見えない古城

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ほんのちょっとぐずぐずしている間にどんどん空の光量がデフレーションしてゆく。

新横浜から鳥山川沿いの緑地を左手に進んでゆくと、やがて日産スタジアムがみえてくる。未来永劫日産スタジアムという名前なら問題ないが、命名権が移るようなことがあったら、あたりの案内板や何からすべて書き換えなくてはならなくて大事だなと思ってしまう。そのうち、駅の命名権も売り買いする時代になるかもしれない。すでに先例らしきものはあって、地下鉄の三越前なんてまさにそれだ。

スタジアムと農地にはさまれた土手上の道を前方にこんもりと盛り上がる緑地を目指して進んでゆく。それは小机城址で、今日は城址を経由して港北ニュータウンの方に向かうつもりだった。

あまりにもさみしすぎる小机駅前からなんとか道を選んで城址兼市民の森の入口にたどりついた。立て看板があるので何とかわかるが、畑と民家の間を縫って山に入ってゆくようになっているので、ほんとうに入っていいかどうか不安になってくる。山を切り崩すような工事をしているのだ。工事現場の人にこの先進めるのかと聞いてみたら平気だとのこと。「気をつけて」といってくれた。

すぐに本丸広場に出る。入口にとってつけたような黒い門柱があることと、高台に円形の空地だということ以外は城を思わせるものはない。説明板を読んでみたら、はっきりしないけどこのあたりを支配していた上杉家の関係者が12世紀ごろに築城したのではないかということ。1489年に北条早雲に攻め落とされていったん廃城になったが、1524年に北条氏が再興し家臣が城代になった。その北条氏も滅び、城代は徳川家の家臣となって近くの場所に移り、それ以降放置されたそうだ。

坂をおりるとさっき入ったところのすぐ目の前に出た。第三京浜の下をくぐって向こう側にでると、また通れるのかどうかわからない急な坂道。その前では老女が掃除をしながらいぶかしげな目でこちらをみている。またしても不安になったので、訊いてみたら、下に降りられるとのこと。安心して進んだものの、坂はほんとうに急で汗が出てくる。

民家の庭先をかすめて外にでた。鶴見川を渡るつもりが、どんどん川から離れてしまう。気がついたときにはもう遅かった。工場の煤煙と野焼きの煙が入りまじったような街を抜ける。泉谷寺の交差点から泉谷寺坂という坂を登り、泉谷寺という寺の門前を通り過ぎて、ただひたすらまっすぐ。横浜駅の方に向かう道だった。

「道路碑」という名前の交差点とバス停があった。その名の通り確かに碑があるのだけど、字が読み取れずわからない。この道ができた由来が書いてあるのだろうか。謎だ。

夕暮れの淡い光の中に身を折るようにしゃがみこんだ人の姿が浮かび上がった。そばにはスクーターがたてかけられ、頭にはヘルメットをかぶっている。頭はうつむいて何も見ていないようにみえる。その先にはたむけれた花とかごの中のハロウィンのかぼちゃやらお菓子やら。たぶん幼い子供がこの場所で事故に遭ったのだろう。そのうなだれている人が親なのか加害者なのかわからないけど、植物のようにその場所にしばりつけられて動けないようだった。少なくとも夕闇にすべてが溶け込むまでは。

アップダウンが多くて、車がひっきりなしに通る道を歩くのは楽しみというよりは苦行に近い。環状二号を越えたところにある三枚町のバス停で無意味な苦行を終わらせる。7.8kmだった。[地図]

バスに乗って横浜駅。せっかくなのでおととい開店したばかりのヨドバシカメラをのぞいてみる。もっと混んでいるかと思ったが、スムーズにエスカレータで移動ができる程度だった。やる時間がないがPS/2のゲーム「ワンダと巨像」を買う。名作ICOのスタッフが作ったらしい。ついでにUSBハブを買う。安いのにデザインがいろいろあって選ぶのが楽しい。

地下2階はレストラン街。ちゃぶ屋というラーメン屋に入ることにした。揚げニンニクカラカララーメン850円の食券を買う。こってり味のスープにかたくて細い麺。量は若干少なめだ。開店サービスかもしれないが、替え玉無料になっていたのでお願いしてしまった。寒い日はこういうのが食べたくなる。

そごう7階の無印良品でジャケットを買う。ジャケットというよりはもうコートという季節だが。

特に何か買いにいったわけではないのだが、タワーレコードでプーランクの、ピアノ、室内楽作品の全集5枚組(ピアノ:パスカル・ロジェ)が4590円で売られていたので、買ってしまった。そのうち2枚はまったく同じものを別途持っていて、1枚はほかの演奏家の同じ選曲のディスクを持っているのだが、残り2枚を単独で入手できる見込みはおそらくないし、あったとしても同じくらいの値段になるだろう。

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