正義の三鷹

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午前中雨が降っていて、出かけようとしたときも灰色の空が街を覆っていた。このところ休日に青空が見えない。カメラをぶらさげて歩くぼくへの嫌がらせのような気がしてきた。

京王線の八幡山から歩き始める。駅前通りから甲州街道を渡って住宅地の中にもぐりこむ。中央道をくぐり広大な老人ホーム浴風会を通り過ぎたあとは、井の頭線の線路をつかず離れず歩んでゆく。富士見ヶ丘、久我山、三鷹台、そして井の頭公園。

井の頭公園にはうっすらと靄がおりていた。ふうっと息を上に向けて吐き出すと、つかのま白く煙る。天気はいまいちだが、今日もたくさんの人が集まっている。愉快なケルト音楽を演奏する一団(日本人の中年男女ばかり)の音色にききほれ、いつ店じまいをはじめるか考え始めている物売りの露店をかすめる。その先でよく通る男たちの声がひびき、ひとだかりができていた。コントショーだ。超スパルタ方式でレパートリーが1曲だけの歌唱教室に入ってしまった男たちというシチュエーション。面白そうだったので、たちどまって最後までみてしまったが、ありきたりの笑いの文法をたどるだけで新鮮さがなかった。特に、ラストがちゃんと落ちてない。まあ、ただのものに文句をいってもはじまらないが。

公園から外に出て、こんどは中央線につかずはなれず隣の三鷹まで歩いてゆく。夜が早足で近づいてきて、ぼくを追い越してゆく。その後ろ姿はゆっくりと闇に溶け込んでゆく。

三鷹駅到着。ロンロンの小ハゲ天に入る。ふつうのハゲ天と何がちがうかというと、若い女性をターゲットにヘルシー志向ということらしい。だが、入ってる客は、小太りの男性一人と、リタイアした人たちの同窓会的な集まり、それに老夫婦で、若い女性は店員だけだった。そばとミニ天丼のセットを注文するが、確かに女性向きらしく、量は少なめで、大根サラダがついてくる。天ぷらはかぼちゃ、鮭、極小のえびの3点。えびまで小さくすることないのに。950円。

さて、駅から20分弱くらい離れた三鷹市芸術文化センターで芝居をみるので、そこまで散歩を続行することにする。その前に芝居のチラシをいれる袋を確保するという目的もあって、駅前の啓文堂書店に入ってみた。雑誌散歩の達人を買う。

いつきても三鷹中央通りの商店街は楽しい。まだ時間があったのでUCCカフェプラザに入ってみた。ドトールやスタバのようにカウンターで注文するのかと思ったら、オーソドックスに席まで注文をききにきてくれる。はちみつ入りカフェラテを注文。普通のカフェと同じようにコーヒーはなかなか出てこない。コーヒーの前に適度にくつろげる時間をサービスしてくれているのかもしれない。そうしている間にでっぷり太ってタバコを指の間でくゆらせている男が入ってきた。なんかウェイトレスの女の子にいろいろ話しかけているようだが、声が小さくて聞き取れない。ちょっと気になったが、女の子の方は普通に営業トークを返していたので、変な話ではなかったのかもしれない。ただ、タバコをすっているより灰皿に置いている時間が長いのはどうにかしてほしい。

カフェオレとは別にはちみつの入ったガラス容器が運ばれてくる。最初入れずに飲んでしまったが、それでははちみつ入りにした意味がない。あっという間に飲み終え、お勘定。480円だ。伝票に印字されている社名がユーシーシーフードサービスシステムズ株式会社になっていて、まるでシステム会社のようだ。

劇場到着。9.5kmだった。[地図]

芝居がはけた劇場の外で、劇作家の宮沢章夫さんと女優の三坂知絵子さんを見かけた。ぼくはそれなりに満足したが、お二方はどう思ったのだろう。ぼくは軽い高揚感と二人連れで来た道を戻る。

高揚感が手伝って新宿で途中下車した。タワーレコードで、テンシュタット指揮ロンドンフィルのリヒャルト・シュトラウス「ツァラトゥストラはこう語った他」を買う。お目当ては、「四つの最後の歌」だが、「ツァラトゥストラ」とカップリングされているやつを選んだのだ。古い録音だったので1000円ちょっとで買えた。

いつの間にか10時をまわっていてエスカレータがとまっていたので、階段をとぼとぼ降りて、地上にたどりつく。上りの中央線も各駅停車だけになっていた。夜はとっぷりふけている。

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