丑寅の辰巳

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この国の人口が減少に転じたというニュースとはうらはらに、どこもかしこも人であふれかえっていた。

自宅から丑寅の方角にあたる有楽町線辰巳駅からスタート。駅の階段をあがると目の前に橋がある。折れ曲がりながら対岸に渡ると、真新しいビルが立ち並ぶ東雲の街。その真新しさに触発されてこちらまでうきうきしてくる。

有明方向に歩いていくと左手には目下造成中の広大な区域が広がっている。建物のまわりにはならされた土が広がり、道路の敷石と街灯が場違いに置かれている。見捨てられて朽ちていっている街のようにも見えた。

有明コロシアムのまわりにはマリア・シャラポワの文字が躍っている。その文字に躍らされてあまりテニスに縁がなさそうな男性たちが連れだって中に入っていた。ぼくは耳元で流れる音楽と、歩くリズムと降り注ぐ陽光がちょうどいい感じにシンクロして、マリア・シャラポワとはまったく無関係のウォーカーズハイをひととき味わう。

のぞみ橋を渡ってお台場海浜公園。浜辺の砂に足をとられながらカモメたちを横目に歩いてゆく。飛んでいるときのカメモは機能的な曲線を描いて弾丸のように優雅だ。カモメにエサをやっているひとがいて、ヒッチコックの鳥状態になっていた。

レインボーブリッジを歩いて渡る。冬場は6時まで開いていて、5時半まで入場できるそうだ。コースは北と南二つある。都心のビルがよく見える北を選んだのだが、途中でコースを移れる通路があったので気まぐれに南にいってみた。次の通路で、また北に戻ろうと思っていたのだが、それ以降はないようだった。考えてみれば、お台場に近いあたりは南を選んで、芝浦側は北を歩くのが、最上のコースのような気がする。あの通路はそのためにあるのだろう。ぼくは最低のコースを実現するために通路を使ってしまったことになる。まあ、通好みのそれほど悪くない風景だが。

芝浦で再び地上に降りる。首都高の下をくぐって七色に塗られた橋を渡ると、両側に建設中の高層ビルが出迎えてくれた。今芝浦アイランドという名前で再開発中の地区だ。こうしてみるととてもこじんまりした狭い地域だ。そこから田町駅まではすぐそこ。交通至便なのは間違いない。

寒さのせいか鼻水がでてきたので、コンビニで鼻セレブというティッシュを買った。鼻だけはセレブなみだ。二人の女性店員のうち若い方がサンタの赤い服装を着せられて、もう一人は普通の制服で、なんかその並びに違和感を感じてしまった。

ウォーカーズハイの余韻が少し残っていたので、麻布十番そして元麻布方面へ。結局は六本木ヒルズに引き寄せられてしまう。ここも人また人。ライトアップされた夜景を撮ろうと思い思いに立ちどまっている。散歩は六本木までで11.9km。[地図]

青山ブックセンターではお目当ての本がなかったので、大江戸線で新宿に出る。

地下の京王モールと直角な通りにいくつか新しい店ができていた。そこには食べ物やらしい食べ物やはなかったので、上にあがり、結局十味やというラーメン屋に入った。チャーシュー味噌チャーシュー麺の食券を買う。880円。とろとろのチャーシューはおいしい。半熟卵もついてくる。十味というのは、カウンターにおかれた壺に入った唐辛子のことらしい。ほんとうに十味入っているかどうかわからないが、スープに入れるとパンチがきいておいしくなる。

ヨドバシで無線LANのアダプターを買う。とても安くなっていた。地下から東口側に出てまずジュンク堂。加藤典洋『敗戦後論』と、竹内薫『物質をめぐる冒険』を買う。お目当ての本は紀伊国屋で入手。Tom Stafford, Matt Webb『MIND HACKS』だ。人間の脳と心に関する裏技が収められた本だ。

それにしても人が多い。みんなどこからきてどこに帰るのだろう。

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