鶴見の街を知らない人はまったく知らないだろうし、少し知っている人はそこ川崎だっけ横浜だっけというようなものだろうし、かなり知っている人はわざわざ足を向けようとは思わないだろう。というのはJRの駅の東側の話であり、西側には総持寺という名刹があって、芸能人が好んで住むような閑静な高級住宅地になっている。今日は散歩の空白域であるそのあたりを歩いてみることにする。
このあたりを歩くのは子供の頃以来といっていいのだが、バス停の名前や街並がなんとなく記憶に残っている。その記憶を更新しながら、湾曲した坂を上り第二京浜にかかる陸橋からの見晴らしを楽しむ。
橘女子高は文化祭で、父兄や関係者らしき人たちで校門の前のバス停が混みあっていた。鶴見は市営バスと臨港バスという2種類のバスが通りごとに勢力圏をわけあっていて、この通りは臨港バスの牙城だ。本数が多いので事故も珍しくないということだろうか。その先で、臨港バスの後尾に乗用車が追突していた。バスの方も左後部がへこんでひどかったが、乗用車の方はバンパーの跡形がなくなりフロントグリルがほとんど大破という状況だった。バスの運転手は無事で交通整理をしていたが、乗用車の方の運転手の姿は車内にはなくただクラクションが鳴り続けていた。警官に話をきかれていた中年女性が運転手だとすると奇跡的だ。あの状況なら命をなくしている可能性もあったと思う。
鶴見で池といえば三ツ池公園が有名だが、冗談のように二ツ池というのもある。記憶では水面がみえたような気がするのだが、今日みたら、丈の高い葦に覆われて、池なのか草地なのかよくわからなかった。
そのあたりの地名は獅子ヶ谷。獅子ヶ谷の名主をつとめていた横溝家の家屋が昔のまま保存されているというので、ついでに見てみることにした。入場は無料だ。誰もいないかと思ったが、近所に住んでいるとおぼしき家族連れなどをちらほら見かける。土間から座敷にあがりこんだ。こういう日本家屋はどことなく落ち着くものだ。無性に昼寝がしたくなる。狭い階段で二階の展示室まであがってみたが、かなりがたがきていそうで、ここで地震が起きたらという不安が頭をよぎる。協力金100円を入れてから外に出る。
すぐ先は港北区。師岡公園という崖にへばりつくような公園の階段をのぼって、港北区役所、そして大倉山へ。商店街をまっすぐ進んで、太尾新道を右折。左側に鶴見川が迫ってきて、否応なしに綱島につれていかれる。綱島温泉の前のファミリーマートで芝居のチケットを引き換えてから、綱島駅に到着。10.1kmだった。
東横線で渋谷に出た。まずは食事。おひつ家であっさりおろし唐揚げ定食、740円。さくさくの唐揚げに大根おろしがあう。隣の席にやってきた若い男二人が灰皿を要求したので、吸い始める前に急いで食べてしまった。
ブックファーストで、吉田修一『パーク・ライフ』、大塚英志『「伝統」とは何か』、中瀬航也『シェリー酒』を買う。
新南口のスタバで、激しい眠気に襲われるが、なんとか振り払って、ポイントを使ってビックカメラでシェリーとギネスを買う。ぼくにとってビックカメラは無料の酒屋と化している。

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