まだ咳も鼻水も出るが、なんとなく風邪が快方に向かいつつあるような気がした。冬の終わりに春の訪れを感じるときのような微かな予感。もちろん、そういうときに無理をしてはいけないのはわかっていた。今回も治りかけのときに気を緩めて窓を開けっぱなしで寝てしまったせいで、ひどい目にあっているのだ。
カーテンのすきまからゆらゆらと入り込んでくる陽射しを見ていたら、やはりどうしてもでかけたくなってきた。風邪なんだから寝てなさいと怒られるかもしれないが。
気分は武蔵野。中央線の駅の中から今まであまりなじみのない東小金井でおりることにした。夜に北口側に一度きたことがあるが、そのときは駅前にしては灯りが少ないなという印象だった。
今日は南口から歩き始める。駅前の商店街はまっすぐ長く続いているが、やはりちょっとさみしい。でも、歩いていて、先週の三連休にはまったく感じられなかった歩く喜びのようなものが湧き上がってきた。快方に向かっているのはまちがいないようだ。
もう、金木犀の匂いはすっかり消えうせて、今は漂っているのはもっと微妙な匂いだ。渋いお茶というか、何かがゆっくりと朽ちていくような匂い。
はけの道が西武多摩川線にぶつかって尽きるあたりにたどりついた。野川にかかる二枚橋という橋のあたりだ。そば坂の標識に、二枚橋をめぐる伝説が書いてあった。「この先の二枚橋には伝説がある。かなわぬ恋のすえ、庄屋の息子と山守の娘が野川に身を投げ、その霊が大蛇に化けて幻の橋となって、人々を惑わした。これを哀れんだ庄屋が、大木を挽き割り、二枚並んだ立派な橋を造って、供養したといわれている。 この坂は、昔、坂の半ばあたりから東ヘニ枚橋に通じる道であったので、二枚橋の坂と呼ばれるようになり、鉄道ができたのち、今のような形となった。」
はけの道はゆかず、武蔵野公園の中に入る。野川の手前は草のしげる野原だが、橋を渡ると林の中になる。川端に猫がおとなしく座っていてぼんやり川面を見つめていた。川には鴨が何羽かいたがまさかそれを狙っていたわけじゃないと思うが。
公園を出て、しばし西をめざし、そのあと南に曲がって府中方面をめざしたつもりだったのだが、まだしつこく西に向かっていて、いつの間にか国分寺市に入る。しばらくして、雨がふってきた。
あたりはもう暗い。車から水タンクをおろしてかついでいく人がいたので、あとをついていってみた。せせらぎにそった道。その先の小さな滝のようなところで、その人は水をタンクにつめていた。真姿の池という名水で有名なところだ。さわってみたが、あまり冷たくなかった。
雨は本降りに。武蔵国分寺公園の芝生をつっきる。芝生が雨に濡れてきらきら輝いていた。
西国分寺到着。7.9km。
中央線で新宿に出る。まず三国一といううどん屋で食事。ツナサラダうどん。とてもおいしかった。
そのあと雨の新宿の街をカサもささずにぶらぶら。ビックカメラで、“Crépuscule for Cafe´ Après-midi”というCDを買う。定価2520円のところ2400円いう値札がついていたので、安くなっているラッキーと思ったのだが、消費税を含まない値段が書かれているだけのことだった。

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