
真性散歩ジャンキーであるぼくは夢の中でも散歩をしているわけで、土曜日の朝方の夢でたどりついたのが今までいったことも見たこともない箱根ヶ崎だった。夢の中では線路をまたいでホームにたどりつくようなローカルな駅だったが、実際のところどうなのだろうと、うだるような暑さの中、リアルな90分とリアルな950円を費やしてリアルな箱根ヶ崎に向かった。
青梅線の拝島から八高線に乗り換える。昼間は1時間に1本ということもあるローカル線だ。車両は見るからに山手線の205系のお古。ラインの色も同じウグイス色でそこに一本オレンジの線が加えられている。ただ車内ではひとつ重要な変更が加えられていて、ドアの横に開閉するための大きなボタンがついている。文化的な差異を感じる風景だ。
箱根ヶ崎の駅舎は夢で見たのとは大違いの真新しい立派な建物だった。東京都西多摩郡瑞穂町。箱根ヶ崎はその唯一の駅であり、玄関口だ。街は今夏祭りで、ところどころ人だかりができていたりするが、その割には祭りらしい御輿や、半被姿の人たちなどの姿がまったく見えなかった。御輿がくるかもしれないという期待感だけで成り立つヴァーチャルな祭りなのかもしれない。
影がのびる方向―東へ進む。こころなしか、都心よりこちらの方が過ごしやすく感じる。日が傾いたせいかもしれないが。青梅街道も祭りのせいで通行止めになっている。新宿あたりでは何車線もあって交通量も半端じゃないが、ここまでくるとのどかなもので、警備の警官ばかりが、片側一車線しかない道をふさいでいる。
郡部というと田畑というイメージがあるが瑞穂町はふつうの住宅が多いし、比較的よく整備されているという印象だ。米軍基地があるので、ある種の潤いがあるのかもしれない。それにひきかえ、隣の武蔵村山市の方が市部であるにもかかわらず、余程田舎めいている。いつの間にかその武蔵村山市に入っていた。
日射しから避難するため高い木に覆われた緑道に入り込む。ずんずん進んでゆくと行く手をふさぐ壁の中央に狭いトンネルが穿たれている。高さ2.5m、幅2mくらいの自転車、歩行者専用のトンネルだ。もともと多摩湖まで通じていたトロッコ用だったらしい。昨日の雨のせいか、中は天然のエアコン(もちろんトンネルは人工だが)がきいていて、とても涼しい。足取りも軽くなる。最初の横田トンネルを抜けると、次は赤堀トンネル、そして御岳トンネルと連なる。その先は鬱蒼と木が生い茂る森みたいな感じになっており、どこに連れて行かれるんだろうと、一瞬不安になるが、すぐに道が開けて池のほとりに出る。だが安心するのはまだ早くて、その先に最後のトンネル、赤坂トンネルが続く。白い靄が入口から流れ出ていて、秘境への入口のようだ。
長いトンネルの向こうは今度こそほんとうに森。木々の間に開けた正面の道をゆくと、通行禁止のトンネルの入口があったらしいが、ぼくはひるんで左手の道をゆく。
すぐに人里にたどりつき、紆余曲折の末青梅街道を直進する。途中いちょう通りに右折し、そのまま、わけのわからない頑張りをみせて、西武拝島線の東大和市駅まで歩いてしまった。11.4km。汗だくで疲れた。さすがに身体がだるい。[地図]
新宿に出る。新宿は寄りたいスポットが駅の東西南北に分散していてただでさえ疲れるのに、今日は時間が相当遅くなっていたので、まず食事をとらなくてはいけない。優先順位が決まっていると、駅のまわりを何周もする羽目になる。今日もまず、北の果て西武新宿から南の果て甲州街道まで歩く。ところが、お目当てのつけ麺屋は商品売り切れとかいって、閉店準備中。西口に戻って、うどん屋三国一で、いつものツナサラダうどん。夏はやっぱりこれでしょ。950円。
そこから北の果てのさらに向こう、小滝橋通りのタリーズに向かうが、こちらも閉店。もうそんなに遅い時間なのだ。それからタワーレコードに寄ったりしてたら、ますますへとへとになってしまった。電車の中では、ただひたすら目を閉じる。

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