ちょっと目を離している間に、カサの花が開いて、またすぐに閉じた。はっきりしない天気だ。いっそ大雨が降ってくれた方がありがたい。それならそれなりにすることもあるのだ。今にも降り出しそうな暗い空の下、疑心暗鬼になりながらも、田町から歩き始めた。
道の入口のところに確かに「行き止まり」と書いてあったのだが、広い道だし人や車の通りもそれなりにあるので平気だろうと思っていたら、マンションの敷地を抜けていった先にほんとうに行き止まりが待ちかまえていて、肩をたたかれた。
コンビニで今日観る芝居のチケットを引き替えている間に雨が降ってきた。弱々しい雨だったが、カメラをもっているので、臆病な老人のようにカサをさす。今更中断してもむなしさだけが残るので、湿気を含んだ重い衣服とはずまない気持ちをまとい、何度も歩いて食傷気味のコースを慣性力だけで前へ進んだ。
にぎやかな麻布十番、六本木を通り抜けて、今日の目的地赤坂氷川神社へ。十年前に放映されていたドラマ『恋のためらい』で、鈴木杏樹演じる弘子が生き別れていた父親に再会するシーンが、そこで撮影されたのではないかと、突然天啓のようにひらめいて、それを確かめようと思っていたのだ。正面のまっすぐな階段の手前で右手にそれると、ドラマで鈴木杏樹がかけのぼったのと同じ曲がり角がある階段があり、境内に上りつめると向こう側にちらりと画面に映っていたブランコもみえた。ブランコの色はちがっていたが、十年もたてば塗り替えているだろう。たぶんここだ。そぼふる雨の中、ドラマと違ってそこにはぼくを待つ人は誰もいなかったが、なんだか懐かしい気持ちがして、あたりをくるくる見回した。
赤坂見附で散歩を終えて、新宿三丁目。紀伊国屋新宿本店5階で開催されている「文化系書店Life堂 vol.2」をのぞきがてら、発売されたばかりのLife本を買う。同じ買うならここで買おうと思っていたのだ。
定番のツナサラダうどんで食事をすませてから、芝居をみるため下北沢へ。雨はあがっていた。
芝居が終わって外に出たら、本降りになっていたが、地元の駅ではやんでいた。雨に翻弄された一日だった。

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