今夜雨中の片隅で

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西武柳沢の駅を出たら雨が降っていた。たった今降り始めたわけではなく、新宿で乗り換えのために外に出たときにもちょっと降っていたのだが、それが夢まぼろしや一時的な天気のいたずらでないことを示していた。だが、せいぜいは小糠雨、小虫程度にうっとうしいくらいで散歩の妨げにはならなかった。いや意地でも邪魔はさせない。

西武柳沢の南口は商店街らしい商店街もなく、いきなり団地が続いている。だが緑が多くて気持ちがいい。一歩歩くたび一歩分だけ癒されるのを感じる。このあたりの人と自然の共生の具合がちょうどいい、それは先週埼玉の荒川の河原で見た荒々しい自然とは全然ちがう。どちらがリアルな自然かといえば埼玉の方で、こちらは人に媚びているというべきなのかもしれないけれど。

東京三菱銀行の広大な運動場と武蔵野女子大の間をすりぬけて、さらに広大な浄水場にぶつかる。車道より高く盛られた土の歩道をゆく。幅広のざらざらな葉の上に雨滴が集まって、結晶のように光っていた。腕の産毛の先にも細かな水滴がいっぱいついていて、拡大したら森のように見えるような気がした。

玉川上水にはたくさんの鯉の群れ。なぜか橋の袂の一箇所に集まっていた。大きいの、小さいの、黒いの、赤いの、錦の模様の入ったもの。集会でもしているようだった。

三鷹駅の近くで中央線の線路にぶつかる。地下道をくぐって南側へ。一本道をずらせて三鷹のふところの深さを味わいつつも、結局はメインストリートの中央通りに出る。だが、先週台風が過ぎ去ったすぐ後に通ったときより寂れて見えた。日曜日のせいだろうか。

商店街を抜けてさらに南へ。甲高い声を響かせるヒヨドリ。東八道路の向こうは巨大な通せんぼゾーン。海洋技術安全研究所、三鷹第3住宅、東京大学三鷹国際学生宿舎、二木ゴルフ、ざっとこれだけのものが並んで南へ進めないようにしている。仙川によってようやくその鉄壁の守りがくずされる。

今度24時間営業のコンビニを院内に作ることにしたという杏林大学病院から島屋敷通りの方へ。このあたりからちょっと方向感覚が狂って北へ進み始める。由緒ありそうな神社の参道の脇の道を通って、おそらくその神社を指すらしい天神前というバス停で散歩終了。10.2km。

吉祥寺行きのバスに乗って、今やぼくの散歩の首都といってもいい吉祥寺に出た。何度か書こうと思ってそのたびに忘れていたが、今北口商店街サンロードのアーケードは架け替え工事のためとりはずされている。自然光にさらされてちょっと新鮮な感じもするのだが、雨の日は不便だ。そこを抜けて定食屋おひつ家で食事。プルコギ定食というのを食べたが、ちょっと塩辛くはあったものの、なかなかおいしかった。760円。ところでプルコギとホイコーローの違いは何だろう。

タリーズでソイラテを飲みながらニコルソン・ベーカー『中二階』を読了。次なる本を求めて、ヴィレッジ・ヴァンガードやらパルコブックセンターやらルーエなどまわるが、次に読むことにしていた京極夏彦『陰摩羅鬼の瑕』がなかなか見つけられない。こんなことなら昨日新宿の紀伊国屋で積んである中から買っておけばよかったと、愚痴りながら渋谷に戻った。結局、ブックファーストで発見。ついでに保坂和志『もうひとつの季節』も買った。

久しぶりに東急線経由で帰ることにした。以前はずっと東急を使っていたくせに、Suicaというものができてからは、渋谷からJRで帰ることが多かったが、考えてみると乗り換えの品川駅の雰囲気(夜に限るが)があまり好きではない。それに東急の方が座れる可能性も高いし、車内の雰囲気も好きだ。乗り継ぎが悪いと若干時間がかかるが、運賃も同じだし、東急に戻すことにした。東横線の特急が中目黒に停車することになっていて驚いた。まあ、乗客の利便性を考えればその方がいいだろう。

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