金木犀の香りの中走る

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街中が金木犀の香りに包まれている。子供のころ飲んだ橙色のジュースの匂い。味は思い出せない。

南武線で登戸に出て小田急に乗り換える。新宿方面に乗るつもりが誤って本厚木行きに飛び乗ってしまった。この前に続いて二度目だが、これは、新宿方面にはこちらが便利ですと、仮設の改札口に誘導しておきながら、改札の目の前にある階段が本厚木方面に通じているのに大きな原因があると思う。と自分の失敗を棚に上げながら、次の向ヶ丘遊園で階段を駆け上り、駆け下りて、向かいのホームに停車していた電車にすべりこむのであった。

降りたのは狛江。今日はここから北を目指す。車の通りのそれなりに激しい狛江通りをまっすぐ進んで、まずは京王線の国領駅を目指す。慈恵医科大病院の前などを通っておよそ30分ほどで国領駅にたどりつく。駅の手前でジーンズ姿の若い女性に追い抜かれた。颯爽とした歩きで、あれよあれよという間に引き離されてしまった。ちょっと情けないが、今日はちょっと厚手の服装だったので、歩いているとじんわりと汗が出てきて、なかなかスピードに乗り切れないのだ。今頃の季節は服装が難しい。

踏切を渡って旧甲州街道を調布方面へ。長くまったりと続く商店街だ。調布駅に近づいてにぎやかになりかけたところで、右折して、マイクロソフトとマルエツの並ぶ通りに入る。

再び交通量の多い武蔵境通りに合流して、野川を渡る。その先で左折すれば一転した静けさに包まれる深大寺あたり。深大寺のあたりは歩き込みが全然足りず、まだまだ表面をなぜるだけに終わっている。この秋の間にもう一度くらいは来て、奥に分け入らなくては。今日もその前哨戦で、どこに続くとも知れぬ階段を上がってみた。もちろんちゃんとどこかに続いていた。

消防大通りという通りから杏林大学病院、そして弘済園通り。そのまま北上していれば井の頭公園にたどりつけたのに、気まぐれで東にバイアスをかけてしまった。工事中の保育園の先に保育園の続きのような建物があった。建物の中は子供たちばかり、絵画をはじめとするいろいろなオブジェが飾られている。入口のところをみると、東京シュタイナーシューレと書いてあった。なんだか、子供たちは騒ぐでもなく静かにのんびりしていて、こんな学校だったらぼくも行きたかっただろうと思った。

井の頭公園通りを戻るように進み、井の頭公園にたどりつく。もう夜はすぐそこまで来ていたが、人の数がすごかった。公園を抜けて吉祥寺の駅まで。13kmだった。

食事は新宿ねぎしで、和風シチュー豚旨辛焼セットと、かなり腹にたまるメニューにした。1370円。

おなかが満たされて店を出た時点で6時20分。ここでぼくは判断を誤った。7時から駒場で芝居を見る予定だったのだが、まだ平気だろうとタリーズに入ってコーヒーを飲んでしまったのだ。それはたった十分のロスだったが、駅に向かいながら、ぼくはすぐに自分の判断の甘さに気がついた。つまり、電車はすぐにくるとは限らないのだ。

待ち時間を考えにいれてなかった報いで、駅に着いたのがちょうど開演予定時間だった。猛ダッシュ。駅から歩いて3分で、何度もいったところなのに、走っても走っても劇場が見えてこない。息を切らして、ぎりぎりセーフ。ぼくが席に着くのとほぼ同時に、最初のセリフが役者の口から漏れた。

劇場から出るとしっとりした雨。ぼくが芝居を見ると雨になるというジンクスは、下北沢限定のはずだったが、今日は隣の隣にも出張してきたようだ。なんだか気持ちのいい雨だったので、濡れながら渋谷まで歩いた。

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