黒と黄色、それに赤

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昨日のハイテンションとはうって変わってデプレッション。鏡の中の見知らぬ男が打つ手なしという表情でこちらをながめている。

久しぶりの横浜。東神奈川から歩く。駅から一歩外に出ると住所が西神奈川に変わってしまうので、「東」には何の重みもない。二ツ谷、平川町、旭ヶ丘と住居表示を見るたびに町名が変わっている気がして、まるで郵便配達を困らせるためにランダムに付け替えているようだ。旭ヶ丘で坂を上って栗田谷で坂を下るというまさに地名通りの地形。

知らぬ間にUターンする形になり地下化された反町の駅前へ。もともとはなんとなく横浜駅からそれほど離れていない台町という町のあたりにいってみようと思っていたので、もっけの幸いであるわけだが、そのチャンスを生かすことができず、方向感覚を失って三ツ沢の方へ迷い出た。

いなくなった動物を探す貼り紙はよくみるが、預かっていますという方はあまりみかけない。珍しく、ハムスターを預かっていますという写真つきの貼り紙をみつけた。4月1日に貼ったらしく「エイプリルフールではありません」と添えられていた。ハムスターがそんなに長い距離を移動するとは思えないので、たぶん近所だと思うのだが。

豊顕寺というかなりの名刹らしい寺。そこの森林が一般にも開放されていて、無料で通り抜けることができる。もりあがった土まんじゅうの上を桜の花びらが覆っていて、巨大な桜餅のようにみえる。階段を上りきると、下界のパノラマ。この寺は今日一番の収穫だ。

三ツ沢公園には入らずに狭い道やら階段やら遊歩道を選んでいるうちに見覚えのある広い道路に出た。この先でいつだか猫の死体を見つけたことを思い出した。もうそれ以上歩く気力をなくして、目の前の岡沢町というバス停で散歩は終了。7.1kmと短いが東京に比べると横浜はアップダウンが激しいので、距離以上に疲れる。

バスはすぐに来たが異様に混雑している。無理矢理乗り込んだが、すぐに発車してしまい、奥に詰める機会を失ったまま運転席付近でうろうろしていたら、運転手にミラーが見えないので奥に入れと怒鳴られた。なんかただでさえ裸に近くなっている気持ちが、最後に残った表面の苔までむしりとられたようで、どうにもみじめな気分になってきた。ふだんは自己欺瞞という鎖帷子でガードしているのに、自分がバスの運転手に怒鳴りつけられるような間抜けに過ぎないという現実がまざまざと露呈してしまったのだ。バスはすぐに空いたのでよろよろと椅子に座り込んだ。

横浜駅到着。なんだか風がやけに冷たい。河岸を変えたくなって、みなとみらい線に乗り込む。まだ降りたことのない日本大通り駅で下車したが、特に何が違うというわけでもない。気持ちよく食事をとれる場所を探しつつ馬車道方向へぶらぶら歩く。結局、馬車道についてからサモワールというオムライスとスパゲティが名物のカフェに入った。子供の頃住んでいた町にサモワールという名前のおいしいカレー屋があった。その町でただひとつのいい思い出だ。

イカ墨オムライスとロイヤルミルクティーのセットを注文。うちの安物の液晶モニターでは再現できないような漆黒の飯に、ファンキーな黄色のたまご。ミクロネシアあたりの黒人の人には黄色いシャツが似合うみたいな感じで、とてもファッショナブルだった。そして端に添えられたケチャップは体内を流れる赤い血のメタファーだ。

ケチャップの味がちょっとくどかったのであまりつけないようにすればよかったと後悔したが、たまごがとろとろしていてなかなかおいしかった。ロイヤルミルクティーも大振りのカップになみなみと注がれていて、さすが本格的な味だった(この店の売りらしい)。オムライスが税込み850円でセットが1300円なので、ミルクティーの値段は450円だったが単品だと650円するものらしい。

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