いパンが1つ。菓子パンが2つ。入れてもらった袋には“Antendo Confiseur”と書いてあった。あとで調べてみたら、Confiseurとはお菓子屋さんのことだ。
日のあたるベンチに腰をおろし、包みを開ける。ひとつひとつがビニール袋に入れてあり、それぞれ口が白いリボンで結ばれている。リボンをほどいてパンをほおばった。リボンは捨てずにとっておくことにした。
途中、池のほとりのベンチがあいたので移動。空の太陽と水面に映った太陽。じっと見ていたら空と水どちらの太陽に照らされているのかわからなくなった。
腹がくちたので、歩き始める。ジブリ美術館という標識が見えたので、そちらに向かうことにした。ジブリは三鷹のどこかという知識しかなかったが、井の頭公園の近くだったらしい。
吉祥寺通りを標識どおり600mほど歩くと、果たしてジブリ美術館を発見。井の頭公園(西園)の敷地の中にあるのだった。
曲がるきっかけのないまま吉祥寺通りを直進。左斜め前に別れる道があったのでそちらに曲がり、ようやく吉祥寺通りともおさらばだと思ったのもつかの間、電柱には「吉祥寺通り」の文字。やさしくされた捨て犬のようにぼくのあとをついてきたようだ。
新川二丁目という交差点で左折して、今度こそほんとうに吉祥寺通りとおさらば。ところがその道は北に向かっていて、ぼくの目指す京王線沿いとは正反対。Uの字を書くように戻ってきてようやく住居表示が世田谷区に変わった。
駅から離れた場所にぽつんとある不思議なピーコックを通り過ぎると、落葉が残る広大な雑木林。落葉にくるまって一緒に朽ちてしまいたくなった。
そのまままっすぐいくと千歳烏山。8.7kmだった。
京王線と井の頭線を乗り継いで渋谷に向かう。スターバックスでシナモンロールとダブルトールラテ。今日の夕食はこれで済ます。ダブルトールラテはプロモーション期間で安くなっている。いつもより苦めの味わい。
最後にブックファーストの中を探検して今年は終わり。白いリボン3つだけがポケットの中に残った。

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