まぶしい日射しと青い空。昨夜降り積もっていた雪はどこにも残っていなくて、夢の中の出来事のようだった。
湘南モノレールはパスモ未対応だった。大船から湘南江の島まで300円の乗車券を買おうとして派手に小銭を地面にぶちまけた。
湘南モノレールはレールの下に車体がぶらさがる懸垂式だ。はじめて乗る懸垂式は揺れが腹に響く。途中駅は無人のようで、車掌が乗車券を回収していた。おもしろいのは、出口の位置によって、車掌が移動することで、大船を出てしばらくは定位置の最後尾にいるのだが、途中の駅間で車内を移動して、最前部の運転席に入り込む。そして、終点の一つ、二つ手前の駅でホームを走って車掌室に飛び込んだ。
「えのしま」を名乗る駅は3つあるのだが、湘南モノレールの湘南江の島だけが「の」で、ほかの江ノ電と小田急は江「ノ」島だ。
駅前から続く商店街は、海辺の解放感とノスタルジーをあわせもっている。交差点の手前で薄暗い地下通路におりる。正面の出口からまばゆい光が流れ込んできて、行き交う人々のシルエットが浮かび上がる。坂を上ると橋の上で、その向こうには巨大なたこ焼きのような江の島がそびえている。前回途中で中断した江の島めぐりの続きを敢行するのだ。
出迎えてくれたのは旋回するトビたちで、前にいた男性がもっていた食べ物をさらわれて、呆然としていた。いやあ、江の島はほんとうにすごいところだと思う。島全体がテーマパークのようでありながら、そこでふつうに生活している人たちもいる。猫たちがまるまるとして幸せそうなのがいい。飼い猫らしき一匹が道案内をするようにぼくのまわりにまとわりついてきたが、階段を上りきったところで座り込んで、見送ってくれた。
せっかくなので奥の岩場や洞窟までいってみることにした。店が立ち並ぶ急な階段の向こうに海がみえてきて、街と海が溶け合うようなあまりの絶景ぶりに心を動かされた。もちろんシャッターを押したのだが、これに限らず今日何枚かかなりいい写真が撮れたような感触があったものの、そのほとんどすべてが錯覚で、しかも途中でカメラの電池が切れるというアクシデントに見舞われるという、残念な結果に終わった。
500円を払って洞窟の中を探検してみた。探検といっても、内部は電球の明かりに照らされていて手渡されるロウソクもせめて気分を盛り上げるための飾りに過ぎない。聞こえてくる水音もスピーカーから流れてくるものだ。唯一リアルなのは天井が低くなっている箇所で腰をかがめなくていけないことだった。第二の洞窟の最深部にあまり迫力のない龍が鎮座していて、かつてここでおこなわれた龍神信仰を記念したそうだが、その説明書きに「アトラクション」とあるのがさらに興ざめを誘う。
いきはよいよいかえりはこわいで、さっき通った下り階段は、胸を突くような上り階段に変化していた。同時に距離が何倍にも伸びるのは、アインシュタインの相対性理論が発表されるまで、明らかになっていなかった。もちろん、発表された後も、明らかになってはいない。
湘南の滑らかな海岸線を見渡せる道をたどって、外界へ通じる橋のたもとにたどりつく。橋を渡りながら気がつくのは、江の島が一種の楽園だということだ。また来よう。
落ち着きのある住宅街をさまよって鵠沼海岸駅にたどりつき小田急線に乗り込む。降り立ったのは藤沢の街。食事をしたり買い物をしたりしてみたが、ほんとうに便利で気持ちのいい街だと思う。ちょうど市長選挙と市議補欠選挙の真っ最中だった。


コメントする