今年最後に横浜がみたくなった。 風は冷たいが、日射しは暖かだ。あるいは、日射しは暖かだが、風は冷たい。ニュアンスは異なるが、どちらも同じことだ。 体育館か倉庫みたいな西区役所を通り過ぎて、野毛山をめざす。横浜の地形は複雑で、いまだに把握できていなくて、文字通りランドマークタワー...
中央線の中で対面に座っていた初老の男性が読んでいるのは『草は歌っている』という本だった。そのタイトルから春の草原の風景を思い浮かべるが、電車の外は冷たい冬だ。だが、さっきまでぱらついていた気まぐれな雨はあがり、それなりに力強い日射しが雨上がりの街をきらきらと照らし出していた。 ...
今日のメインイベントは夕刻観る予定の芝居なので、そのための助走という感覚で、池袋から歩き始めた。西池袋から目白にかけての住宅地の雰囲気は悪くない。 山手線と山手通りに挟まれた地域を南へ。どちらの境界にも触れないようバランスをとって進んでゆく。 夕闇の青い粒子漂う頃新宿にたどり着...
武蔵小金井駅は下り線だけ高架ホームが使用開始になっていて、そこから見おろす風景は見知らぬ街のようだった。いや、北口の風景に見覚えがないのは、位置関係のせいではなく、実際見ていないからだということに気がついて、そちらから歩き始めることにした。今高架ホームから北口に出るには、いった...
予報は雨で、それが間違いでないことを証明するために、ときおり雨が落ちてきた。そんな神経戦的なゲームにつきあうのがばからしくなって、散歩はやめることにした。 恵比寿ガーデンプレイスの広場では歓喜の歌の合唱。澄んだ歌声に聴き入っている人々は、気がかりはこの天気だけという顔をしていた...
京浜東北線の中で隣に座った男は、全国放送のディスクジョッキーのように堂々と、たちの悪そうな咳をブロードキャストしていた。 海岸沿いの低地にある根岸駅前は早々とおりてきた影に包まれていたけど、正面にたちはだかる丘の上にはまだ昼の光が残っているようだった。そこに至る道をみつけられな...
結局、秋葉原から新宿まで、まるで近所のコンビニにいくように何の冒険心も好奇心もなく歩き通してしまった。ただひとつ心を動かされたのは母校のすぐそばにある路地の風景で、ぼくはその路地の存在ごと記憶から消し去っていた。路傍の建物のドアや窓格子の意匠が心を強く揺さぶるのだけど、そんなも...
二日分まとめての濃縮した散歩をするために、隅田川橋廻りという企画をたてた。やり方は簡単で、隅田川の橋を順番に左右に渡っていくだけだ。実は同じようなことを大昔に試したことがあって、そのときは上流の白鬚橋から下流に進んだと記憶している。今回は逆に最下流の勝鬨橋から上流に向けて進むこ...
今日という日はアイスクリームのようにどんどん溶けていって、残されているのは、老いた熊の後ろ姿のような塊だけになっていた。 昨日みた映画『転々』で主人公たちの散歩がはじまる場所井の頭公園にいってみた。赤や黄色に染まった葉が夕暮れの寂しさの中に彩りをそえていた。映画の気分が味わいた...
横浜駅のひとつ手前東神奈川。北側の東横線の向こう側は入り組んだ起伏の住宅地になっていて、長く続く坂道をのぼっていると、汗が噴き出てきた。今日は暖かな日なのだ。 いったん下界におりて松本町の商店街を通り抜け、再び高台の住宅地。名門横浜翠嵐高校の前ではそこの生徒かどうかはわからない...
一度くらいは明大前駅直結のショッピングモールフレンテをのぞいてみようと思った。とても狭いフロアで1階と2階しかないのでちょっとのぞいただけですべてがわかってしまった。明大前は一応学生街なのに、いまひとつ活気がない。 ちょっとでも活気が味わいたくて隣の下高井戸に向かうが、どうもピ...
携帯をとりにもどって貴重な13分間を無駄にしたりしたが、予定通り西武拝島線の武蔵砂川に向かう。途中乗り合わせた喪服姿の家族連れは子供の数が多くてちょこまか動いているので何度数えても数が一致しなかった。母親はすらりとして清楚な美人で、そんなにたくさんの子供を産んだようには見えなかっ...
急激に寒さが訪れたせいか持病が疼きはじめ、それにひきずられるように精神状態もどん底だった。 沈殿した生気をすくいあげてどうにか外出に成功し、京成線の青砥にたどりついた。東京の東側はあまり歩かないが、その中でも青砥は自分でも意外に思うほど来たことがなかった。アクセス的には、上野あ...
久しぶりに太陽の光をあびて歩ける日だ。少しでもその光を有効に利用するため、近場の浜松町から歩き始める。竹芝できらきら光る水面をながめてから、都心方向に旋回して警官が団子状態のアメリカ大使館、外苑東通りに出ると、見知らぬおじさんにレフ板を向けたくさんのスタッフでスティル写真の撮影...
11月のこの時期にしては寒い日だが、12月なら穏やかな日といわれるのだろう。どうせなら12月の気分で歩こう。街のイルミネーションは早々と冬の到来を告げている。 一時的に晴れ間がのぞいたものの、すぐに雲の向こうの自室に引きこもってしまい、またしても暗い空の下歩くことになる。歩き始...
曇りという予報だったが、空は昨日よりも暗いくらいで、街は閉店間際という雰囲気をただよわせていた。 阿佐ヶ谷から住宅地のさみしい道を通り抜けている間ずっと蛍の光が流れているような心持ちで、青梅街道に合流したところで、とうとうお帰りくださいの実力行使、雨が落ちてきた。 杉並区桃井三...
ちょっと目を離している間に、カサの花が開いて、またすぐに閉じた。はっきりしない天気だ。いっそ大雨が降ってくれた方がありがたい。それならそれなりにすることもあるのだ。今にも降り出しそうな暗い空の下、疑心暗鬼になりながらも、田町から歩き始めた。 道の入口のところに確かに「行き止まり...
浅い夢の中で、アメリカ南部のニューオーリンズは、フランスの、ジャンヌ・ダルクか解放したオルレアンの街にちなんでいるということを発見した。オーリンズとオルレアンのスペルが同じことに着目したのだ。調べてみたらほんとうにそうだったのだけど、これはやはりどこかで見たり読んだりしたことを...
秋の陽光が降り注いでいたが、ときおり強い風が吹いていろいろなものをゆらゆら揺らしていた。夜になると冷え込むかなと思ったが、幸い風は早々と凪いでくれた。 小田急線の喜多見。10/28に放送された文化系トークラジオlifeのPodcastをききながら歩く。テーマは「しょうらいのゆめ...
台風が通り過ぎて、ひとときのインディアン・サマー。久しぶりの太陽が、くっきりと光と影を分かつ。 目白台は文京区だが、ひらがなでめじろ台と記すと、一挙に八王子市内までワープする。京王線の駅前にコロニーのようにへばりついた商店街を吹き散らすとのっぺりと一様な住宅街が広がる。北のJR...
近くを通過する台風のせいで雨、雨、雨だ。中途半端な悪天候よりこういう方がいっそ気持ちいい。 まずは恵比寿の写真美術館でやっている東松照明展。「とうまつしょうめい」と読む。『Tokyo曼荼羅』というタイトルだが、東京近郊に限らず、奈良、北海道、広島、青森等各地で撮られた写真が展示さ...
久しぶりに生まれ育った家の近くを訪れてみることにした。 何度となく渡った橋はちょうど架け替え工事中で、少しずれた位置に仮橋がかかっていた。早速の変化の洗礼だ。その先の商店街もドラスティックに変わっているだろうと思ったが、ところどころ義歯のようにチェーン店がはさまっているものの、...
自転車で追い抜いていった女性が携帯で、監視カメラを買いたいけど買いに行くひまがないといっていた。 もう夕暮れがせまっている、吉祥寺で芝居をみる、といったいくつかの条件が力学的に均衡する場所を計算したら京王多摩川になった。そこから一路北に進み、調布市街、調布ヶ丘、そして深大寺。秋...
親戚が住んでいて昔何度もいった場所を久しぶりに訪れてみる。古い記憶との戯れだ。 開業したばかりで新鮮さと作り物めいたところが同居していたいずみ野駅前は、いまや作り物感だけが残っていた。そこから松陽高校前までのバス通りはぼんやりと記憶に残っていて、その記憶のかすれ具合と街のかすれ...
さっきまで穏やかな日差しがさしていたと思ったのに、いつの間にか暗い雲がたちこめていた。なんだか風が肌寒く、先週はあたりに満遍なくただよっていたキンモクセイの香りも盛りをすぎている。 御徒町から湯島の切り通しをぬけて本郷へ。内田百閒の『東京日記』ではまっすぐに通り抜けるトンネルが...
雨は降っていると思えば降ってなくて、降ってないと思えば降っている。そんなはっきりしない天気の中おずおずと北千住までいってみれば、出迎えたのは雨だった。しかし、何かの間違いでしたといわんばかりに雨はあっけなくあがり、それ以降は一度も悩まされずにすんだのだった。 久しぶりにいってみ...
床屋で耳のマッサージをしてもらったら、気持ちよくて宙に浮いているような気分になった。そのぼくを地上につなぎとめたのは、携帯電話を家に忘れてきたことだ。モバイルSuicaなので、自動的に定期券も忘れてきたことになる。昨日に続いてまた往復25分かけてとってくるのもなんなので、今日は...
門の形はしてないがデジカメのメモリーカードは鬼門になっていて、今日は駅から取りに戻って25分きっかりロスした。ぼくの時間のバランスシートは完全に赤字だ。 とりあえず有楽町で下車する。いやなことばかり時流にのって、風邪の症状のデパートまでいかない個人商店くらいになっているので、風...
浅い眠りの中で絶えず激しい雨の音が聞こえていたが、それは夢の中でなく外側で降っているのだった。散歩は無理そうだったが、いきたいところはあった。それなのにぐずぐずしてしまった最たる理由は今読んでいる本が見つからなかったことで、昨日どこかに置き忘れたという結論に達して、ようやく外出...
濡れるほどでもなく、雨はちょっと不快感をあたえるくらいの強度を保ちながら降り続いていた。 東京都町田市、横浜市青葉区、川崎市麻生区の境界が入り乱れるあたり、青葉区からみると鶏の鶏冠、当の麻生区からみると産み落としたばかりの卵のような位置に、麻生区の飛び地岡上がある。最寄駅の小田...
暑さのセンサーが気温より湿度が敏感にセットされているようなので、今にも雨が降り出しそうなこんな日には汗がにじみだしてくる。渋谷から歩き始めたとたん、実際雨は落ちてきて、身から出た錆かと思ったが、因果関係が逆で、雨に濡れるから錆ができるのだ。しかし、結局は日頃の行いのよさが功を奏...
なかなかチケットがとれないとある芝居の優先予約に申し込もうと、大事にしまいこんでいたパンフレットをとりだしたら、封筒に書いてある会員番号が必要だと書いてあった。大事な中身をキープして封筒なんてその場で捨ててしまったような気がする。一応あたりをひっくり返してみたが、結局封筒はみつ...
陽光の加減からみると、たぶん夏は去ったのだが、その不快さだけを抽出してフリーズドライ製法で濃縮したような感じで、暑さが続いている。 もたもたしていたせいで歩き始めたのは4時だった。この季節、もう昼の光は長く残されていない。石神井公園から芝居をみる三鷹を目指す。まっすぐ歩けばどう...
暑くて意味のあることは考えられないし、意味のないことはなおさら考えられない。 散歩といいながら、妙な目的意識からいつも直線的なコースを描いてしまっていて、周囲の街並みも単調になりがちということもあり、一度円形のコースを試したことがあったが、今日はさらに一歩進んでスパイラルを描い...
昼メロのように昨日の設定をすべて引き継いで、今日もまた厳しい残暑だ。ただし、メロはどこにもない。というかメロが何かを知らない。 久しぶりの町田。何だか沖縄関係の祭りをやっていて、黄や青など鮮やかな衣装に身を包んだ一団が南国のリズムに合わせて舞踊を舞っていた。写真に撮ってもおもし...
真夏を思えばこんな残暑、なんてことないとも思うのだが、真夏なんて思い出したくもないので、やはりこたえるのだった。そのせいというわけではないが、ヘッドフォンだけもってきて、肝心のiPodを忘れてしまった。今日は音楽なしで過ごさなくてはいけない。 残暑のせいで海が見たくなった。日本...
気温や湿度などのパラメータはさておいても、まだ夏の最悪の部分が居残っていると感じさせる一日だった。今期最大に摂取した水分はむなしく汗に変わり、疲労だけが残った。 荒川を越えて久しぶりの埼玉。川口駅の西口はにぎやかで猥雑な東口とは対照的にコンコースから静かで人気のない公園に直結し...
金をせびりにやってきた古い落ちぶれた知人のように、また夏がやってきた。無視を決め込もうと思っていたが、いつの間にか体中ぐっしょりと汗ばんでいて、結局あいまいな苦い微笑みを返すことになった。 この前電車の中から見た坂の風情が気に入ったので、日野駅前からその長くてなだらかな坂を上り...
涼しいが昨日より暗くて湿度が高い。 東村山から歩き始めて武蔵大和を過ぎたあたりから、どうしようもなく退屈な街並みに取り囲まれた。テレビの放送終了後のサンドストームの方がまだおもしろいくらいだった。人気のない団地をぬけたところには商店街があったが、その活気のなさは退屈さを余計に深...
暴虐的な圧政を敷いていた夏が無血革命で倒されて、穏やかな秋の統治がはじまった。 ドヤ街山谷が、日雇い労働者が減少して、外国人旅行者やコミケ参加者向けの宿泊施設が増えつつあるという話をきいたので、久しぶりに訪れてみることにした。南千住の南側台東区日本堤あたりだ。 以前革命前夜のよ...
昨日バスの中で耳にした駒沢陸橋に実際に行ってみる。これまで何度か通っているし、そこに特に何かがあるというわけでもないが。 代官山を目指そうかと思ったり、三軒茶屋にしようかと思ったり、下北沢はどうだろうと思ったりしながら、最終的には渋谷にたどり着いた。暑いことは暑いがしたたる汗の...
寝そびれしまったのでフラフラだったが、しばらくぶりの府中に向かう。乗り込んだ準特急の電車は飛田給に臨時停車で、ホームから味の素スタジアムに向かう人波をみて、隣に座っていた女性たちが、サッカーのユニフォームを着た人がひとりもいないのでサッカーの試合ではないだろうといっていた。帰っ...
カムバックしたのはお気に入りのガムなんかじゃなく、暑さの方で、しかもおしゃれになってたりは全然しなくて、相変わらず気の利かない猪突猛進ぶりだ。 ヘッドフォンの延長ケーブルを忘れてきてしまったので、急遽有楽町で調達してから、新橋に戻って歩き始める。 新橋と有楽町の間、JRの高架下...
文字通り殺人的な暑さも宙ぶらりんのカンマを打たれて少なくとも今日はお休み。 青梅線の東中神駅前の茶虎の猫に熱烈歓迎された。しっぽをたてながら脚に身体をすりつけてくる。写真を撮ろうと思って離れても、すぐ寄ってくるのでなかなかシャッターを押せない。警戒心が強いのもだめだが、こうまで...
暑さの盛りを避けて、歩き始めたのは16時40分。案外涼やかな風が吹いていて、特に日陰は快適といってもいいくらいだった。 さて、今日の散歩はある意味記念すべきもので、1997年に今の形で記録をつけはじめてからちょうど1000回目の散歩になる。まあ、それ以前もたくさん歩いているし、...
駅までの道のりの半分もいかないあたりで、今日は散歩は無理でしょうという勧告が出されたので、まず床屋に向かうことにした。世間ではお盆休みが始まっているはずなので、少しはすいているだろうと思ったが、あにはからんや、いつも以上に混雑していて、結局床屋を出たのは5時だった。 ぼくは我な...
港を吹き渡る風があれば少しはましだろうと思って横浜方面へ向かう。別に散歩しなくてもいいと思っていたが、山手で降りたので、結局歩く以外することがなくなってしまった。 風は急な上り坂の前ではあまり助けにならなくて、どうしようもなく汗がしたたる。日本で初めてテニスが行われたという山手...
うだるような暑さ。下北沢で芝居をみるので、つかず離れずの成城学園前から歩き始める。祖師ヶ谷大蔵に続く商店街の入口のところで空を見上げるとウルトラマンが飛んでいた。商店街の名前がウルトラマン商店街になっている。ウルトラマンシリーズをうみだした円谷プロが近くにあるのだ。 汗とともに...
しばらく前から東京の東側には何かもの寂しさを感じて、あまり歩こうという気にならなかったのだけど、最近また足が向くようになりつつある。仕事の帰りにちょっと歩いてみて、夜の側からみてみると、とぎれとぎれに灯るネオンやら街灯やらの親しみが、いい感じに解毒剤になってくれたのだ。 上野か...
まずは参院選の期日前投票。できるだけユニークな人(といっても某唯一神候補ではなく)に投票することにした。期日前投票の理由に相変わらず当日の投票所が遠くて不便だからという選択肢がないので、嘘を書かなくてはいけないのがいやだ。 中央線の豊田から歩き始める。湿気が巨大な獣のようにあた...
活気と魚のにおいにあふれるアメ横を通り抜けて、上野、入谷と下町コースをたどる。久しぶりの太陽はじりじりと悪意を放出して、あたりを禍々しい夏の予感で包んでいた。 吉原の客引き街は意識的に避け、浅草中心部を無意識的に避けた結果、斥力均衡の道筋を通って言問橋。「名にしおわば いざ事問...
このところ一日がほとんど終わりかけた時間にでかけていたので、近場ばかり散歩していた。今日は久しぶりに未知の土地に足を伸ばす。 橋本駅で相模線の電車が乗客を乗せたままドアを全部閉め切って停車していた。まだ発車しそうな様子はないのに不思議だなと思っていたら、乗り込む人がドア脇のボタ...
台風は過ぎ去ったのに、雲はずうずうしく居残っている。薄暗さだけは一人前だが、まとまった雨を降らせるほどの度胸のないいずれ軟弱な雲たちだ。 信濃町から北上。ほんとうは『東京日記』で内田百閒が、すごい速さで流れ去る色とりどりの筋を目撃した道を通ろうと思っていたが、一本西にずれてしま...
台風が近づいているのか遠ざかっているのかよくわからないまま外に出てみた。駅の改札を通り抜ける人々の足取りに慌ただしさを感じたが、天候の方は風が少し強いくらいで、雨のふる気配はほとんどなかった。 荻窪から井の頭線沿いに出て吉祥寺、三鷹方向に歩こうと思っていたが、例によって、進路を...
夏は今日は梅雨の手番だと思いこみ、梅雨は夏の手番だと思いこんでいたにちがいない。夏でも梅雨でもないさわやかな風の吹く一日だった。 宮下公園で青いビニールシートでコーティングした家に住むおじさんは、クッションのきいた椅子に座って、雑誌を読みながらコーヒーをすすり、優雅でけだるい午...
鶯谷から、朝顔市の人の流れについていって、坂を下りる。すぐに駅前のラブホテル街に迷い込んだ。ラブホテルの中と外の間には結界があって、そこを通り抜けるのは決心やら勢いやらが必要という、思いこみがあったが、そこでは何組ものカップルが、コンビニのように軽々と、ホテルに出入りしていた。...
ガス爆発の現場は東急本店のほんとうにすぐ裏手にあるのだった。警備員が巡回していて、警官も詰めている。物見遊山で近づくのは悪趣味だが、あえて悪趣味をしてみるのは、べたな悪趣味よりはましなような気もするものの、外からみればやはりそれは悪趣味に違いないので、遠くから雰囲気だけ味わうこ...
東京テレポートからお台場に背を向けて有明の方に歩き出す。犬を散歩させている人が何組かいる。中でも、まだ子犬と思われる同じくらいの大きさの4匹の小型犬が目をひいた。飼い主の女性がときおり小さなボールを前方になげるが反応して拾いにいくのは先頭の一匹だけ。それぞれ悠然とマイペースで歩...
東十条から歩き始めたのとほぼ同時に雨が落ちてきた。今この文章を書いているぼくは、その雨がやむことなくずっと降り続いたということを知っている。そのときそれを知っていればたぶん歩くのをやめたと思うが、でもこれからの季節雨をそう目の敵にしなくてもいいと思うのだ。かんかん照りの蒸し暑さ...
久しぶりに千歳烏山から歩き始めようと思ったがそれなら隣の芦花公園の方が新鮮だと思い、結局は電車のダイアの都合で千歳烏山から歩き始めた。 スズメが緑色で細長いジューシーなものを加えながらホッピングしている。たぶん蝶か蛾の幼虫だろう。少しだけおいしそうだと思ってしまった。その先では...
二日続きの梅雨の晴れ間というより、梅雨はまだはじまっていないと考えた方がよさそうだ。池袋から歩き始めた。昨日より湿度は高いが風が気持ちいい。 駅前の雑踏を抜け区役所前を通り過ぎる。写真を撮るため、都電の踏切の前で電車がやってくるのを待っていたら、同じようにカメラを構えた男性がや...
梅雨入りしたはずなのに、抜けるような青空が広がっていた。あまりの空の青さに携帯電話とデジカメのメモリーカードをダブルで忘れてしまったが、1ブロックいや2ブロック進んだところで気がついて引き返したのは、まだ幸運だった。3ブロックくらいかもしれないが。 小田急の狛江から歩き始める。...
雨があがるのを待っていた。天候と反比例するように体調が悪くなった。 大井町からゼームス坂をくだる。途中の小公園に小さな子猫3匹と母猫がいた。たまたま一カ所に集まっているところを写真に撮ろうとしたが、警戒心が強くて、一匹一匹ばらばらに茂みの中に隠れてしまった。 ゲートシティ大崎が...
遠くから祭り囃子が聞こえたが、それとはまったく無関係に光が丘から歩き始めた。厚い雲がたれこめてはいたが、青空のスペースもかすかに確保されていて、ときおり寝ぼけた日射しがさしこんできた。 大泉学園方面に向かうという焦点のぼやけた目的だけで歩いていたせいだろうか、ほとんど写真が撮れ...
電車に乗った瞬間にデジカメのメモリーカードを忘れたことに気がついた。ぼくの決断を待つかのように電車はなかなか発車しなかったので、思い切って取りに帰ることにした。なんだかんだで最初乗るはずだった電車の40分くらいあとの電車に乗って横浜方面へ。メモリーカードがらみではあたら貴重なリ...
6月だ。初夏の「初」とかearly summerの"early"とかの形容詞がとれて、梅雨が始まるまでのわずかの間、一年中で一番まばゆい光が降り注ぐ季節だ。今年初めて半袖の服ででかけた。 西調布の駅前でセスナ機が低空をかすめ飛んで出迎えてくれた。そのセスナが出発した調布飛行場か...
国分寺駅近く、西武国分寺線と日立中央研究所にはさまれた遊歩道。濃い草いきれが鼻孔をつく。今日はとても気分がいい。ときおり子供のいたずらのように落ちてくる雨粒も微笑ましい。 府中街道から玉川上水を渡って小平中央公園。グラウンドで行われていたサッカーの試合は真剣勝負で中高年のプレー...
体調と気分が負のフィードバックをかけあってずぶずぶと沈んでいきそうだったが、むしろこういうときこそ散歩なのだった。なけなしの浮力をかき集めて秋葉原に向かう。注意力といっしょにデジカメのメモリーカードを置き忘れてきたことに気がつき、まだ電車の中で気がついただけえらい、と自分をほめ...
溝の口駅前のコンコースは初夏の太陽に照らされてぎらぎら輝いていた。JRは武蔵溝ノ口で「ノ」がカタカナだけど、東急はひらがなだった。 道はいくつも開けているが、そのうちひとつを選ばなくてはいけない。だが、今日のような気候ならどれを選んでもとびきりの心地よさが保証済みだ。イトーヨー...
床屋にいったら40分待ちだといわれたので先に散歩することにした。浜松町から歩き始める。猫が車道の端に寝そべったまま動こうとしない。土曜で車の通りがほとんどないとはいえ危ないので、通りかかった女性たちが移動させようとするが、近づいても悠然と逃げるそぶりを見せないし、抱きかかえるの...
「下町」という言葉の一部の使われ方には物事の本質から目を背けているようなところがあって、それをいうなら「場末」だろうと突っ込みたくなることが間々ある。「下町」は「場末」の中で一瞬かいま見える夢のようなものなのかもしれない。 そんな夢を見るために川向こうの両国から歩き始める。さっ...
久しぶりに西へ西へ西へ。 架空の小説や漫画ではよくみかける山田駅だが、首都圏にもちゃんと実在するのだった。八王子市内の京王線の駅だ。名前の通り山の中に田んぼという感じでもなくて、駅前にはそれなりに大きな道路が通っていて、それをのぼってゆくと富士森公園というやはりそれなりに大きな...
雨の連休最終日。ちっぽけな水滴があたりに舞っているだけで、世界はとても小さくなる。いや、小さくなるのはぼくらの方で、いろんな場所がとてつもなく遠くに感じてしまうのだ。 ほとんど世界の果てに近い恵比寿にある写真美術館へ。マグナム・フォトという報道写真家のグループに属する人たち(ロ...
財布を忘れて取りに戻ったら、今度は通勤用の靴をはいて出てしまった。ちょっと歩きづらい。 ディズニーランドは時間的、精神的、そして金銭的にゆとりがあるときにいくところで、そうじゃないときはみんな一つ手前の葛西臨海公園でおりるのだろう。今日もとてもにぎわっていた。子供の数も多くて、...
風だけを身にまとって出かけたくなるような日だが、たっぷんたっぷんのおなかだけは隠さなくてはいけない。 大森から臨海部へ。道の選択をまちがえて、首都高の高架下、車の騒音がかまびすしい通りを長いこと歩かされた。道をそれることに成功して小公園で休憩した後、橋を渡って京浜運河東岸の八潮...
SSさんの母上の絵が国展に入選されたということなので、みにいきませんかと誘われた。ぼくのほうからするとただで国立新美術館に入場できるというありがたい申し出だ。 1階から3階にわかれた会場の壁は大きなサイズの絵画で埋め尽くされている。こっちを見ても絵あっちを見ても絵だ。入選作だけ...
宛先違いで届いた贈り物のような気持ちいい日。長い間身体にまとわりついていた茶色い霧のような重みから今日ばかりは解放されて、しばらくぶりに軽やかに歩けそうだった。「重要なのは病からいえることではなく、病みつつ生きることだ」なんてカミュの言葉で気取りもしたが、やはりこの軽やかさはな...
世田谷区が鉤爪のように大田区と目黒区の方にくいこんでいるあたりに奥沢はある。なんか世田谷区といわれてもぴんとこなくて、街並みもどこか大田区っぽい。 南下していくと、やがてほんとうの大田区に入り、前方に御嶽山駅前のジャスコが城のようにそびえている。そこから東に方向転換したつもりが...
イヤフォンをオフィスに忘れてしまったのでとりにいった。ごろごろとうなるような音をきいて、窓から外をのぞくと、さっきから秒読みを開始していた空から雨が激しく落ちてきていた。濡れなかったのはもっけの幸いだ。この雨ではどうしようもないので、そのまま雨宿りをすることにする。 人気のない...
電車の中で、幼稚園にあがったかどうかくらいの女の子が母親に向けてたまごっちの話をしていた。死んだたまごっちのおはかである操作をすると「くよう」ができるそうだ。女の子の口からすらすらと出てきた「くよう」という言葉にちょっとした驚きを感じた。母親が意味がわかるかと尋ねたら知らないと...
大きな争点はないので興味薄だったが、一応区長、区議選の期日前投票をしておく。誰になっても変わらないなんてことをもっともらしくいう暇があれば、まだ投票にいったほうがましだろう。 4月に入ってから西の郊外ばかり歩いていたので、今日は秋葉原から都心を歩くことにする。秋葉原というとなん...
強い日射しと湿った空気、だが風は冷たい。送りバントとフルスウィングのサインが同時に出ているようで、まごついてしまう。 相鉄線の鶴ヶ峰から農地と山林まじりの住宅地を抜けてゆく。もともとは「横浜」を歩こうと思っていたのだが、「横浜」はどこにも見あたらなかった。代わりにあちこちに老人...
久しぶりに晴れ渡った週末。気温がぐんぐん上がり、歩いていると汗がにじみ出てくる。 西武ドームの銀色に輝く屋根の下では、フリーマーケットがおこなわれている。整然と管理されている様子がまるで避難所のようだった。 村山貯水池に向かうつもりが逆方向に進んでしまった。Uターンしてドーム前...
昨日忘れた散歩コースを確認するミッションをこなしつつ、今日の分の散歩をする。どうしても似たような地域を歩くことになり、新鮮味はないし、歩き始めた時間も遅かったので、写真もろくに撮れなかった。 散歩のコースは論理的に忘れているものの、途中見たイメージは鮮明に覚えている。赤と黄色と...
鷺ノ宮から歩き始める。西武新宿線の急行停車駅とは思えないほどのローカルな駅前。その周りにものどかな住宅地が広がっている。どこまでも歩いてもどこにもたどり着かないような気がしてくる。 ポッドキャストはとても楽しい散歩のお供だが、ひとつ困ったことがあって、ポッドキャストを聴いている...
太陽は雲の陰でかなり長い間恥じ入っていたが、やがて誰からも忘れ去られた。それでも汗ばむような陽気の日。三鷹から中央線の両側を躁病のハエのようにふらふらと西に向かった。 やけに猫の多い駐車場。へたすると車より猫の方が多いかも知れない。車座になって地面にねそべっていたが、ぼくが近づ...
フィリップ・マーロウを気取って「知事が嫌われてない都道府県も世間にはあるんだよ、シンタロー。しかしそういう場所では、あんたは知事になれない」とつぶやきながら都知事選の期日前投票をすませる。 理髪店の大きな鏡に映るぼくの顔はぼくの体調に比べて元気そうだった。各種マッサージでその差...
ちょうど雨があがった頃家を飛び出す。 九品仏で下車してカメラを取り出そうとした瞬間にメモリーカードを忘れたことに気がついた。半分以上は写真を撮りにきたつもりなので、これでは話にならない。自由が丘で入手しようと電気店をさがすが、見つかったのはディスカウントショップではなくいわゆる...