下落合の向こうの向こう

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たまたま『下落合の向こう』という短編小説を読んでいたので、下落合から歩こうと思った。JR新宿から西武新宿まで歩いて、西武新宿線の各駅停車で2駅目だ。

「右手の川には緑色の橋が掛かっていた。川の水は低くぬめりながら流れていた。橋の向こうに汚れた白色の建物があった。観光ホテルという看板が出ていた。そちらに向かって私は歩みだそうとした。駅の輪郭が針金のように心許なかった。駅から離れて高田馬場方向を捜したかった。が、バリ、と体の周囲で何かが剥がれるような音がした。振り返ると、下落合の駅までなくなっていた。」(笙野頼子『タイムスリップ・コンビナート』所収)

ぼくは振り返らなかったので、駅が消えようがどうしようがどうでもいいことだ。駅前の新目白通りを渡って、なだらかな坂を上って聖母病院という病院の前へ。今は大掛かりな建替え工事中だった。その先の「新」のつかない古い目白通りを渡ったのもつかの間、すぐにまた広い道路。それは山手通りだったのだがぼくはそのことに気がつかなかった。

ニコニコ商店街というシャッターがほとんど閉まっていて、誰も特にはニコニコしていない通りをゆく。二階の部分が店の名前を書いた看板になっている古い商店を見つけた。錆びて看板の文字が読みにくくなっていたが、かろうじて「壱崎商店」と読めた。全体的には木造で、前面は薄いガラスをはった格子戸になっている。その向こうは白いカーテンが閉じられて何も見えなかった。まだ人が住んでいるのだろうか。入口の真ん中の赤い郵便受けが可愛らしかった。その先には、昔陣屋だったような横に細長い木造建築。さっき以上に年代物だ。

道の名前が、光和通り、千川通りと変わるがまっすぐ進む。江古田の駅のそばで西武池袋線の踏切を渡る。駅前の商店街が環七で途切れ、その先は新桜台、氷川台。そこから平和台の方に進んでいくが、そのことに気がついて、途中で曲がった。豊島園のそばまできて、散歩をやめようと思ったが、駅の方向を間違えて、練馬春日町までいってしまった。9km。

大江戸線で代々木まで出て、そこからJRで渋谷へ。おなかがすきすぎて、なんだか頭が痛くなってきた。道玄坂のパスタ屋できのことベーコンのにんにくトマトソース。730円。おいしかったが、唐辛子を丸ごとかじってしまい口から火がでた。

喉が鬼のようにかわいていたのでタリーズでコーヒーを飲む。それからブックファーストをぷらぷら。7月1日に銀座店がオープンするらしい。銀座で最大級の本屋になるそうだ。ほぼ1ヶ月おくれで東京人7月号を買う。「『駅』を旅する」という特集。

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