空と消しゴム

| コメント(0)

P1000374

大江戸線はなぜかベビーカーが多い。ぼくが座っている席のそばにもひとつあって中には当然のように赤ん坊が入っていたが、ぐずることなく周囲を興味深げに見渡す目や毛布の下で手を元気よく振っているところなどが、(ぼくにとっては希有なことに)とても可愛く見えたのだった。だが、これもまたいつか人間という生き物になるかと思うと、複雑な気分にとらわれる。そういえばグレッグ・イーガンの短編に大人にならない赤ん坊というのが出てきたが、これはこれで考えさせられる話だった。

練馬春日町から歩き始める。ついさっきまで晴れていたはずが、すっかりどんよりした雲に覆われて、太陽は誰かが消しゴムで消そうとした跡のように空を汚していた。

中村橋や富士見台など西武池袋線の方に向かうつもりが、いつの間にか光が丘公園に着いていて驚く。Uターンしたら巨大なガスタンク群が見えてきてさらに驚いた。いや何度も見ているが、ぼくの脳内ではもっと北の東武線沿線にあるような気がしていた。

環八こと環状八号線は自宅のすぐそばを通っているし、なじみ深い道路だ。羽田空港から赤羽岩淵まで伸びる計画なのだが、西武新宿線の井荻から今日歩き始めた練馬春日町、練馬区北町から板橋区若木あたりまでの二区間が未通になっている。そのうち前者の方は南田中トンネルという半地下形式のトンネルを通すらしく、その工事がせっせと進んでいた。深い川のようだ。両側の歩道を広くとって人が気持ちよく歩けるようにしてくれるとうれしい。

笹目通りを渡って石神井公園方面へ。結局石神井公園にはたどり着かず、薄暗い住宅街をとぼとぼと抜けてゆく。西武新宿線上井草駅から、文化祭をやっている都立農芸高校、そして日産工場の跡地。以前は広大な立入禁止の空地が広がっていてあまり近づきたくない場所だったのだが、立派なマンション群が建っていた。ここが日産の工場だった証をたてるように日産プリンスの営業所が敷地の隅にある。

空を見上げると月もまた消しゴムで消されかけていた。

さらに直進して中央線の高架をくぐる。真っ暗な道を主観的に0.3光年くらい慣性の法則で歩き、久我山到着。11.3kmだった。[地図]

吉祥寺に出る。ロンロンの地下にあった天ぷら屋が撤退しかわりに非焼肉の韓国料理店になっていた。市場(シンジャン)という店だ。せっかくなので入ってみる。あまりらしくないラーメンセットを注文。石焼きビビンバという’気分ではなく麺類が食べたかったのだ。韓国風の赤いスープのラーメンに、ごはんとキムチがついてくる。当然のように汗がじわりとにじみ出してきた。

ロフトで腕時計をみる。買うつもりは全くないが、とりあえず時刻がわかる必要があるという機能的な制約と腕にはめるという形態の制約の中で、デザイン的にどこまでできるかを見るのが楽しい。

今日は比較的暖かいのでタリーズは窓全開でオープンカフェ状態だった。窓から遠くない外が見下ろせる席に座って、気取ってみたが、だんだん寒くなってきた。

バスに乗り継ぐ電車の時間に余裕があったので、どんな店があるか見てみようと、中道通りを一往復してみた。いつの間にか月がくっきりと描き直されていた。星も出ている。

コメントする