春八分目

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にわかに春めいた日。こんな日に散歩に行かなければお天道様に申し訳がたたない。だが、罰当たりなぼくは太陽が中天を過ぎて傾きはじめたころに目を覚まし、それからもかなり長い間PCの前に座っていた。

それというのも、趣味で、あるプログラムを作っているせいだ。何にせよものを作り上げるというのは喜びだ。昨夜もカラスが鳴く時間までやってしまった。

2時過ぎにようやく出かける。今日は7時から本年初の芝居を観る予定なので、それにあわせてスケジュールを組まなければならない。たとえば、散歩するにしても、芝居の劇場がある駒場からあまり離れることはしたくないとか、食事の時間をずらすとか、そういうことだ。

最初はニコタマと思ったが、約一駅分だけ微妙に気が変わって、隣の用賀までいった。駅前の大戸屋で食事にしようかと思ったが、芝居もあることだし、夕方昼夜兼用の食事をちょっとリッチにとって、今はパスして歩き始めることにした。

ほんとうに歩くことなんて何の意味もないのだが、たまに歩いているだけで無条件の幸福感がわきあがってくることがある。今日はそんな日だった。この春のような気候のせいかもしれない。寒くはなく、暖かすぎもせず、春八分目くらいのちょうどいい気候だった。

自然に足が砧公園に向いてしまうが、マンネリなので、今日はあえて入らないことにした。西用賀通りという通りをひたすら歩く。世田谷通りにぶつかったところで、くねくね道なりに曲がりながら千歳船橋に出た。小田急の線路を越えてしばらくいくと烏山川緑道。しばし、沿って歩いたが希望が丘団地の中を抜けるとても気持ちのいい道だった。明大の八幡山グラウンドの脇をぬけて芦花公園。缶のコーンスープを片手にベンチで休憩。今日はじめて口に入れる固形物だ。

公園を出て、世田谷文学館、ウテナの前を通って芦花公園駅まで。7.3kmだった。

明大前経由で渋谷に向かう。劇場のある駒場東大前は途中の駅だが、ここでおりても何もないので、まずは渋谷まで出ることにしたのだ。

井の頭線の渋谷駅の西口のすぐ前にある夢吟坊といううどん屋に入った。かき揚げせいろを注文。さすがにおなかがへっていたのでむさぼるように食べた。

時間になるまで本屋でぶらぶらしてから、駒場に向かって歩き始める。実は今日いくアゴラ劇場までは渋谷から歩いても15分くらいなのだ。予定通り開場の5分くらい前に到着した。

観た芝居は青年団の『冒険王』。世界各国を旅行しながら放浪生活をする日本人たちの話だ。ぼくは日本から一歩も出たことがないし、旅行もほとんどしないが、そういうあてのない旅の浮遊感(どこにいても途上という感覚)から抜け出せない気持ちはよくわかる。ぼくがこうして毎週散歩をするのも実は放浪の一つの形といえるのかもしれない。一見、ひとところに落ち着いた生活をしているようで、実はあてもなく放浪をしているのだ。

帰りも渋谷まで歩く。もらったチラシが邪魔だ。袋を持ってこなくて大失敗。渋谷でシャンプーとコンディショナーを買った。散歩の途中前を通ったウテナ製のやつにした。

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