非記念日

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内緒だが、今日は、歩いてばかりで存在していても何の意味もないある人間の誕生の記念日、つまり、砂時計の砂が落ちる音をアンプのボリュームをMAXにして聞かされる日だ。寄る年波だろうか、最近人の笑顔を見ても、うそくさいとしか感じられなくなっている。

恵比寿から歩き始める。下北沢で芝居をみることになっているので、一応目的地は下北沢だ。駒沢通りにあきて、代官山方面に続く気持ちのいい小道に入ったが、何度かまがるうちに山手線のガードにぶつかった。くぐって山手線の中に突入。氷川神社あたりから引き返して、また山手線の外に出る。

エバーグリーン・パーク・ホームズという広大な住宅。中は緑豊かで気持ちよさそうだが、高い塀の上に鉄条網が設置されている。アメリカ的快適さとはこういうものをいうのだろう。

山手通りを越えて、駒場方面へ。ほぼ井の頭線沿いに坂をのぼりくだりしていたら、池ノ上の手前で不思議な本屋を発見した。仮設営業中とのことなのだが、木造の昔ながらの家の玄関に雑誌が並べてある。中は薄暗くて人気もないので、ちょっとひとりでは入れなかったが、仮設営業の間に一度はいってみるべき本屋かもしれない。場所は池ノ上小学校のすぐ前だ。

池ノ上からは下北沢の街はほんとうにすぐそこ。ちょうど今日芝居を見るスズナリの横に出た。散歩は下北沢の駅前までで、7.4km。

ヴィレッジ・ヴァン・ガードを冷やかす。阿佐ヶ谷にヴィレッジ・ヴァン・ガードのカフェができたらしい。3月はじめにいったときは、スタバには気がついたが、こちらは気がつかなかった。

千草という定食屋へ。一番人気だというにんにく醤油揚げ豚定食を注文。つけ合わせの冷奴を含めてなかなかおいしい。ただ、味噌汁はちょっと味が濃い目だった。800円。

食べながら背後の席に座っている女性二人の会話をきいてしまう。人の会話は三人以上になると一般的な話になっておもしろくなくなってしまい、二人だとディープになるという話をこの間聞いた。その言葉どおりちょっと耳をそばだてたくなるような話だった。一人が話し手で、もう一人が聞き役。話し手の人はご主人とうまくいっていないらしい。数年前、分度器を探していたら代わりにナイフが見つかったということがあったそうだ。今から考えるとそれは偶然ではなく必然だったとのこと。想像力をそそられる。今度生まれ変わったら男性に生まれたいともいっていた。

トイレに入りたくなって北口のピーコックへ。実ははじめて入るので、3階に本屋(三省堂)があるなんて知らなかった。散歩の達人4月号新宿東口・南口特集(散歩の手帳というのが付録でついていた。買いたいもの備忘録とかこの店にまた来よう録があって、なかなか洒落ている)と、カポーティ『カメレオンのための音楽』の文庫版を買った。『カメレオンのための音楽』の単行本(古本)は家にあるはずなのだが、ちょっと見あたらなくなっている。それに持ち歩いて読みたかった。

ちょっと迷ったがスタバへ。迷ったのは道ではなく心。不買運動というわけではないが、心情的にアメリカのものは買いたくない。二つ似たようなものが並んでいて、片方がアメリカ製、もう片方がフランス製で、フランス製の方が値段が2~3割高いくらいなら、フランス製を買うだろう。まあ、しかし、そういう意固地な心も、ある意味憎悪をあおる人間たちの思うつぼなわけで、ここは心を広く、スタバに入った。

さて、芝居。意識していたわけではないが、誕生日の自分へのプレゼントが芝居になった。The Shampoo Hatの『青空』。シンプルだがとても心を打つ作品で、どういうわけか目から透明な液体が流れてしまった。

外はかすかな小雨。どういうわけか、芝居のあとは決まって雨になる。ほんとうに軽く降っただけのようで、まだ雨の匂いが残っている。本格的な雨では消えてしまうのだ。潤んだ目を隠すのにちょうどいい。そのまま三軒茶屋まで歩いてしまった。

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