二日分まとめての濃縮した散歩をするために、隅田川橋廻りという企画をたてた。やり方は簡単で、隅田川の橋を順番に左右に渡っていくだけだ。実は同じようなことを大昔に試したことがあって、そのときは上流の白鬚橋から下流に進んだと記憶している。今回は逆に最下流の勝鬨橋から上流に向けて進むことにする。
大江戸線の築地市場駅から勝鬨橋。もともと開閉式の橋だったのに、石造りの要塞のような重厚感がある。上流側の空に細長い魚のような奇妙な形をした雲が浮かんでいた。隅田川の橋の中ではかなり地味な部類に入る佃大橋を渡って右岸。ぼくの進む方向から見ると左側だが、川の左岸右岸は下流を向いたときの向きなのだ。次の中央大橋までは、右岸を通ると、亀島川を渡らなくてはいけない分だけ大回りになる。
中央部のタワーまで伸びてゆくビームが美しい中央大橋を渡ると大川端リバーシティ。ここから隅田川の支流晴海運河を渡るためにさらに大回りを強いられる。その相生橋も隅田川の橋としてカウントされることもあるので、決して無意味な道のりではない。出来てからそれほどたってないはずの越中島公園を通って最短経路で永代橋へ。弧を描く青いアーチが美しい。
ここから先は橋が密集する。高速下に隠された隅田川大橋、永代橋とは逆に先端がとがったアーチの清洲橋。永代橋と一二を争う人気の高い橋だ。そして、夜にはライトアップされる黄色いタワーが印象的な新大橋。昨日芝居の帰りに見て美しいと思ったのだった。
その芝居をみた劇場ベニサン・ピットはすぐそばで、一応今日の目的地だ。倉庫を改造した古い建物がとてもいい感じで、もう一度みてみたくなったのだ。まわりはほんとうに寂しい場所だが。
両国橋を渡って右岸に出て、一応今日の橋廻りは終了。そのまま秋葉原まで歩いた。休憩がてら対応しなければならないことに対応してから、東京駅に出た。
大丸が移転して、八重洲地下街に抜ける通路はシャッターが閉まり、まるで正月のような寂しさだった。八重洲地下街北側の改築工事も終わり、カレー屋アルプスが再び店を開けていた。ちょっぴり値上げしてカレーが420円から450円になっている。でも、久しぶりのカツカレーはおいしかった。
セルフサービスなので皿を返却してから店を出ようとしたら、店員の人に声をかけられた。声をかけられる理由なんてまったく思い当たらずに呆然としていたら、腰をかがめて地面に落ちていたものを拾い上げてくれた。それはぼくのサイフだった。ああ、ほんとうにありがとうございます。もし失くしていたら大変なことになっていた。
銀座まで歩いて、本屋でなぜかハードボイルド系の本ばかり買う。ハードボイルドの探偵はサイフを落とすだろうか。たぶん落とすこともあるだろう。ただそれは小説には書かれない。そういうものだ。

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