バラキ

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原木中山が「バラキナカヤマ」と読むことを知って心底驚き、頭の中をいろいろな言葉が流れていった。イバラキ、バラック、バラバラ死体、酒鬼薔薇、薔薇のない人生…。

そう。今日は久しぶりに東京の東の方へいこうと思っていて、勢いあまって千葉まで出てしまい、バラキナカヤマでおりたのだった。車ばかり通る殺風景な田舎道を進んでみたが、昨日にもまして今日は蒸し暑いこともあって、なんだかだんだんいやになってきた。目の雨に江戸川を渡る橋が見えてきたので、気候は変えられないのならせめて河岸でも変えようと、渡るために土手に続く斜面を駆け上がった。

土手の上からは、少し先にずっとこじんまりして風情のある橋が見えた。高さは低く、歩道も片側しかない。欄干もシンプルで、なんだか小津映画に出てきそうな橋だった。最初渡ろうとした橋が新行徳橋で、雰囲気のある方が行徳橋だ。橋に沿っていくつかの石の建造物が並べてあって、錆の浮いたドアにはカギがかけられている。下をのぞきこむと水面すれすれに建造物と建造物の間に巨大な金属製のローラーのような設置してある。それは可動堰だった。水面すれすれに見えているのは閉めた状態で上流で大雨などが降ると開けるそうだが、ぼくはてっきり今が開いた状態で、閉めるときはロボットアニメの基地のように橋の高さまでせりあがるのかと思った。

橋を渡りきってもまだ千葉県。旧江戸川沿いをゆく。細い濁った水路の向こうに船溜り。向こう岸に造船所が見えた。長い斜面に木の板を何枚も渡して、船が進水するときの道が作られていた。釣をする人々。日本橋から移築した常夜燈と呼ばれる石造りの燈篭。最初は風情を味わっていたが、やはりだんだんあきてきた。川の向こうは東京なのだが、はるか先まで見渡しても橋がぜんぜん見えない。グレーのパーカーを着た初老の男性に追い越されて、負けるものかとぼくもピッチをあげてみたが、すぐに疲れてしまって、差が開いてゆくのにまかせた。男性は今井橋と橋のたもとで引き返してぼくとすれちがった。負けた。

ぼくは今井橋を渡って東京都へ。今井橋は昔都電の終点だったところだが、今はその名残はまったくない。また雨がぱらついてきた。

鎌田川親水緑道の脇を通って江戸川区にも「カマタ」を発見などといっている間にどんどん暗くなってきた。そろそろ終着点を決める時間だ。今いるところの住所が瑞江なので、都営新宿線の瑞江を目指そうと思ったが、どちらに進めばいいか見当がつかない。暗い街の中をあてもなくふらふらするうちに大きなバス通りに出て、小岩行きのバスに乗ろうかと思ったが、バス停の手前で地図を見つけた。瑞江駅は地図の範囲のちょうど右上の角にぽつんと存在していた。地図の通り歩いて、どうにか到着。10.3kmだった。

疲れきって電車に乗る。馬喰横山で都営浅草線に乗り換えて日本橋に出た。八重洲地下街まで歩いて食事。いなば和幸というとんかつ屋に入った。一時期定番だったが、こちらにくることが少なくなったので久しぶりだ。食べたかったのはカキフライだが、スタミナも必要だと思い、カキヒレカツ定食を注文。カキフライが3つ、カツが2つ。カキは小さめだがとてもミルキー。おいしかった。1280円。

京橋まで歩いてタリーズに入った。喉がかわいていたので、冷たいものが飲みたかったのだ。そのまま銀座通りを通って有楽町まで歩く。

気まぐれで大井町でおりて、ブックオフに寄ろうと思ったが、もう閉まっていた。このまままた電車に乗り込むのもなんなので、疲労回復がてらバスに座ってゆっくり帰ることにした。蒲田行きのバスに乗る。運転手が営業所がどうのこうのとかいっていたが気にせず乗り込んだ。バスの座席の高みから、長距離旅行者の視点で、ぼんやりと街をながめていると、バスは突然池上営業所にすべりこんで乗客は全部おろされた。

今日は池上本門寺のお祭り、お会式でこの先は通行止めになっているそうなのだ。人の話はよく聞くべきだ。鳴りものをたたいて進む半被姿の人たちを眺めながら、人並みをかきわける。長い棒の先にひらひらと紙のひもを垂れさげたようなものを、さも得意げにまわしている人もいるが、誰にでもまわせそうなものだし、何がすごいのだろう。まあ、ほとんど祭りには興味がないので、こういうハプニングでもないと見ることのないものだ。目に焼き付けながら、池上の駅を目指した。

疲れた。

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