内憂外患

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仕事は忙しいし、その他もろもろで内憂外患という言葉がぴったりだが、今はじまったことではない。そういうときは何より歩くに限る。一番落ち着いていられる時間だ。歩くということはぼくにとっては趣味というレベルにとどまるものではなく、歩くこと=生きることといっても過言でない。それ以外のものは余計な付け足しにすぎない。

井の頭線経由で国分寺に向かう。交差しては離れる線路の曲線が際限のない旅情をかもしだ
す。そこを全速力で通り抜ける特別快速の列車はねじがはずれそうなくらいガタゴトゆれて、重さのあるものはすべて背後に置いてきてしまいそうだった。

南口に比べるとのどかというか寂しげな北口から歩き始める。とりあえず西の国立方面を目指した。西武多摩湖線のホームの端をかすめて、日立の中央研究所の前へ。電柱に「抜きつけ、切り下ろす。爽快感お試しあれ」という居合道の教室の広告があった。ちょっと物騒だ。

研究所と西武国分寺線にはさまれた通路。歩行者用と自転車用にわかれている。研究所側は塀の上から鬱蒼とした緑がはみだしていて、研究所というより庭園か何かのように思える。姿見池と書かれた柱があったので通路に入った。左右に分かれていたので今向かっている方向であるところの右を選んでしまったが、池は左にあったようだ。でもその道沿いの流れは信じられないくらい澄んでいて、中では植物がわさわさと流れのリズムに共鳴していた。

「市倉家累代~」という巨大な石碑が街中の一角に屹立とそびえている。神道式の墓のように見えるが、一家だけの墓所とは珍しい。その先の、西国分寺駅のすぐそばで武蔵野線の線路をくぐる。

跨線橋を渡って中央線の南側へ。「たまらんざか」という坂のそばで国立市に入る。ちなみにお金がたまらん、暑くてたまらんではなく、多摩蘭坂という風流な字を書く。

工事中の一橋大学の南側のところで大学通りに出た。ここが今日の西の限界で、大学通りを少し南に下ったあと、学園通りという通りを逆の東に向けて歩き出す。

しばらくいくと東八道路にぶつかる。再び武蔵野線の線路をくぐり、南側に道をそれると、さっきの学園通りの続きでも何でもない別の学園通りに出た。片側は府中刑務所で、ラクダ色の高い塀にさえぎられている。刑務所沿いで学園通りとは面白いが、その先には明星学苑とか東京農工大などがあるので、名前にいつわりはない。

多磨霊園にぶつかって第二の学園通りは終わる。もう6時を過ぎてかなり薄暗くなっているので、さすがに墓地の中に入る気はしなかった。霊的なものに対する恐怖心は全然ないのだが人間が怖い。つきあたりの起伏とカーブの多い道をひたすら南下して、京王線の多磨霊園駅到着。12.4km。多磨霊園という駅名はついているが、かなり離れている。すぐそばにある西武線の多磨駅が多磨墓地駅から改名したのとは対照的だ。

下北沢に出るか、渋谷に出るかで迷って、結局後者にした。まずはねぎしで食事。ねぎし定食950円。おいしかった。

急にポール・サイモンが聴きたくなって、タワーレコードで、ベストアルバム“The Paul Simon Collection On My Way, Don't Know Where I'm Goin'”を買った。

スタバで休憩した後、駅の南口にある山下書店にいってみることにした。いい本屋だという評判をききつけたのだ。駅から見ると東南の方向、歩道橋をわたったところにある。面積は狭いのだが、その割りに品揃えが充実している。24時間営業らしいし、なかなか楽しい店だ。

CDを聴く前から、もう頭の中にはメロディーが響き渡っていた。その曲は“American Tune”。

Still, tomorrow's going to be another working day

And I'm trying to get some rest

That's all I'm trying to get some rest

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