呼吸と散歩

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息をとめてみる。すると自分がふだん呼吸をしていることに気がつく。

このところ走馬灯のように時間が過ぎ去ってしまったが、髪の毛は正確に時間の経過を伝えていた。まず伸びた分の髪を切りに床屋へ向かう。

散歩をするときはあらかじめ何らかの計画をたてるときと、いきあたりばったりの白紙状態で臨むときがあるのだが、今日は完全に後者。床屋を出たぼくは引力と斥力のせめぎあいで西荻窪に流れ着いた。

北口に出て、向かい側の並びの隙間に口をあけている細い通りに入り込む。一応商店街になっていて、地面は赤いレンガ敷きだ。レンガが消えて普通のアスファルトになっても道はどんどん続き、狭い川を渡った。その先でつきあたるように見えたが、ちょっと左にカーブしてさらに続いた。ほんとうのつきあたりは井草八幡という神社だった。かなり広大で、敷地のなかに幼稚園もある。左手に迂回して、さらに北に進み、上石神井駅のそばで西武新宿線の線路にぶつかる。車両基地になっていてすぐそばには越えられる場所はない。

今度はさっきと逆に右に迂回してさらに北へ。石神井川を渡ったところで氷川神社の参道に入る。石畳の道がいい。

三宝寺池のほとりのベンチで休憩してたら隣のベンチに座っていた黒と白の猫がぼくのすぐ隣にやってきて座った。人を見る目のある猫だなと感心したが、でもぼくはあげる餌などないので、やはりそれは人を見る目がないということに落ち着いた。でも、そうやって隣に座られていると妙にこそばゆい気分だ。食べ物やで全然関係ない人と二人連れに間違われたときのような気分。猫は一度地面におりてもう一度あがったあと、来たときと同じくらいすばやく溝の向こうの草むらの中に入っていってしまった。そこにじっとして、こちらをぼんやり見ている猫に、ぼくは心の中でさよならを告げてまた歩き出す。またいつか会おうね。

石神井池沿いに歩いて、石神井公園の駅に向かうが、まだ歩き足りなかったので、隣の大泉学園まで延長することにした。西武池袋線の踏切を渡って、北側を大泉の方へ進む。まだ赤みを残した空には生まれたての若い月。

大泉学園に到着したときにはもうとっぷりと暮れていた。8.4km。

南口から吉祥寺行きのバスに乗る。20分ほどで吉祥寺の市街に入ったが、そこから信号待ちや渋滞につかまって、さらに10分ほどかかってしまった。

ふらんす亭がいつものように混んでいたので、結局定食屋のおはちに入った。豚キムチ定食にそぼろをつけて820円。そぼろは生姜の味がしておいしかった。そのあと、タリーズでマロンラテという新作を飲んでみたが、かなり甘い。

本屋を何件かはしごしたあと、パルコのB1にオープンしたばかりのHMVで、キリンジのニューアルバム“For Beautiful Human Life”を買った。

渋谷に出てから、さらに本屋をはしご。BT/美術手帖10月号に、村上隆デザインのフィギュアがつくというので見てみたが、いまひとつそそられない。雑誌の本編の特集はなかなかおもしろそうだったのでほしいことはほしいのだが、フィギュア目当てだと思われるのがしゃくで今日のところは買わなかった。

ゆっくり息を吐く。

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