夢の大泉

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夢の中で多分ぼくは練馬区の大泉あたりにいたのだと思う。そこから石神井公園に向かおうとしているようだったが、夢の中特有の不条理的ラビリンスからどうしても抜け出すことができなかった…。

夢を尊重しつつ、現実の世界では大泉学園の二つ先のひばりが丘に向かうことにした。ひばりが丘は二度目だが、一度目は夜真っ暗な道を疲れきってひばりが丘にたどりついたというパターンなので、本でいえば表紙を立ち読みしたくらいのものだ。まあ、ぼくのしている「散歩」という形で街に関わる限り、本の内容に相当するところまではなかなかうかがい知ることはできないのだが。

前回は大きな店舗の立ち並ぶ南口から駅に入り込んだが、今回は北口から外に出た。小さな店ばかりだか駅前の商店街はそれなりににぎわっていた。やはり西東京市で一番大きな街だと思う。

家の近くでは晴れていたのだが、今ここでは重い灰色の雲が空を覆っている。機嫌を損ねているらしく、時折ごろごろと腹に響くようなうなり声を発していた。どうやら一雨くるのは避けられそうになかった。北東へ進んで、住所が埼玉県新座市に変わるのと前後して、ぽつぽつと豹柄の染みがアスファルトを染め始め、そのまま一気にたががはずれて数直線のように稠密な雨の線が容赦なく降り注いできた。ぼくはたまらなくなってすぐそばの事務所の広い軒先を借りることにした。雨はみるみる地面を浸し始めて、床下浸水まで
のカウントダウンがはじまりそうだった。

雨足はしばらく衰えなかったが、太陽が、最初は薄ぼんやりと顔を出し、やがて地面に日向を作り出すまでに力を取り戻してきた。なんだか天気にからかわれているような状態が続くが、それでも少しずつ雨は穏やかになってゆく。もう平気の、一歩手前で、ぼくは再び散歩を再会した。

またすぐ西東京市に入った。西武線の踏切にぶつかりそうになったので、左に曲がり、大泉を目指す。幅2メートル弱くらいの暗渠の上に石板を渡した道。今日の主旋律は足で石板をたたく音とその下を流れる水の音だ。いったんその暗渠は見えなくなったが、またすぐ続いていた。石板に混じって金属製の格子の溝蓋があったので、そこから覗き込むと水面は約2メートルほど下にあり、さきほどの雨のせいで、激しい勢いで流れていた。こういう小さな流れは、たとえば透明で頑丈な素材の板を置いて流れが見えるようにしておくことができたらおもしろいと思う。

いつしか文字通り夢にまでみた大泉の街に入っていた。板の上を離れ、したみち通りというそれなりに車の通る道に出た。交差点の名前が橋の名前ばかりなのは、さきほどまで歩いていた暗渠がまだ小川だったときの名残だろう。小泉橋という橋の先で乳牛を何頭かみつけて驚いた。小泉牧場と書いてある。新鮮な牛乳が飲めてうらやましい。

北園の交差点から奥に入る。町名は西大泉から、大泉学園町、大泉町とかわっていくが、大泉と呼ばれる地域は広大でいつまでたっても抜け出せない。まるで夢そのままだった。道がだんだん狭くなり、農地が増えてさみしい雰囲気になってきた。

なんとかさみしい地域から脱出して、比丘尼という由緒のありそうな交差点に出た。町名は依然として東大泉だが、なんとなく見覚えのある街並みだ。西武線の踏切を渡ってまっすぐ行けば富士街道。石神井公園はすぐそこだったが、夢を正夢にするため、そのまま石神井警察署前のバス停からバスに乗り込んだ。10.5kmだった。

バスは吉祥寺行き。なんだか紛らわしい停留所が多い路線だ。「水道端」と「立野通り水道端」が一停留所はさんだところにあるし、「吉祥寺通り入口」と「吉祥寺駅入口」も後者は吉祥寺駅のすぐそばだが、前者ははるか数キロ離れたところにある。

30分後くらいに吉祥寺に到着して、まずは食事。おはちという定食屋で、角煮定食に納豆をつけた。780円。こういう定食屋で食べるのがヘルシーでコストパフォーマンスもよいような気がしてる。

ヴィレッジ・ヴァンガードで阿部和重『ABC戦争』を買ってから、タリーズでコーヒーを飲む。その後、今度はパルコブックセンターへ。佐々木倫子『Heaven?』6巻(最終巻!)と大塚英志『木島日記』(小説版)を買う。

井の頭線で新代田に出て、そこから大森行きのバスに乗って帰ることにした。バスの時間ぎりぎりだと思って急いだが、日曜日の時刻表は土曜日と異なっていて、まだ10分以上余裕があった。ちょっとだけ、新代田のくらがりの中を歩いてみた。とにかく猫がたくさんいる。どの猫も人馴れしていて、近づいても逃げようとしない。にっこり笑いかけたら、にゃあと鳴いた。

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