京浜東北線の中で隣に座った男は、全国放送のディスクジョッキーのように堂々と、たちの悪そうな咳をブロードキャストしていた。
海岸沿いの低地にある根岸駅前は早々とおりてきた影に包まれていたけど、正面にたちはだかる丘の上にはまだ昼の光が残っているようだった。そこに至る道をみつけられないまま延々とふもとを迂回していると、やがて崖上にフェンスに囲まれた米軍住宅が姿を現した。芝生に囲まれ太陽に照らされた場所。ここではアメリカがまだあこがれの対象であり続けている気がする。
中村橋まで北上してようやく丘の上に続く道を見つけるが、おりるためにのぼったようなものだった。かまぼこ形のアーケードのよこはま橋の商店街は今日もにぎわっていた。
横浜日劇は跡形もなく消えていて、クレーンが墓標のようにすくっとのびていた。ノスタルジーは好きじゃないけど、つまらないビルになってしまうのはさみしいな。
大通り公園に引き返し、山下公園を経由して、中華街に。街外れの中華料理屋でひとりでコース料理を食べた。といっても炒飯と、点心が3つと、杏仁豆腐だけだが。炒飯がおいしかった。
外では木枯らしが無遠慮に吹きつけていた。

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