狭い地域にいくつもいくつも駅が密集しているのは都心ではめずらしいことではないが、郊外では珍しい。小平のあたりは西武線の本線・支線が縦横無尽に走っている。今日はちゃんと計画をたててそのあたりの駅から駅へとめぐるつもりだった。
JR新宿のホームから西武新宿のホームまで10分かかった。急行と各停を乗り継いで小平へ。到着したのは4時少し前だった。日がどんどん短くなる今日この頃、もう少し早く行動しなければ。
南口から多摩湖自転車道に入る。枯れた草の香り。とても気持ちのいい道筋だが、ぼくの気持ちは落ち着かない。というのも自分が計画と違う道を歩いているような気がしてしょうがなかったのだ。その道は西武拝島線の萩山駅に続く道で、実は計画通りだったのだが、ぼくはすっかりそのことを忘れていて、まっすぐ西武新宿線の久米川駅にいくものだと思い込んでしまっていた。わざわざ携帯で地図を表示して挙動不審な行動をしながら、久米川に続く道を選び出した。といっても、その道は絶えず線路にぶつかって途切れてしまうので、何度も何度も選び直さなければいけなかったのだが。
そうしているうちに久米川に続く商店街に入った。計画通りの道に復帰したことになる。久米川の駅前は広いロータリーになっていてかなりにぎやか。時節柄、政党の街頭演説が行われていた。西武多摩湖線の八坂駅にまっすぐ続く道。こちらも商店街だ。小高くなった線路沿いの、自転車がたくさん行き交う道があったので、こちらが八坂の駅かと思って進んでいったが、そこはまた多摩湖自転車道。東村山中央公園の端をかすめて引き返すような形になり、ダイエー小平店の前に出た。
ここでまた自分がどちらに進むべきか決めかねて挙動不審になるが、結局ブリジストン工場の前を通って(ブリジストンの前の歩道のアスファルトはもちもちしていて歩きやすかった。ほかに知っているのは渋谷駅前の歩道橋。アスファルトが全部こうなれば気持ちいいだろうな)、拝島線の小川駅前に出た。駅舎の階段を昇り降りして逆側へ。暮れてゆく郊外の街を通り抜けながら西武国分寺線の鷹の台まで。7.5kmだった。計画していた萩山は抜かしてしまったが、踏切を渡ったり、高架下をくぐったり、駅舎を昇り降りしたりして、線路と交差すること7回。目的は果たせたといっていいだろう。
国分寺経由で吉祥寺に出た。このところこってりしたラーメンが食べたいと思っていたので、火の国という熊本ラーメンの店に入った。店員の女性は熊本訛ではなく、中国訛だったが。ムーロンメンという豚の角煮の入ったラーメンを注文。望み通りこってりしていて、なかなかおいしかった。税込み850円。
いつもなら吉祥寺の街でまだしばらくうろうろしているのだが、今日は欲しい本がはっきり決まっていて、しかも大きめの本屋でないと手に入りにくいものだったのだったので、早々と渋谷に向かった。
ブックファーストで、お目当ての現代詩文庫の『入澤康夫詩集』と、ニコルソン・ベイカーの『フェルマータ』を買った。
向かいのスタバで早速、入澤康夫の詩を読んでみたが、ざっとみたところ、買おうとするきっかけになった、『外出』という詩が、やはり一番いいようだ。
タンバリンが鳴っている 鳴りながら
街の空を廻っている
いい夕方ですね
スタバを出るとなぜか足がふらふらして人とぶつかりそうになった。いつのまにか雨がぽつぽつアスファルトを染めている。雨粒と人をよけながら、駅に向かう。
ふつうここで終わりだが、ちょっとだけ延長。新しい本もいいが、買ったまま積んである本も消化しなければいけない。次は、ヴォネガットの『タイムクエイク』あたりを読もうと思っているが、なにせハードカバーなので、持ち歩きにくい。すでに文庫になっているので、定価では買いたくないがブックオフあたりで安くなっているなら買いたいと思っていた。そのことを急に思いついて、向かったのが五反田のブックオフ。品揃えはなかなかよかったが、ヴォネガットの作品はまったくなかった。まあ、一度読んだら終わりという作品ではないから。

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