もうひとつの五反田

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数分遅れている京王線の車内で、当社ではお客様の安全を最優先に運行しておりますという、アナウンスがあって、うまいと思ってしまった。電車は遅れながら、京王永山に到着し、そこから散歩を開始する。

高い湿度と冷たい風が矛盾したメッセージを送ってくる。永山ハイツをぬけて低地の川沿いを進むが再び坂をのぼって、豊ヶ丘北公園へ。

園内も起伏があって、最高点は標高130m以上ある。いったん反対側の出口に近づいてから急な階段をのぼってみたが、木や草に覆われて見晴らしはよくない。頂上近くに小さな石のオブジェがあった。たぶんもとは地蔵だったのだろうけど、顔がすりきれてわからなくなっているようだ。由緒がありそうだが特に説明のようなものはみあたらなかった、再び入ってきた場所の近辺に戻ってしまい、再度出口を目指す。

公園から遊歩道が続いていた。たぶんうまく道を選べばずっと遊歩道伝いに歩いていけるのだろうけど、どうも勘がさえずすぐに車道と合流してしまう。多摩中央公園の近くまでいって、今度こそはと大きな通りをそれて高台に続く階段をのぼる。

思った通り、その先は遊歩道になっていて、団地の中や小さな公園を通り抜けていく。やがて、一本杉公園という中央に大きな野球場がある公園にたどり着き、そこから横山の道と名付けられた道に入ってゆく。

遊歩道に林道がミックスされたような道を歩いていたら、近所に住んでいる父と娘の二人連れに声をかけられた。ぜひうちの婿にというわけではなく、横山の道を歩いているんだとしたら、もうそこからはずれていてこの先は車道と合流してとんでもないところに出てしまうということを親切に教えてくれたのだった。ぼくとしてはそれでも構わないので礼をいって直進したが、「とんでもない」という言葉が気になった。

降りた先は若干狭いがごく普通のバス通りで、別にとんでもなくないではないかと思っていたら、いつの間にか町田市に入っていて、ナビウォークで確認したところ、どの駅からも結構離れた場所だということがわかった。一番近い多摩センターまで3km近い。かといって多摩センターに戻るのもしゃくなので、漠然と反対方向に歩いてみたが、ほかの駅は歩ける範囲にひとつもないということにようやく気がついた。バス通りではあるが、バスは1時間に1本しかなく、あと30分以上は来ない。仕方なくもっと大きな道路と交差することを期待しつつ道なりに進んでいく。

待ちかまえていたのは鎌倉街道で、五反田という名前の停留所が交差点の近くにあった。山手線からはるか遠く離れた場所にも五反田はあるのだ。9.4kmだった。本数は1時間に3本程度でさっきよりはましだが、ちょうど今し方いったばかりだと思っていたら、どこからともなくバスがあらわれた。乗り口を間違えた上にバスカードが取り出せずあたふたしてしまう。

バスは小田急の鶴川駅行き。そこから下北沢まで出た(新百合ヶ丘から快速急行で一駅!)。

スープカレーの心という店に入る。二度目だ。前回のシーフードスープカレーは甲殻類のひげが口の中でちくちくして失敗だったので、今日はちくちくしないラビオリにしてみた。ライスとカレースープをどのようにからめて食べるか迷ってしまうのだが、途中で、スプーンにライスを乗せて、それをスープにくぐらせる、つけ麺形式が一番スマートだという結論に達した。1000円ジャスト。

三省堂で、上野修『スピノザの世界』と、舞城王太郎『阿修羅ガール』を買う。

スタバで隣に座っている女性二人組の会話が、知らない単語が飛び交っていて専門的な商品とかロックグループと話かと思っていたら、日本語ではなくハングル語だった。意味はわからないが笑いとか興奮などの感情が伝わってくる。エネルギッシュだ。離れた席では、若い日本人の女性が、中年の外人男性からフランス語のレッスンをうけていて、それもかなり大きく響いてくる。日本語はぼそりぼそりとほとんど聞こえてこない。

バスで帰ろうと新代田駅を目指すが、どういうわけか迷子になってしまい、再び下北沢に舞い戻ってしまった。そのまま三軒茶屋まで歩いてしまう。

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