大井町線の電車の中で、80歳は優に超えていると思われる女性が、髪を染めて髭をはやした若い男に乗り換え方法を尋ねていた。彼は、親切に教えてあげるばかりでなく、自分も電車をおりて連れて行ってあげようとする。ところが、女性は具合が悪くなったのか、駅のベンチに横たわってしまった。電車が発車して、そのあとどうなったかはわからない。
曇り空の下、町田から歩き始める。ちょっとひんやりすると思ったのは一時のことで、すぐに蒸し暑くなってきた。
狭い石の階段を下りてゆくと、芹が谷公園に出た。噴水の中に奇妙な金属製のモニュメントがたっている。円柱の頂上部分の両側に左右の長さが不揃いのシーソーのようなものがとりつけてあって、妙なリズムで、左右に傾き、その動きにあわせて水が流れてゆく。しばらく見とれていたが、ちょうど水の流れがとまってしまった。5時になったのだ。版画美術館の脇から下りてきたのと同じような階段を上って公園の外に出る。団地と畑のタペストリー。
小田急の線路をくぐって恩田川沿いの道。すれちがった飼い犬の下腹部が赤くふくれあがって、引きずりながら歩いている。痛々しくて目をそむけてしまった。それでも生きようとする力を肯定すべきなのに、見つめる勇気すらない。
玉川学園前の駅前を通り過ぎて、隣の鶴川くらいまで歩こうかと思っていたのだが、途中で自分がどの駅からも離れる方向に歩いていることに気がついた。暗くなってきたので、藤の台東というバス停で散歩を終える。6.8kmだった。
町田は東京都なのに、乗ったのは神奈川中央交通のバスだ。バス停の案内には前のドアから乗車して整理券をとるかバスカードを挿入するようにと書いてあったのに、後ろのドアが開く。バスカードの差し込み口もなく、右往左往してしまう。どうやら、最初の区間なので整理券やバスカードは不要だったようだ。町田駅までは230円。
東急の8階のレストラン街。山王菜館という中華料理の店に入った。麻婆豆腐と唐揚げのセットを頼んで待っていたら、テーブルがぐらぐら揺れていることに気がついた。地震だ。サスペンス映画の常道に従って、徐々に揺れが強まってゆく。結果的に揺れの大きさはたいしたことなかったが、揺れている時間が長かった。ほんとうに怖くなってしまった。その恐怖が尾を引いて、ちゃんと味わって食べることができなかった。でも1260円は払う。
東急ハンズを冷やかしてから、タリーズへ。ようやく人心地ついてきた。

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