昨日は法事の一団に囲まれたが、同じ黒服でも今日は結婚式帰りの赤ら顔の一団だ。中央線の電車の中。酔っているので声がとても大きい。わが身の不運を呪ったが、新宿で席に座って集団がばらけたあとは静かになった。
立川で青梅線に乗り換える。ところでなぜ立川には1番線がないのだろう。一駅目の西立川で降りて歩きはじめる。
すぐ目の前が昭和公園なので、中を突っ切ろうと考えていたのだが、ゲートから大量の人が出てくるばかりで入る人がいない。というかそもそもゲートの存在がぼくにとって意外なことであった。無料で自由に入れる公園だとばかり思っていた。そばの看板を見てみると、開園時間は5時までで、入場はその1時間前までだった。時刻をちょうど4時をすぎたばかり。しかも入園料は400円という高額。動物園並み、というか横浜の野毛山動物園は入場無料だというのに。
しかたなく脇の駐車場から外に出て、公園を迂回するように歩く。昭島病院を通り過ぎたところで北上。そのときは気がつかなかったが、青梅線のさらに一駅先の東中神のすぐそばまできていたらしい。
一応車も通れるのだが、パステルカラーを褪色させたような妙な色使いに舗装された、緑道めいた道。分岐点に線路の断片があったので、その道が廃線跡だということがわかったが、そのそばにある碑がやすりか何かで削られてほとんど読めなくなっていた。元米軍基地に続く引込み線だということだけわかった。
西武蔵野という茫漠とした名前のバス停があり、すぐそばに広大な空き地が広がっている。それははるかかなたまで続いており、その先におそらく立川であろうビル群が蜃気楼のように浮かび上がっている。東京でこんな風景が見えるところはなかなかない。
昭和公園の砂川口に出た。こんなところまで公園が続いているとは驚きだ。公園に入れない夜間は単なる巨大な暗黒だし、昼間も通り抜けるだけでもお金を払わなければいけないなんて。
なんとか国立を目指そうと思ったのだが、真っ暗になってきたし、まだまだかなり遠いことがおぼろげながらわかったので、モノレールの泉体育館駅で、散歩終了。6.7kmだった。
立川にでた。駅から出てくる人、駅に吸い込まれる人の多さに驚かされる。こんなにたくさんの人が立川にきてたら、ほかはがらがらではないかと思わされた。せっかくの立川なので、グランデュオ7階の中華街にようやく足を運んでみることにした。1階から4階まで直通のエスカレータに乗る。これなら登りきるまでの間に一生分の出来事を振り返れそうだ。
たくさんの店があって目移りする中、値段の安さと混雑の度合い(待たされないところ)ということで羽衣という店に入った。牛肉の牡蠣油炒めと海老の玉子炒めのセットを注文したが、味はごくふつうだった。杏仁豆腐だけは絶品だったが、どこで食べてもおいしく感じるのでこれはぼくが実は無類の杏仁豆腐好きということなのかもしれない。
ビックカメラをのぞく。かなり大きな店舗だ。立川ならほとんど何でもそろうことがわかった。
さらに吉祥寺に出る。東急裏のタワーレコードで、FRANCK AVITABLE“BEMSHA SWING”というジャズピアノのアルバムと、Peter Gabrielの“UP”を買った。どちらも発売されてからかなりたっていて何をいまさらだが、気づいたのが最近なのだから仕方ない。
近くのタリーズに入る。南欧の海辺のあずまやのような開放的な建物。なんだかとてもいい気持ちになってきた。やはり何でもいいから昨日やらなかったことを今日やらなければいけないと思う。知らない街を歩き、食べたことがないものを食べ、聴いたことがない音楽をきき、入ったことのない店でコーヒーを飲む。毎日はそれぞれちがう一日だということを確認しなければいけない。
気分の高揚にのせられて、ヴィレッジ・ヴァンガードで、ワイルド・ストロベリーのミニ栽培セットなどというぼくらしくないものを買ってしまった。『森の生活』を読んでいるので、自然の神秘に触れてみたかったというのもある。
新代田からバスでのんびり帰ることにした。バス停のまわりは禁煙なのに、どうしても吸わざるを得ない呪われた人々の群。その残り火を消しつくすように、ぽつぽつとバスの窓に雨がモールス符合のように短い軌跡を描いた。

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