秋空を覆いつくす厚い雲の陰が鬱をひきつれてきた。写真を撮るにはまったく不向きな日だがそれでも一応カメラはもってゆく。歩きはじめたのは阿佐ヶ谷から。中央線には乗るもののこのところ武蔵野まで行きつけない。
青梅街道を渡って路地に入り込んだら、なんともいえない不思議な匂いがただよってきた。植物を何日か乾燥させたような、あくの強い山菜を煮込んだような、しかしてその実体は、家の壁面を塗るペンキのにおいだった。
阿佐ヶ谷住宅、善福寺川緑地。何枚か写真を撮ってみたが、駆け足で訪れた夕暮れに脅されて、早々とカバンの中にカメラをしまいこんだ。西永福のしけた灯りも暗さに慣れた眼にはまぶしかった。現実的にも比喩的にも見渡すかぎりどこにも陽がさしていない向陽商店会という通りを通って桜上水まで。6.1kmだった。
下北沢にでた。いつもその角を通るたびにカレーの匂いに鼻腔をくすぐられていたゆめやというカレー屋に入ってみる。1280円のハンバーグカレーを注文した。ぴりっと香辛料のきいたコンソメスープとおからがつけあわせとしてでてくる。カレーは甘めの欧風カレー。もうすこしマニアックな味かと思ったら、ふつうのカレーだった。店の雰囲気に500円という感じだろうか。
二、三件本屋のはしごをしたら、大きな本屋に行きたくなったのでさらに渋谷に出ることにした。だが、結局渋谷でも何も買わずにタリーズでコーヒーだけ飲んだ。

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