床屋。鏡の中のぼくは疲れきった表情を浮かべていた。もちろん鏡の外のぼくも同様に疲れている。
東京駅の地下でカレーを食べた。先にルーがなくなってごはんが残ったときは福神漬を入れればいいことを発見。
中央通りを神田方向へ歩き始める。日本橋のたもとにかなりの年配と思われる男性が座り込んで、クリーニングに出すとついてくるハンガーの材料になるような針金で、何やら作っている。人形だ。できあがったものが何体か横にたてかけられている。どれもみんな踊っている。若々しい生命力にあふれたポーズだ。見た目は失礼ながらしょぼくれているが、少なくともこの老人の心の中はそんなパワーで満ち溢れているのだろう。
神田駅前の本屋ブックファーストに入ってみる。1階が新刊本、場所柄ビジネス書が多い。地下がCD、文庫、コミックなど。なかなか広くて品揃えのいい、使える本屋だ。
ガードをくぐって神田駅の西口へ。電機大のあたりから神保町へ。三省堂でまた本を物色。
猿楽町をまわって水道橋。ドームと後楽園遊園地の間の広場に入ってみる。通り抜けられることに今頃気がついた。噴水の前で水しぶきの混じった風を感じながらしばし休憩。“Le concert de l'eau”という噴水のショーみたいなものが5時からやるというので、そのまま座って見ていたが、音楽とばらばらに噴水の水量が変わるだけなので、立ち上がった。
近くの文京シビックセンターの展望室に上がる。25階だ。アベックの姿はまったく見当たらず、いるのは旧友の再会といった感じの年配の男性たちと、家族連れくらいだ。飲み物を売っていたので買う。ビールもいいなあと思ったが、まだ日が出ているので、ぐっと我慢して250円のアイスコーヒーにした。味で100円、展望で150円というくらいの料金配分だった。
この前シビックセンターに上ったときと同じ経路で歩いてみることにした。4月の終わりのことなのでもう4ヶ月前だ。思い出せるかどうか心配だったが、そこは散歩で鍛えた方向感覚。なんとかお目当ての路地に入り込んだ。TACHIBANAとローマ字で表札の出ている立花隆の仕事場の前を通過して、昭和46年に交通事故で亡くなった女の子二人の慰霊碑を見上げて(この前は気がつかなかった気がする)、リップスティックのように細長くて前面が湾曲している部分に猫の顔が描いてある猫ビルを確認。
4月の道には別れを告げて、さらに8月の小石川の街に足を踏み入れる。
住宅地の中を通る道と大通りの交わる角にCASA BELLA SOLEという店を発見。ぼくの乏しいイタリア語の知識で、CASAが「家とか店」、BELLAが「美しい」まではすぐわかったが、SOLEが何だかわからない。何となく「孤独」という言葉が思い浮かんだ。「美しい孤独」。なんだか入りたくなる店名だ。だが、すぐに「オー・ソレ・ミオ」を思い出し、SOLEの正体は「太陽」だとわかってしまったのだった。
茗荷谷か白山か二者択一で、渋谷に出ることを考えて前者に向かう。7.4km。
丸の内線に乗り、赤坂見附で銀座線に乗り換えて渋谷。
ブックファーストで、『20世紀少年 10』と『Heave? 4』という出たばかりのコミック2冊と、『使える・話せる・フランス語単語』という本を買った。『アメリ』を観たらまたフランス語を勉強したくなったからだ。

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