昨夜のうちに床屋にいき鬱陶しい髪を始末した。今週はとてつもなく疲れたので、床屋では珍しく意識の外に片足を出していた。
という未来の自分に対する業務連絡はおいて、本題に移ると、セレブな奥様の集う街ニコタマから歩き始めたのだった。奥様たちとはちがってぼくのニコタマに対する好感度はあまり高くない。玉川高島屋SCに生気をすべて吸い取られて商店街は裏寂れているし、すぐそばを流れる多摩川が不可避的に街を限っていて散歩コースに広がりがない、それにセレブは車で買い物にくるので道が混んでいる。そんなわけで、ニコタマを歩くのは一年ぶりだ。
車が入り込めない遊歩道を通って吉沢橋の交差点。こちらには二年半以上きてなかったようだ。野川と多摩川の間の静かでちょっとさみしい住宅街をゆく。鎌田、宇奈根、喜多見と住所が変わっていき、小さな団地を抜けると、世田谷区をぬけて狛江市に入った。
整備されていない緑道から狛江の駅前。かなり寒くなってきたが、今日は芝居をみる予定で、それまで時間をつぶす必要があったので、散歩を延長。泉龍寺、西河原公民館の通りをゆく。やがて、多摩川が左手に寄り添ってきたので、拒まず、土手上に登る。太陽はもう川向こうの街に沈み、形あるものはすべて影になろうとしている。昼の名残のオレンジ色の光がかえってそんな影たちを際だたせていた。
京王線の線路あたりで土手下におりて、開催していない京王閣競輪場の脇を通る。暗がりにぽつんと高級時計・ジュエリーの店があったのだが、競輪で勝った客ねらいなのだろうか。散歩は京王多摩川駅までで、10.9kmだった。[地図]
芝居をみるために下北沢へ。混雑を避けて西口から出てしまったが、結構南口側にでるのは大変なのだった。北側からまわればよかった。食事するところを探すが、まだ若干早い時間にもかかわらずどこも混んでいる。結局北口側のウエストという洋食屋に入った。
確か4回目くらいだと思う。年配の夫婦がやっていたのだが、前回から金髪の息子らしい人物が店にたつようになり、今日は実直そうな父親の代わりに厨房に入っていた。常連客との会話によると、父親は病気療養中らしい。Bランチというセットメニューを注文。ビーフカツ、ハンバーグ、エビフライ、サラダのプレートにライスがつく。味はどうかなと思ったが、しっかりと受け継いでいるようで、以前と変わらずおいしかった。850円。ただ、いかにも街の洋食屋という感じでNHKのテレビがついていたりするのだが、ちょうど相撲が終わって小泉首相の会見が聞こえてくるのはどうにかしてほしかった。せっかくリラックスして食事しようとするときに否応なく政治的なものを連想させる話はききたくない。やっぱりこういう店では毒にも薬にもならないような音楽を流してほしいものだ。
芝居が終わって、スタバへ。聾唖者らしい女性が注文をきいてくれた。笑顔がきれいだった。がんばってほしい。
芝居のチラシを吟味していたら、店員さんがトレイを持って近づいてきた。隣のテーブルの女性二人連れにコーヒーとデザートの試食をお願いしている。そういうシチュエーションは苦手なのでこっちにきたらいやだなと思っていたら、そのオーラが伝わったらしく、ほかのテーブルに移っていった。ほっとしつつも、飛ばされるのはそれはそれであまりいい気持ちはしないもので、女性にのみお願いしているという仮説をたててみたが、むさい男二人のテーブルにもお願いしていて、すぐさま反証があげられて、いたたまれなくなってきたのだった。いや、まあそれはそれとして、スタバで働くのはかっこうよさそうだけど、こんな神経を使うことまでさせられて結構大変な仕事だ。


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