冬到来。歩くことに苦痛が伴う季節がやってきた。どれくらいの苦痛かというと、耳を指でつねられるくらいだ。目を閉じてつねっているのがかわいい女の子だと思えばやりすごせる程度。だがときおり厳しい北風が強引に目を開かせる。
新宿湘南ラインの特別快速というやつに乗ってみた。大崎から高崎行きに乗り込んだので、特別の特別たるところは、ただ恵比寿を通過するだけだった。乗客が待っているホームをみていると逆に停まってもいいのにと思ってしまう。
池袋で下車してさらに西武線で練馬までいき、歩きはじめる。歩きはじめるときには、おぼろげな計画を思い描くのだが、たいていは裏切られる。というか、自分で裏切る。今日も南の杉並区の方にいくつもりが、なぜだか練馬駅の北側の住宅地をうろうろすることになってしまった。
石神井川にぶつか氷川台あたりで我にかえるが、いつの間にか板橋区。環七を渡り宮の下商店街。まっすぐ進んでゆくと有楽町線の千川駅に出る。
それまでさみしいところばかりを惰性で歩いてきたが、駅前の灯をみて発奮した。今までの沈滞が嘘のように大通りをハイペースで進む。あっという間に池袋到着。8.6kmだった。
東武の7階に小松庵という蕎麦屋で食事。野菜天のセットを注文した。ナス、ニンジン、レンコン、ピーマンなどの野菜の天ぷらは塩をつけて食べる本格派。それにかやくご飯、せいろ、温かい蕎麦がついてくる。温かい蕎麦とあわせて食べると、せいろの蕎麦のこしの強さがひきたつ。1470円。
隣の席の年配の男性が少し酔っていて、カード払いのための名前と電話番号を書きながら、女性店員にいろいろ話しかけている。最近離婚したせいで電話番号が変わっただとか、そばがとてもおいしかっただとか。外見とはちがってその声にはとても世慣れた落ち着きを感じた。だが、勘定をすませてからもなかなか立ち上がろうとしないので、何かいやだなと、落ち着かないものを感じていたら、やがて連れの女性が現れた。男性の方は待っていたようだ。年齢はそれなりに重ねているが、知性的な美人で、彼女のせいで離婚したのかと、ふと他人の人生をかいま見てしまった。
さらに有楽町に出る。無印良品でパンツを2つ買う。なんだか同じような色になってしまった。裾直しができるまでの間、スタバでコーヒーを飲んだり、ビックカメラを冷やかしたりして時間をつぶす。ビックカメラでポートワインやらビールやらを買い込む。

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