南武線の南多摩駅でおりるのは2回目だ。前回は橋を渡って府中市に入ったが、今日はそのまま稲城市の中心部をめざす。とはいえ、もう3時20分。この時期はすぐに暗くなってしまうので、あまり長くは歩けそうもない。
今日はちょっとミーハーに映画『花とアリス』のロケ地を訪ねるのが主たる目的だったりする。目的地の城山公園はすぐそこだ。公園の南多摩側はまだ造成中で、フェンスで囲まれた敷地の合間を縫うような坂道をてくてくとのぼってゆく。のぼりきった広場はアリスと宮本がなかった記憶をたどって語り合う場所で、彼らは段のついた斜面に座っていた。
陸橋を渡って一山越えたら、ひつじさん公園という見当違いの場所に連れて行かれた。頭の中の地図と実際の地図をシンクロさせて、スーパーの看板のあるこのあたりの中心部であろう方向を選んだ。そう、その交差点の角の広場がアリスが雨の中ダンスの練習をしていた場所で、アーチを描く陸橋が目印だ。その下のトンネルは主人公たちが何度か通っている。カメラをもってくればよかったと後悔した。
映画とは関係ないが、その先の噴水もいいし、さらに先の階段をしつらえた広場にも思わず寄り道してしまった。そのあたりの地名は向陽台。何もないところに、とにかくきれいなものを並べましたという表面だけの街だが、その作り物めいた軽薄さ、人の姿が少ない空虚さに惹かれてしまう。街好きなのに郊外も好きなんて矛盾しているとは思うのだが。
誰もいない野球場の緑の芝生がビロードのように光っている。公園と公園を結ぶ陸橋からは遠く都心の高層ビル群が見渡せる。その上では、巨大に膨れあがった入道雲が、沈む直前の夕日をあびて、禍々しいピンク色に染まっている。さらに公園は続いて、サッカー場や体育館が立ち並んでいた。
長峰のマンション群をぬけていたら防犯パトロールという幟をたてた一団とすれちがった。こういう郊外は都心以上に犯罪が増加しているそうだけど、一団で練り歩くというのにどれだけ効果があるか疑問だし、現代的な風景とうらはらな「村」的なものを感じてしまう。
上谷戸大橋を渡る。下に小川のようなものが流れているようだけど、陸橋といってしまっていいだろう。丘と丘をつなぐ橋だ。上谷戸は「かさやと」と読む。
向こう岸は若葉台。ほどなく駅に着く。5.8kmだった。もう真っ暗だ。
京王線で新宿に出る。ルミネの東花房で、地鶏のパエリアとシーザーサラダを注文。ちょっと量は少ないが、その分値段は安い。2つで1218円だった。
うろうろあてもなく新宿の街をぐるぐるまわる。地下道経由で東口に出て無印良品、再び南口に出て高島屋の下のユニクロ、マイシティーの前を通って、大ガードをくぐり、小滝橋通りのタリーズでようやく一息つく。ホリデーストロベリーモカは思ったより甘くなく、イチゴの果肉が入っていておいしい。
外に出たら雨。稲城の陸橋からみたピンク色の入道雲が降らせているのだろう。時間はかかるがゆったりと品川までバスでゆくことにした。信濃町、青山、西麻布、魚藍坂とこの路線は通る道筋がなかなかいい。
一応縁起物なので、ボジョレヌボーを買って帰った。

コメントする