影の国

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久しぶりに本格的な風邪をひいた。どれくらい本格的かというと和泉元彌なみで、ぼくは空中元彌チョップをくらったようにふらふらだ。

はじめての街、田園都市線の江田に降り立つ。電線にとまるスズメのように、駅前のバスターミナルのベンチに人が群れていて、彼らの影がすうっとこちらにのびてきた。その影がやってきた方角、西へ向かう。

行く手をはばまれて左折したら田園都市線の線路にぶつかってしまった。気をとりなおして、今度は北に向けて歩き始める。

いい感じに傾いた日射しがさして写真日和だが、今日はいろいろなものの影が気になる。街路樹の影、自転車の影、門扉の投げかける幾何学的な影。くっきりと鮮明な影もあれば、ピントあわせに失敗したようなぼやけた影もある。

まっすぐどこまでも続く道。交差点の角に調整池があってその前にモデルルームの案内板をもった黒いスーツ姿の若い男が座っている。しばらく歩いていくと、また同じように調整池、案内板、黒いスーツ姿の若い男の三つ組みがあらわれた。同じところをぐるぐる歩き回っているのではないかという疑心暗鬼にとらわれるが、かろうじて反対側の角の店がちがっていることに気がついた。

まばゆいばかりに黄金色に色づいた銀杏並木。地面におちたギンナンを拾う人々。

なんか見覚えがあるなと思ったら、行く手で道が直角に折れ曲がっていて、その向こうにたま日吉病院の建物がうかびあがった。確実にきたことのある場所だ。このあたりは今日を含めてまだ3回しか歩いていないのだが、3回が3回ともここにきている。強力な磁石でもあるのかもしれない。前回、前々回は新百合ヶ丘方面に向かったので、Uターンする形になるが、今日はたまプラーザを目指すことにした。

太陽は沈んでしまう前に雲にとりかこまれてしまった。それまでも風が強かったのだが、急に寒さがこたえてくる。上着のボタンをはめて「北風と太陽」の旅人をまねて、渋い顔をしてみた。

駅前とか、そこから続く広い道路ばかり歩いていてたまプラーザはさえない街だと思っていたが、今日はあちこちに張り巡らされている遊歩道に入ってみることにした。道路を何度も横切るアーチ型の歩道橋はこれらの遊歩道を結んでいるのだ。1本か2本奥に入っただけなのに、心地よい静けさがある。木の枝を透かしてネズミにかじられたように半欠けの月が決まり悪そうに顔を見せていた。代わりに街灯が暗い道を照らしてくれる。

遊歩道伝いに駅前の東急SCにたどり着くことができた。9kmだった。[地図]

ずっと各駅電車で渋谷まで出た。井の頭線西口駅前のカレー屋ボゥワンに入る。鶏団子と根菜のカレー860円に300円のサラダセットをつけた。根菜というのはレンコン、さといも、にんじん、それにいんげんも入っている。カレーの味も本格的だが、ここはサラダがおいしい。生ハムが入っているし、野菜が新鮮だし、麺を揚げたようものの歯触りがいい。食後のコーヒーも本格的でおいしかった。

ブックファーストで、スティーヴ・エリクソン『黒い時計の旅』、三浦俊彦『ラッセルのパラドックス』、ラース・スヴェンソン『退屈の小さな哲学』を買う。ついでに、いろいろ本を読んでいると数学、物理関係の知識の不足/忘却が痛感されるので、ブルーバックスの最近のラインナップを確認しておいた。そういうときに専門書でなくブルーバックスというのが情けないが。

さて、ビックカメラへ。マウスを新調しようと思ったのだ。マウスマニアのぼくはだいたい1年ごとにマウスを買い換えている。最初はロジクールのMX610というコードレスレーザマウスにしようかと思っていたが、サイズが大きくて、今使っているMX1000とほとんど変わらないし、巨大な充電台兼レシーバを追い払うことができるものの、その代わり最長でも3ヶ月に一回電池を交換しなくてはいけない。それよりは、レーザーではないが小型で、電池が8ヶ月もつLX7のほうが魅力的に思えたので、買ってしまった。

ふだん白い(かなり薄汚れているが)机でマウスを操作しているのだが、今までのレーザーマウスでは何の問題もなかった。が、ふつうの光学マウスでは荷が重かったようで、ドリンクのおまけについてきたマットを敷いて問題解決。少しレーザーというもののすごさを再認識した。

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